安達豪毅 7
「カムフラージュ?」
「監視が付いているんです。それをまかないといけないので」
一瞬考え込んだおじさんは、なるほどという表情で頷いた。
「それでこちらの本命には君が代わりに来た、というわけか。花香の誤解は解けたということなのかな」
誤解? 誤解って何のことだ。
親父さんは明日香が中学一年生の時に突然姿を消して、それ以来明日香の母さんは親父さんに会おうとしなかった。しかし牧之条家で揉め事があって、明日香の母さんは急にまた会わなければいけないと言い出した、それが明日香の説明だった。明日香の母さんの態度の急変、それは誤解が解けたということなのだろうか。
俺はしばらく考えにふけってしまっていたらしい。気がつくと俺を見下ろす親父さんの視線が俺を疑っていた。
「君は花香から、何を聞いたんだ?」
まずい。親父さんの警戒心が高まって話ができなくなる前にこちらからきちんと説明をしておく必要がありそうだった。俺は、順を追って説明するので京都駅まで行きましょう、と伝えた。
「君は、よく食べるな」
一時間後、京都駅の駅ビルのコーヒーショップで明日香の親父さんと向き合いながら、俺は季節限定の和栗パフェを食べていた。
親父さんは呆れたような顔をして、コーヒーに口をつけた。先ほど俺がカツ丼とカレーライスを食べていた時も親父さんはそう言った。親父さんは蕎麦を食べただけだったので、逆にそれで足りるのかと、俺はそっちが心配だった。
「チビの大食いと言ってください」
俺は場を和ませるために、自嘲気味に言った。
「それを言うなら痩せの大食いだろう。僕は君くらいの時かなり太っていたけど、そんなに食べなかったからな。きっとこの後グーンと背が伸びるよ」
そんな気休め、嬉しくもない。
「写真を見ました」
俺が栗を頬ばりながら言うと、親父さんがコーヒーを置いて、「写真? 何の写真?」と聞いた。
「根津高校の卒業写真集の写真です」
俺は一旦パフェのスプーンを置いた。親父さんは、腕組みをして俺の言葉を待っていた。
俺の方は、「説明します」と言いながら、一番辛い話をどう切り出そうかと考えを巡らせた。




