第13話 悪魔
俺たちは巻き込まれないよう、マスターメビウスから離れた丘の上に居る。
満月がビッカビカに輝いている。星は一つも見えない。
いくら満月とはいえ、電灯もない、町はずれの草原で、ここまで星が見えないことがあるのだろうか。
ド深夜で、草は濡れ、冷たい。座ってると冷たさが伝わってくる。
隣にシが座る。
・・・目の前で行われている非現実的な光景をただ眺めている。
二人で。
「なぜだ」
「なにが?」
「なぜ俺についてきた。」
「言ったでしょう?私は病気で・・・」
「・・・だからと言って、今、死ぬ事を選ぶ理由にはならないだろう。
あの男が言うように、国の為、悲劇のためか?」
「あなたが、悲しい目をしていたからです。今日にも死んでしまいそうな、悲しい目。」
一瞬、思考が止まる。
そのために、
それだけのために。
「そういえば話して無かったですね、私の病気の事。」
「・・・」
「人と話すのもこれが最後だし、話しておきましょう。言いたくなかったのは・・・」
「同情されたくないからだろ。」
その時の姫の顔は、とても驚いた顔をしていた。目を丸くして。
「よくわかりましたね。」
「昔、医者をしていたといっただろう。その気持ちは、知っている。」
姫がドレスのような服の首を引っ張って肩の肌を見せる。
それを見たとき、俺は全てを理解した。悪魔め。あの野郎。そういう事か。最悪だ。
「この病気は、名前がまだありません。医者、研究者、大学、製薬会社、あらゆる分野を調べましたが、」
肌から金色の棘がまだら模様になって飛び出ている。
「この金属の成分を調べたら、本物の金でした。金の結晶が徐々に大きくなり、胸へ向かっています。」
知っている。
「飲む水に金が含まれているのか?食べ物に?空気?調べましたが、金はもちろん含まれておりません。
しかし人体で金が精製されるなどあらゆる物理法則に反しています。」
同じだ。
「あらゆる手を尽くした後、完全に諦めたのです。もう、どうにもならないと。」
だろうな。俺も同じことをした。そして同じ結果だった。
「・・・俺の・・・妻が死んだのも・・・同じだ」
涙が止まらない。何の涙かはわからない。顔を下に向け、俺は泣いている。
あのクソ悪魔、“同じ星の女”、こういう事か。そりゃ同じだよ。同じ女だよ。
あのクソ野郎。最悪だ。まさに悪魔だよ。
自分の妻を生き返らせたければ、医者の俺が治せなかった病気の女を生贄にしろというのだ。
ははは。そうだな、死んだ人間を生き返らせようなんて、ムシのいい事を言う人間には、当然の報いだ。
「それは、おどろきね。私以外にも居たなんて。」
俺は立ち上がり、マスターメビウスの元へ行く。
ふらふらと、力無く、それでもまっすぐに。




