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  作者: ゆくえ知らず
早川久美子
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12/62

早川久美子 12

 柳沢君の言葉に明日香が顔を上げた。


 私は、やはり頼りにしてよかったと少し安堵しながらも、疑問を投げかけた。

「ねえ、ごめん。ぜんぜん話がわからないけど、どうしてこれがそんなに古い写真ってわかるの?それに手で切ったって」


「今は写真ってデータだからスマホとかで見るけど、昔はフィルムで写真を撮って、それを写真屋さんに持って行って印画紙という紙に現像、というか印刷してもらっていたんだよ。それで写真を現像した印画紙の後ろにこういう風にメーカーのロゴが入ることがあったんだ。この会社は2012年に倒産したから、写真は少なくともそれより前だね」

「手で切った、ってのはよ、切り口が少し毛羽立っているから。紙を何度か折り曲げて爪でしっかり折り目をつけると結構厚い紙でも綺麗に切れるんだ」

 豪毅は、立ち上がって後ろのロッカーから厚紙を一枚持ってくると、言った通りの作業をして切って見せた。確かに綺麗に切れたけれども、切り口に少し毛羽が立った。


「この女性は先生かな、生徒には見えないから。牧之条さんのお母さんとか知り合いではないんだよね」

 そう尋ねる柳沢君に、明日香は黙って首を振った。

「なんで横向いて座ってんだ。それに耳元光ってるのなんだ」

「指輪だと思います」


 豪毅の質問に、明日香が「こうやって髪の毛をかきあげた時に左手の指輪に光が反射したのだと思います」と言いながら左手で髪の毛を耳の後ろにかきあげて見せた。

「こんなに光るものなのか、でも確かに結婚してたら結婚指輪をしていておかしくないもんな」

「そうすると、これは何かイベントの時に教室で撮ったスナップ写真の背景ということかな」

 柳沢君の言葉に私と明日香が顔を見合わせた。どうしてそこまでわかるんだろう。豪毅も柳沢君と同じ意見らしく、「だな」と言って頷いた。


「説明して」と私は食いつくように言った。

 柳沢君が軽く咳払いをして話し始めた。

「この女性が生徒でなくて先生なら、教室にいて机を横にしているのは監督か何かをしているためだと思う。日付に曜日も書いてないし、日直もいないみたいだから普通の授業の日ではないのだろう。黒板にも何か書いてあったみたいだから、文化祭とかそういうイベントの日だったんじゃないかな。切り口のところにシャツの肘が写り込んでいるから、画面の左側には誰か、それが一人か複数かはわからないけれど、写っていたと思う」

「これ、シャツの肘なの?」

 私は写真を見直した。言われてみればシャツの肘の部分にも見える。


「『せ!』ってなんだろうな」と豪毅が聞いた。「これもメッセージの一部なのかどうか」

 うーん、と柳沢君が唸った。「豪毅が言ったように、急いでボールペンで書き込みを入れて切ったのだったら、『せ!』は関係ない可能性が高いけど、何かの手がかりにはなるのかなあ」

「『かっとばせ!』かしら」と私が言うと、「『走り出せ!』かもよ」と豪毅が続けた。

「かっとばせ、走り出せ、飛び出せ、踊り出せ、いくらでもあるね。そちらよりも、日付だ。何でバツ印なのか。どうして番号が書いてあるのか」


「あの」と明日香がためらいがちに切り出した。「ママが『今年は何番かしら』と言っていたの。息をひきとる前に」

 柳沢君と豪毅の顔が一層厳しいものになった。

「番号、すげえ重要じゃんか」

「日付、バツ印、番号、女性、せ、の文字。この写真の情報からお父さんの居場所を見つけて、そこに牧之条さんを連れて行くのが、『助ける』の内容ということ?」

 柳沢君が私を見た。


「お父さんのところに逃げる、までは聞いてなかったから」と私は消え入るような声で言った。まさか明日香がこんなことまで考えているとは思わなかった。

「今年は何番か、か。今年の10月17日が何番か、ということかもしれないよな。曜日だったら1から7の繰り返ししだけど」

「いや、曜日のことを言っているのなら『何曜日かしら』と言っていたと思う。繰り返しの番号かもしれないし、数列かもしれないけど、今の段階では見当がつかないね」

「それにばつ印って、なんだ。10月17日じゃない日なんて364日あるぜ」


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