早川久美子 2
自分を「カゴの鳥」と評した明日香だったが、その見た目と立ち居振る舞いゆえにクラスの女子から注目され、もてはやされていたが、それは居心地の良いものではないようだった。
私は野球部のマネージャーとなり忙しい日々を送ることとなったが、部活がない時は明日香と一緒に帰り、ファミレスや喫茶店で過ごした。お茶を飲んだり、ケーキを食べたりしながら、少しずつお互いのことを話した。
話をするのはほとんど私で、三人いる妹の世話の大変なことや、幼馴染で勉強を教えてくれる豪毅のことも、明日香には話した。豪毅には高校受験の時に本当にお世話になって、今でも時折勉強を教えてもらっている。
「安達豪毅くんのこと? 彼、美男子よね、他の女の子が結構騒いでいるわ」と明日香は言った。
明日香も豪毅が気になるのだろうか。明日香と豪毅なら同じくらいの背丈だし、どちらも色白で美男美女だからお似合いだなあ、といやなことも想像してしまう。
明日香は、私の心配を悟ったのか、「ないわ、安心して」と言い、「高校生になっても幼馴染が同じクラスなんて、素敵ね」と笑った。私は、さすがに個人的なことを話しすぎてしまったかとその時は思ったけれど、私と明日香の間で交わした会話が他に漏れることは決してなかった。
明日香も、少しずつではあるけれど自分の境遇を語ってくれた。明日香は一人っ子で、家は香道を継承する家系とのことだった。一家は、家元であるおばあさんやおじさんと一緒の家で暮らしているそうで、お父さんは中学一年生の時に家を出てしまったという。一人っ子の明日香とご両親が、複雑な関係の家で肩を寄せ合うように暮らしてきたのに、お父さんが出て行ってしまってからは、一層息苦しくなってしまったと、明日香は暗い顔をした。
「大事にされているといえば大事にされているんだけれど、カゴの中の鳥なの」
明日香はパフェの器にスプーンを慎重に差し入れながらそうつぶやき、私をちらりと見ると続けた。
「久美子は、まっすぐでしゃんとしていて凄いわ。太陽の下で咲き誇るひまわりみたい。自信に満ちていて強くて、美しいわ」
明日香の言葉に恥ずかしくなって、首を振った。
「ううん。私はみんなに助けられているだけ、自信なんてない。明日香こそ、あんなにひっきりなしに皆に話しかけられているのに嫌な顔もせずに、凄い」
明日香が驚いた顔をして、それから少し考え込んでから私を見た。
「私たち、見かけでだいぶ損をしている、という意味で似たもの同士なのね」
「意味合いがだいぶ違うけど」
私はそう切り返した。見た目、の意味が私と明日香ではずいぶん違う、一つにまとめられるのは明日香に申し訳なかった。それでも明日香の言うことには一定の真実があるなあ、と感じた。見ると、明日香がクスクスと笑いだしていた。私も笑った。




