第14話 契約
「もういい。」
光がマスターメビウスと近衛府の間に割って入る。
両者は既にボロボロで、仮面も取れ、三と四は倒れ、辺りにはナイフや剣の破片が散乱し、
火炎で草は焼け、マスターメビウスは腕が一本無くなっている。
「はッ!もういいとな。」
マスターメビウスは驚いたように笑う。
「何のつもりだ貴様」
仮面が破壊され、素顔の壱。昂った怒りの表情が見える。
「いいんだ、もう。」
それを聞いて、マスターメビウスは一瞬で腕を戻し、くるくると光の周りを飛び始める。
「生き返らせなくて良いのか?」
「いい」
「もう会えなくなるぞ?」
「ああ」
「だがお前は契約書にサインをしただろう?一度結んだ契約は破棄出来ない。破棄不可だ。」
「いや、サインはしてない」
「何を・・・」
マスターメビウスが机の上の契約書を手に取る。
「サインする瞬間、お前の顔が吹っ飛ばされて、驚いてそのまま放置してたんだよ。」
マスターメビウスは、なにか、悔しそうな、微妙な顔をする。
「あーーーーーーーーー。」
気の抜けた声。
「なら一つ聞かせてくれ。なぜ心変わりした?なぜだ?知りたい。知りたいぞ。私は知りたい。」
再び光の周りをくるくる飛び回るマスターメビウス。
「諦めか?達観か?犠牲を出すのに耐えられなかったか?死を受容したのか?知りたい。私は知りたい。」
子供のように無邪気な表情で、好奇心で質問を繰り返す悪魔。
「答えてやる代わりに、一つ願いを叶えてほしい。」
光はゆっくりと、強い語気で答える。
「ほう!・・・いいだろう。私は知りたい。それほどに知りたいぞ。」
飛ぶのをやめて、地面に降りる。金の杖を付き、まっすぐ真正面に立ち、まっすぐに光の目を見る。
「願いは何だ?どんな願いでも一つ叶えてやろう。」
光は丘に座っているシを指さし、
「あの女の病気を治してくれ。」
「は!」
笑う悪魔。とても嬉しそうだ。
「そうか、そうだな。そうなるか。」
マスターメビウスが空中に指で何か、模様を描くと、遠くで姫が何かに掴まれたように持ち上がり、
フワフワと浮いて運ばれてくる。
姫が目の前までくると、ゆっくりと下ろされる。
「・・・何か用?」
姫がきょとんとしながらマスターメビウスに聞く。
ドスッ
「なっ・・・!!」
マスターメビウスが、突然、姫の胸を腕で貫いた。




