没頭
さようならの声がして、生徒が一斉に出てくる。私は顔を下へ向け、生徒の声に耳を澄ませた。不意に私の耳は、高野が転校するという言葉を拾った。私は完全に理解が追いつかなくなった。出てくる生徒を押しのけ押しのけ教室に入ると、座っている高野とそれを囲む十人ほどの生徒が見られた。高野はすぐに私の怒りに気づくと、立ち上がって頭を下げた。
「ごめんなさい。」
十人の生徒は状況がわからず、私と高野に目を右往左往させる。私は熱意を持ってこの教室に踏み込んだはずであったが、その重い言葉に身を委縮させられた。何か言わねばならないことはわかっていた。しかし、考えれば考えるほど言葉は出てこなくなり、ついには口先に任せて突っ放してしまった。
「なぜ、教えてくれなかったんだ。」
十人の生徒は冷たい目で私を見る。私は立つのに精一杯であった。自身の未熟さゆえの弱さにうんざりする。高野は口を開き、私の拙い質問に答えようとした。私は彼の真面目さを悪用してしまった気がして、返事を聞く間もなく教室を飛び出した。
ポツポツと降り始めた雨の中を、私は走っていた。胸が張り裂けそうな思いで、腕を必死に振る。額にかかった雨水を拭い払う。ランドセルの中には折り畳み傘があった。しかし、使う気にはなれず、むしろ濡れたかった。止まりたくない。走ることに没頭していたい。そんな気分だった。




