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  作者: ゆくえ知らず
安達豪毅
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安達豪毅 8

 結局頭を下げて「本当は、明日香の口から伝えたほうがいいんでしょうが、俺が今ここにいるので、俺から話します、すみません」と切り出した。


 ちらりと親父さんの顔を見ると、覚悟を決めている表情だった。俺は一段と頭を下げ、へそのあたりに力を入れて声を出した。


「奥さん、牧之条花香さんは、九月に交通事故で亡くなりました」


 頭を下げたまま俺は親父さんの反応を伺ったが、親父さんはしばらく黙ったままだった。永遠にも思える沈黙の後で「そうか。わざわざ伝えに来てくれてありがとう」と頭の上で声がした。

 顔を上げると、目を赤くした親父さんが「すまない、ちょっと時間をくれ」と言って、深くため息をついた。親父さんはそのまま時間をかけてコーヒーを飲んだ。カップを皿に置くときに手が震えて音を立てた。俺は食べかけのパフェに取り掛かり、ゆっくりと親父さんの言葉を待った。


 俺がパフェを食べ終わってカフェラテに口をつける頃、「ありがとう、だいぶ落ち着いたよ」と親父さんが言った。

「事情を聞こうか。君が太極殿遺址に来たのは、花香が亡くなる前に、事情を聞いたからだろうか」


 親父さんの声は、明日香の母さんが何か言い残したのではないかと期待しているようだった。苦しいけれど、否定しなければいけなかった。


「残念ですが、明日香に写真を見て、と言っただけだったそうです」 


 俺は、明日香が写真の謎を解いて欲しいと俺と邦雄に言いに来たこと、邦雄と明日香が根津高校を訪問して卒業アルバムを見て、そこで手がかりを見つけて謎が解けたこと、今は邦雄が明日香に付き添って出雲大社に行っていることを伝えた。


「写真の10月の日付の上にバツ印がありました。10月は神無月です、そこにバツ印。神無月じゃない、つまり神在月。日本中の神様が出雲に集まるので神がいなくなる神無月に、神がいるのは出雲だけです。だから写真の示す場所は出雲大社、卒業旅行の行き先でしたね。佐藤さんが歴史研究会だったから、そんな発想するだろうと思いつきました。そして、写真が撮られたのは1992年の文化祭、1992年が「1」だから、今年、2021年は「3」、よって待ち合わせ場所は京都太極殿ということになります」


 親父さんは、「ほう」と感心したように声を出した。「よく知ってたね」


「まあ、クイズ研究会なんで」

 俺は頭をかきながら答えたが、褒められたところで、明日香の母さんが戻るわけではない。邦雄の闇の深さの理由が少しわかったような気がした。


「誤解ってさっき言いましたよね」


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