友
インターホンを鳴らし、玄関先で母が出てくるのを待つ。体が収縮していくのを感じる。ガチャッとドアが開いて、母の姿が見える。私は思わず、その濡れた体のまま母に抱き着いた。母は目をキョロキョロさせてとにかく私を家へ入れると、今日は風呂に入って早くお休みと、私に声をかけた。お風呂に入り、息を止めて頭を沈める。できるだけ沈んでいたいと思ったが、それは叶わなかった。このまとわりつく忌まわしいものは何なのかわからなかったが、払拭できるものなら早急にしたかった。しかし、そうするにはどうしても高野の存在が必要であるように思えた。その日はうまく眠りに就くことができなかった。
深夜一時、私は寝ながらも、うなされていた。ふと、私の部屋の窓からコンコンという音がする。私は浅い眠りから覚めた。そして、その音に対して強く不審感を抱いた。もう一度、コンコンと音がする。布団をまとって足を忍ばし窓に近づくと、そこにはボールを片手に持つ高野の姿があった。私は目を大きく開いて、窓を開ける。
「高野、お前…。」
私は小さな声で言った。高野は私の驚愕する顔を見て、微笑している。
「雨が上がったんだ。公園に来いよ、サッカーしようぜ。」
二人は懐中電灯で真っ暗な道を照らしながら、無言で足を進める。私は何か声をかけるべきであるのはわかっていた。しかし、勇気が持てず、暗闇であることを良いことに、高野の様子をうかがっていた。歩くたびに揺れる懐中電灯の光、服の擦れる音、踏んだ水たまりから飛んでくる微小の水滴、それらをもってしても結局、高野の考えはわからずじまいであった。ぼやけた脳に、いつも使わない神経へ命令させている感覚。それは一種の麻痺状態であり、自分が今何をしているのか、時々見失った。足を止め、目をつぶり、深呼吸をする。やはりこんな時間に外へ出てはいけない気がする。
「やっぱこんな時間に遊んじゃだめだよ。」
高野の懐中電灯の揺れが止まった。きっと高野は今、自身の真面目さと向かい合っている。してはならないことをしてしまった後悔と、今更帰るという切符をいまいち取り切れない情けなさに、反吐が出ているはずだ。もちろん私は、高野と一緒にいることができるのであれば、そうしたかった。でも、無理なんだ。明日にはまた学校があるし、それに警察や親、先生から怒られては、身が持たない。高野という大きな存在を失ってなお、攻められでもしたら、私が私でいられなくなる。
「帰ろうよ。」




