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第15話 親密の産声と示す意思③



「“W・O・N・D・E・R”起動───」



 リゼの声に応じて、闇に沈んでいた機器が一斉に目を覚ます。


 モニターが次々に起動し、薄明かりが部屋を満たしていく。


『おはようございます、リゼ様………』


 映し出されたモニターから“助手”の声が響く。


「さっそくだけど、新しい家族の“健康診断”だ。」


 リゼの手には、龍の子に注射して得たサンプル。そして、フライヤが記録した戦闘映像の魔法データがあった。


 サンプルを閉じ込めた機器をドライブに差し込み、操作台に情報を読み込ませる。


『これは───新種ですか?』


「ああ、久方ぶりの認定の儀式だ」


 情報を読み込みながら語りかける“助手”の声を伴奏に、リゼの指がワキワキと動き始める。

 技術者の緻密さと、得体の知れない狂気さが共存する動きでリゼは“演奏”を始めた。


「回収した基準標本《ホロタイプ》から近縁種の配列と比較してくれ」


『了解。進化的な距離を計算。系統樹を作成します───』


「同時に抽出した遺伝子領域をPCRで増幅しろ」


『DNAバーコーディング開始───』


『分類学的解析を開始します。スカイ・ファームへの全生物データーベースのアクセス開始』


「動物だけではなく、植物、機羅《きら》、天弓神《てんきゅうしん》の情報とも照合してくれ」


『心得ております』


 光の奔流のように、進んでいく解析。

 ごく稀に行われているリゼのこの作業は、どこか探られているようで、不愉快な印象を覚える。


『得られた遺伝子配列と、映像資料から全体の視覚的な類似性のある既知の種との比較、称号の結果は───』


 表示されたのは、「0」の一文字だった。

 指先で髪をかき上げながらリゼはモニターを見つめる。


「該当なし………か」


『おめでとうございます。この生物は新種とみて間違いないと判断できます』


「一見、ただのワイアーム型の龍にしか見えないが、隠蔽種《いんぺいしゅ》か?」


 助手の言葉を無視し、リゼは巨大で分厚い眼鏡の奥で据わった目つきのまま、独り言を続けている。


『───リゼ様?』


「次は魔法の解析だ、世界中の生気吸収回復魔法を使える生物を洗い出してくれ」


『…………………かしこまりました』


 間の空いた回答の後、無音の時間が過ぎていく。

 そして───。


『検出した龍の遺伝子の記録には、既存のそれと一致するものはありません。どの魔法生物との性質とも異なります』


「………そうか」


『魔法から個体を特定するなんて、貴方らしくもない』


『生物が織りなす魔法は、人が生成する魔法とは定義が全く異なります。』


『同一の魔法現象であっても、生物個体ごとの神経系・魔力器官の発達差により、性質は完全に異なります』


『十体いれば、十体とも違う───』


『野生から生まれた生物《かれら》の魔法は全て“独学”なんですから』


「そうだよな…………そうなんだよ」


 リゼは苦笑を浮かべながら、背もたれに身を預ける。


『こんな無意味なリサーチ………不毛です』


「はっはっはっは」


 信頼と尊敬を込めた助手の皮肉を軽く笑い飛ばし、水に流すリゼ。


「なら、これはどう思う?」


 ふんぞり返ったまま、リゼは足を伸ばし、足の指でデバイスのボタンを叩く。


 画面に浮かぶ、一枚の写真。


 それを映し出した途端、まるで動揺を見せるように画面が揺らいだ。


『────ありえません。夢物語にも程があります』


 その言葉にリゼの口角が、ニヤリと不気味に上がった。


「フォードの奴、観察だけで“コレ”にたどり着いたっての?」


 天井を仰ぐリゼの表情は、同僚への敬意と同時に、妬みの感情が入り混じっていた。


「そんなことされたら科学の立場がないよ」




          * * *




 ───そのあとのサカキとの戦いは、惨憺たる光景だった。


 アンジュが攻撃を避ければ逆に被弾し、飛びかかれば、突風のようなひと吹きで吹き飛ばされる。

 切っ先を向けたナイフは迎えられ、そのまま巨大な指で腹を抉られる。


 何度挑んでも、何度踏み込んでも、彼女の攻撃は届かない。

 回り込もうとした足取りも、ただの逃走劇にしか見えなかった。


 それでも立ち向かおうとする少女の姿に、時間だけが冷たく積もっていく。


「やりすぎだ………試合になってねぇよ」


 堪え切れぬように声を漏らしたのは、バジルだった。


 アンジュは確かに無傷なのだが、ただ無傷なだけで、彼女の体力は限界を迎えていた。


「…………」


 コマは口を閉じたまま、目を逸らすことなく、ただ何かを計っていた。


「それに───あのガキ、滅茶苦茶弱いじゃねぇか」


 バジルも初めはアンジュの回復力に圧倒された。

 だが彼女には、それ以外の実力も、経験値も、圧倒的に足りていない。


 現にアンジュはサカキの間合いにさえ入れていなかった。ただ泥と埃にまみれ、衣服はもはや布切れ同然。血の気が引いた表情は、今にも何かを吐き出しそうな蒼白さを浮かべていた。

 

 開放された訓練区は、戦いの余波で地面が抉れ、先日の異変時よりも荒れていた。


 その光景はもはや「試験」ではなく「処刑」と呼ぶに等しかった。


「サカキは一体何を考えてるんだ。お供のテストに何もここまで───」

「普通ならな」


 バジルは、憤りを滲ませながら呟くも、その隣で、コマが短く断じた。


「だが《《訳あり》》と連れ合うとなると話が違う」

「……………」


 冷えた視線を、サカキとアンジュの間に投げながら。


「スゲェぞあのガキーー!!」

「頑張れーーー!!」


 訓練場の端から、職員たちの歓声が響いた。サカキを相手に何度でも立ち上がろうとする少女の姿に、彼らは理屈よりも熱量で応じ始めていた。


「おいお前ら───」

 低く静かに、バジルが声を発した。


「ここはもういいから、仕事に戻れ」


 バジルは、サカキとアンジュ、そして職員たちとの間に立ち、職員たちに背を向けたまま、淡々と命じた。


「えー!?」

「何でだよ!!」

「せっかくいいトコなのに!!」


 口々に文句とヤジを漏らす職員たち。だが、バジルがその場で振り返る。

 

「訓練区は見世物小屋じゃねぇぞ?」


 その視線は、サカキに負けず劣らずな、張り詰めた覇気が宿っていた。

 サングラスの奥から睨み殺すような視線を受けた職員たちは、一斉に叫んでいた口を閉じる。


「これ以上、あのガキに恥かかせんな」


「「「す、すみませんでした…………」」」


 冷や汗を垂らした職員たちは、誰一人逆らうことなく、そそくさとその場を後にした。


 人払いが済み、静まり返った訓練場───。

 アンジュはまだ、肩で息を繰り返し、湧き上がる吐き気を口で抑えながら必死に堪えている。口数もなくなり、足元はおぼつかず、目の焦点も定まらない。


 少し突つけば簡単倒れてしまうだろう。だがアンジュはサカキから背を向けず、意識だけでサカキに立ち向かっていた。


 そんな彼女とは真逆に涼しい顔をしているサカキ。

 文字通り、鬼のような猛攻を仕掛け、数えられない程の攻撃を全て受けても、まったく諦める様子がないアンジュに、そのまま立ち尽くす。


 フラフラと立ち尽くすアンジュをしばらくの間みつめ、やがて小さく口を開いた。


「一つ聞きたい」


 虚ろな目の奥で、アンジュの意識だけが微かに動き、視線をサカキに向けることで言葉に耳を向けていることを示している。


「君は火の鳥を探していると言っていたな?」


 サカキの言葉には、静かなる配慮が帯びていた。


「ここは世界最大の生物専門機関───君の望む情報も得られるかもしれん」


「君をここに連れてこれば、龍の一件の報恩になるかとも思ったが」


 出会った時に聞いたアンジュの目的。

 それを知った上でのスカイ・ファームへの同行の申し出は、彼らの仕事の一環でもあり。同時に依頼を解決に導いたアンジュへの謝礼でもあった。


「もう一度聞こう、なぜ我々に───」

「こだわるさ………どうしてもね!」


 突如、アンジュの声がサカキの言葉を遮った。

 疲弊しきった少女の顔に、再び笑みが浮かび上がる。


「私は見ての通り………限りなく弱い!!」


 膝に手をつきながらも、気力だけで前を向き、根性だけで立ち上がる。


「ここで情報を得られたって、火の鳥(アレ)にたどり着けるかわからない!」


 言葉を一つ紡ぐたびに、彼女の目には光が宿る。

 

「だからワタシは───」


 アンジュは自分自身を、言葉に乗せて叫んだ。


「アンタらの力でアイツの元に………連れてって貰うんだぁ!!」


 ビシィ!とサカキに指を突きつけ、アンジュは胸を張って宣言した。

 その堂々たる“他力本願”に、サカキは思わず息を呑む。


「面白いやつだなアイツ」

「あの野郎、俺らのことをなんだと」


 呆れと感心の入り混じった顔でバジルが笑い、コマが青筋を立てて怒りを表す。


「だからさ!サカキ《《さん》》」


 気力のみで闘志を復活させたアンジュは、真っ直ぐにサカキを見つめ───。


「ワタシは………ぜったいに諦めないよ?」


 混じり気のない、心からの笑顔。

 虚勢ではない。強がりでもない。

 真っ直ぐで、不器用で、そして真実の笑顔をサカキに向けた。


 まるで標的はサカキの方だったとでも言うように。


 今までに見せたことのない、瞳孔を開いた瞳、捕食者の様に歯をギラつかせ、執念に取り憑かれた獣のような笑みだった。


(───いい面構えだ)


 無限に回復する、その絶望的な“体質”。

 それを補う“心力”を既に備えているアンジュに、サカキは思わず心の奥で本音を漏らした。


「こうなったら消耗線だ!とことんやってやる!」


 完全に開き直ったアンジュは、腕をブンブンと振り回しながら、地面を蹴る。


 よろけながらも前に出るその姿に、もはや理屈や作戦はなく、ただやる気と根性だけが滲んでいた。


 その不器用な覚悟を受け止めたサカキは再び口を開く。


「ところで、君は気は失うのか?」


「………なんだよ急に」


 唐突すぎる話題の転換に、アンジュは思わず、拍子抜けした顔を見せる。

 しばらく考えた後、思い出したように、気楽な口調で笑い出した。


「まぁ何度かあったかな、特に毒キノコを食べた時なんか───」


 自分のことながら、他人事のようにケタケタと笑うアンジュ。


 その能天気さに、サカキは「そうか………」と一応の相槌を打ちながらも、半分も聞いていない様子で、黙ってゆっくりと腰を落としはじめた。


「君の意思が硬いのはよく分かった………だがこれはテストだ」


 低く落とした重心、片足を大きく上げる。

 それはまるで、厳粛な儀式のような所作だった。


「私はルールを変える気はない」


 四股を踏むように、重い足が地を打つ。

 ズシン───と、訓練場の地面が低く唸り、土煙が立ち上がる。

 その衝撃音と、これまでとは違うサカキの様相に、アンジュの体がびくりと反応する。


「見込みがないのなら終わらせてもらうぞ」


(これが最後だ………乗り越えてみせろ)


 その言葉と、心の奥に潜ませた“思惑”を胸に刻み、サカキは深く息を吸い込んだ。 


 ────そして。


「ハアアアアアアアア!!!」



 咆哮。



 空気が弾け、空間が裂けた。

 サカキの全身から発せられた覇気が、周囲の風景を塗り潰すほどの衝撃波となり、一直線にアンジュ目掛けて放たれた。


 まるで垂直に進む竜巻の様に、その軌道には亀裂が走り、大地が抉れ、砂塵が唸りを上げながら巻き上がる。


「やばっ────」


 アンジュは反応した。でも身が竦み動けなかった。

 心は逃げろと叫んでいるのに、体が命令を拒絶していた。


 迫り来る圧倒的な“力”の前に、もはや回避は不可能───。


 その瞬間だった。


(アンジュちゃん!!)


 不意に、アンジュの頭の奥で声が響いた。


「───え?」


 思わず反応したアンジュの目の前に、突如として眩い光の壁が出現する。


 光は波のように揺らめきながら、まるで盾のようにアンジュの眼前に立ちはだかった。そして激しい轟音と共に、サカキの咆哮によって発生した衝撃波が、光の壁へと直撃する。


「────ッ!?」

「なに!?」


 あまりにも唐突な展開に、アンジュもサカキも目を見開く。


 光の壁は砕けることもなく、サカキが放った衝撃波を、完璧に防いでいた。


「衝撃波を防ぎやがった!!」

「いや………アイツじゃない」


 バジルが叫び、コマも瞬時に反応する。

 僅かに動揺するも、鋭い観察眼を持つコマには、その光の壁がアンジュによるものではないと見抜いていた。


「なんで………?」


 困惑するアンジュは、何が起きたのかもわからず、ただ呆然と立ち尽くす。



「どうやって………」



 だが、アンジュの視線は、突如現れた光の壁ではなく、その《《手前》》にあった。


 そこにいたのは───。


「オマエ………どうやってここに……」


 あの卵から生まれたばかりの。

 全身に淡い光を纏い。

 透き通るような瞳をもった。


「ミィ」 


 ───あの幼い龍の子だった。 


 それが今、彼女の前に現れ、アンジュを守る様にサカキの前に立ち塞がった。


「アイツらに預けた筈じゃ………それに今………ミコトの声が………」

 

 アンジュは混乱に混乱を重ね、龍の子とサカキ、そして周囲を交互に見渡す。

 ミコトの姿はどこにもない、ただ、確かに耳元で、心の中で、あの声は響いた。


 龍の子は、先ほどのアンジュの意思に呼応するかの様に、サカキを睨みつけている。


「なんだあのチビは!?どこから迷い込んできやがった!」


 唐突な乱入者の登場にバジルが思わず怒鳴る。


「あの龍の幼体だ………」

「何だと?」


 ぽつりと呟いたサカキの言葉に、コマが反応した。

 遺跡で対峙した時とは、似ても似つかぬ変わり果てたその姿に半信半疑になるも、サカキの言葉に警戒心をあらわにする。


「これは………オマエがやったのか?」

「ミィーーー!!!」


 アンジュが龍の子へ問いかけるも、龍の子は荒い鼻息を「フンカ!フンカ!」と吹きながら、興奮状態でサカキを睨みつけている。


(あの龍の“現れ方”まるで………)


 そこにいないはずの存在の介入、その現れ方、これらを実現させる方法は“一つしかない”、だがその“方法”がない。

 

 サカキは困惑しながらも冷静さを失わずに龍の子を見つめた。


 アンジュもどうしたら良いのか分からずに、困惑していた───すると、アンジュの胸元、そこに刻まれた紋章が突如、ヴゥン………と音をたて眩く光った。


「紋章………が?」

「ミィ!」


 アンジュは、胸元に心地の良い暖かさを感じる。

 彼女は“この暖かさ”に覚えがあった。


 “その後に起こったことも”。


「これあはぁ………ぁあ───はゔう!!」


 呻き声と共にアンジュの全身の力が抜け、目がぐるりと白目を剥き、身体中の血の気が引いていく。


 すると龍の子の身体が、淡く光る輝きを強めていく。


「ミィイイイイ」


 その輝きに呼応するように、龍の子の額にも、卵に刻まれていたものと同じ紋様が浮かび上がった。


 そして───。


 バリィ………バキ、バキバギッ。


 龍の子の身体が音を立て、その表皮には亀裂が入る。


 メキャ…メキ……メキィ。


 歪な音を立てて、その全身が膨張していく。


 落書きのようだった瞳は、鋭く凶暴な光を宿し、三本のエラのようだった突起は鋭い角へと変貌する。


 背から甲羅のような構造体が隆起し、両脇からは巨大な二本の腕が生え、鋭い爪が覗かせる。


 その進化は一瞬だった───。


「グオオオオオオオオオオ!!!」


 その場にいる全ての者の目に映ったのは、かつて遺跡で姿を現した“あの巨大な龍”。


 それが再び、このスカイ・ファームに出現した。


「何だありゃあ!?」

「────ッ!?」


 バジルは絶句し、コマすらも冷や汗を垂らし、言葉を失う。その巨躯は空へと舞い上がり、身を弓なりにしながら空中に鎮座した。


「…………また会ったな」


 サカキは一歩も引かず、かつての対峙を思い出しながら、静かに言葉を落とす。


 次の瞬間───。

 先に動いたのは、龍だった。


「グオオオオオアアアアアアア!!!」


 天へ向かって咆哮を轟かせる。


 その叫びは、スカイ・ファーム全土に響き渡るように、重く響いた。


 直後、龍の背中にある甲羅状の部位がガシャン!ガシャン!ガシャン!と、順番に開閉し、中から穴状の器官が一つずつ顔を覗かせる。


 そのまま龍は下を向き小さく口を開く。


 口内には、眩い光が集まり始める。


 唸るように光を吸い込み、飲み込み、圧縮し、濃縮し、一点に集めていく。


 やがて龍は収束した光を嚥下《えんげ》するかのように天を仰ぎ、その巨躯高く垂直に据える。


 しかし………その視線が、サカキから逸れたことは一度もなかった。


 そして────。


「──────ッッッ!!!」


 龍はそれを一気に解き放つ。

 咆哮のような爆音とともに口から巨大な光線が放たれた。


 その規模は龍の巨体を遥かに上回り、極大すぎて聞こえないほどの凄まじい爆発音を鳴らし、視力を失うほどの光を放っていた。


 龍の背中の開閉された部位からは、膨大な熱エネルギーが勢いよく噴出され、放った光線から生じる凄まじい反動を支えている。


 訓練場の大地をえぐり、風を裂き、空気を焼きながら、直線的にサカキへと襲いかかった。


 迫り来る、極大の光束にサカキはその攻撃に汗を垂らし、やがて光線は、真正面から彼に直撃した。


 光線はそのままサカキを飲み込みながら通過し、訓練区から飛び出す様に突き進んでいった。


「オワアアアアアア!!」


 広大な訓練区を爆散させかねぬ勢いで拡散する爆風に、バジルが叫び声を上げ、コマも吹き飛ばされぬよう必死で地面にしがみつく。


 天を貫く一閃。


 先ほどの衝撃波とは比べ物にならない、その凄まじい光線は、水平線の彼方まで伸びていった───。




          * * *




 ────数時間前、所長室。



 ミコトと龍の子を送り出した後、室内には所長とグレンの二人だけが残っていた。重い沈黙のなか、所長の声が爆ぜる。


「バカな!!“アレ”がいたのは超古代時代の話だ!!生き残りがいたと!?」


「そうとしか思えません」


 グレンは冷静な表情のまま頷いた。


「…………信じられん」


 所長が小さく呻くように呟く。

 だが、グレンはさらに言葉を重ねた。


「あの龍は新種ではありません」


「今は久遠《くおん》の文献にしか記されていない伝説の存在」


「彼《か》の龍の名は───」


「“寄生龍《きせいりゅう》”───『レガシー・ギフト』」


 グレンが放ったその名に、所長の目が大きく見開かれる。


「今から数万年前、世界を滅ぼしかけた『第二次生命界大絶滅』き起こした元凶です」




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