早川久美子 4
でも私の方では、そんな風にうまく物事は進んでくれなかった。
夏休み中に数日設けられている学校開放日には、学校に来ることができる人は文化祭の準備をすることになっていて、私も部活の合間を縫ってできるだけ参加しようとしていた。
でも全てに参加するのは無理だったし、それは皆同じだった。夏休みは塾や部活やその他もろもろの事情があって、予定が重なってしまうのは仕方がないことだった。だから皆、できる範囲で頑張っているのだし、クラス全員そのことは理解していると、私は思っていた。
でも、そう思わない人もいるらしいようだった。
夏休み最初の学校開放日、私は午前中部活に参加して午後になってから教室に行った。そして教室に入るなり「早川さん、話があるの」と声をかけられて、佐藤夢さんと数人の女子に囲まれた。
彼女たちが言うのには、私はやはりキャストをやるべきだということだった。「背が高くて見栄えがする」「野球部のマネージャーでなかなか準備に時間を取れないだろうからキャストなら負担も減る」というのが、彼女たちの言い分だった。
確かに時間的な負担は減るかもしれないけど、私にとって精神的なダメージは絶大だった。私はこの容姿に自信が持てないし、人前に出て愛想を振りまくなんて絶対無理。
「推薦してくれるのはありがたいけれど。やっぱりできない、ごめんなさい」と、私は頭を下げた。
彼女たちは明らかに落胆し、「クラス委員は引き受けたのに」と非難がましく言われた。でもそれは、私自身が望んだことではなかった。いつもそうだけれど、指名されたり推薦されてしまうので、人の世話をするのならまあいいか、と半ば諦めて引き受けていること。中学時代からのおきまりのパターンだったので、その経験で高校になっても引き受けただけのことだった。
「それは」と説明をしようとした私に、「偽善者」という言葉が投げかけられた。背中がすっと冷たくなった。
「やめなよ、言い過ぎだよ」と佐藤さんをたしなめる言葉も、「だってクラス委員で点数稼ぎはするけど、文化祭みたいな遊びは参加できないなんて」という彼女の追い打ちも、耳鳴りに遮られた。
佐藤さんは他の子に背中を押されて離れていき、輪の中にいた誰かが「ごめんね、言いすぎて。気にしないで」と私に声をかけたのが耳鳴りの向こうで遠く聞こえた。
「偽善者」という響きは、いつまでも残った。




