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  作者: ゆくえ知らず
柳沢邦雄
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34/62

柳沢邦雄 19

 牧之条さんはちょっと考えて、「とりあえず持っていてくれますか」と言うと、すぐに真剣な眼差しになって周囲をもう一度探し始めた。


 やがて不安げに「いないわ」とつぶやいた。


 僕は、「拝殿と本殿の周りも見てみよう」と言って歩き出した。少し遅れて牧之条さんが歩き出し、「場所が違っているの?」と聞いた。「メッセージの通りだったら、本来の場所は本殿前、さらに言えば字豆柱跡なんだ。ただ、修学旅行の写真を撮った場所の可能性もあるから一応確認したんだけどね」と、それらしい説明をした。


 鳥居の奥には拝殿が見える。あまり時間に余裕はないがここまで来てお参りをしないわけにはいかないのだろう、牧之条さんに促されて二人で並んでお参りをした。しかし、出雲大社は縁結びの神様だ。高校生二人のこの姿を一体どう見られているのかと思うと居心地はあまり良くなかった。


 拝殿の裏へまわり、本殿の前に出る。牧之条さんの両親が修学旅行で来た時にはまだ発掘されていなかった宇豆柱跡が、地面に記されている。牧之条さんと一緒に宇豆柱跡に立って周囲を見渡す。牧之条さんはお父さんを探し、僕はこちらを監視している人を探した。向こうからはこちらが絶対に見えるはずだが、それらしい視線を送ってくる人を見つけることは結局できなかった。

 牧之条さんの表情が徐々に暗くなっていく。


 僕は深く息を吸い込んで、言いにくいことを一気に言った。

「残念だけど時間だ、帰らないと」

 牧之条さんが僕を見上げた。


「会えないということ?」

「ごめん」


 牧之条さんの表情が硬くなった。


「絶対に会わせてくれるって言ったじゃない」

 牧之条さんの声は涙まじりだった。それでも今は「ごめん」としか答えられなかった。


 牧之条さんはうつむいていた。僕はどうしたらいいかわからず、彼女の前に木偶の坊のように立っていた。牧之条さんはそのままゆっくりと体を前に倒し、額を僕の肩に当てた。


「信じていたのに」



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