柳沢邦雄 17
いや、そんなことはないだろう、そのような期待こそが危険なのだ。
行く先がばれている可能性を考えた。
ばれていたとしても、飛行機は夜しかないので、日にちがばれていなければ先まわりは不可能だ。
では、日にちがばれているということだろうか。そうであれば、昨晩のうちに先回りも可能だ。そうであればいくら探しても誰も見えないのは納得できる。結果は、目的地でわかることになる。
いずれにせよ、向こうに着くまでは心配しても仕方がなさそうだった。
コンビニで買っておいた弁当を座席で食べると、眠気が襲ってきた。牧之条さんも、隣で緊張した面持ちで座っていたが、富士山を見て「綺麗だなぁ」とつぶやいたのを最後に眠りに落ちてしまっていた。僕は、食べ終わった弁当のゴミを捨てるために席を立ったが、僕たちに注目している人はいなかった。何か変化があったら目を覚ませよ、と自分に暗示をかけて眠ったが、結局何も起こることはなく、アラームの振動で目がさめると新神戸を出発したところだった。次はもう岡山だ。
目的地は出雲市だ。東京から約3時間で岡山駅、そこからさらに3時間かけて目的地に着く。730キロメートルを移動するのに費やしたのと同じ時間を、距離で言えば3分の1以下の220キロに費やす。中国山地を縦断するのがいかに困難かわかる数字だ。
岡山駅での乗り換え時間は短く、昼食用の弁当を買い込む間もなく特急電車に乗り換えた。電車は倉敷から伯備線に入り、高梁川沿いに山地の間を縫って上流に向かう。分水嶺を越えると今度は日野川に沿って川を下ることになり、米子平野に出たところで山陰本線に合流して、出雲市を目指す。
沿線は川沿いに山地を超えるので、鉄橋やトンネルが無数にあり、窓の外の風景が目まぐるしく変化した。トンネルを抜けるたびに、渓谷にかかる鉄橋を越えるたびに、山沿いを埋め尽くす色とりどりの紅葉が、息をのむような風景を届けてくれた。
牧之条さんも窓の外の景色に心を奪われたように眺めている。
濃いメイクをした横顔だった。豪毅のお姉さんが随分工夫してくれたのだろう。
「柳沢君」




