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Limitless  作者: 神 賢一
第十章 Till The End

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第158話 UNDERWORLD

 奈緒の家に剛達6人が到着した頃には既に昼食の用意は整っており、後は配膳するだけであった。

 これまで現世でも剛達は何度も足を運んだ居間だけでは狭いと感じたのか、隣の部屋との襖が取り払われて床の間にも卓が置かれていた。

「希美ちゃんも剛くんも久しぶり。もっと遊びに来てくれても良いのよ」

 食事を運んできた奈緒の母親から言われてしまい剛も希美も恐縮した表情をするのだが、以前から剛達と奈緒の母親が会った事があるという事に桂は軽く驚きを見せる。

「……神野くん達ってトーフ入学前から鈴木さんの家に来ていたの?」

 そう言えば話していなかったな、と思い起こす。

「翔と奈緒も揃ったら話するよ」


「……5年生に上がる前から一緒に型稽古や模擬戦……そりゃ僕らじゃ勝てない訳だよ」

 これまでの経緯を掻い摘んで剛が話すと、桂達4人は呆れたような表情に変わる。

 桂も小学2年生から剣道を続けて、6年生の時には都大会準決勝まで勝ち上がった経験はあるのだが、希美はそれに先んじて1年生から剣道を始めて5年生からは中学生の部にも参加していると言うし、何故か剛はその希美と互角に渡り合える力量でトーフ入学までの2年間模擬戦を繰り返してきている。

 翔も奈緒もその2人と共に研鑽を積んできたのだから、剣道の枠で鍛えてきた桂とは違う強さを持っていて不思議では無かった。


「でも神野くんも本田くんも五小だよね。どうやって星野さんや鈴木さんと知り合ったの?」

 同じ小金井五小で同じクラスにもなった事がある前原が当然のように疑問を呈すると、ニパニパと満面の笑みで奈緒が身を乗り出して答える。

「希美んみんと彼ぴっぴと翔んるんの3人はエスパーなんやでーー」

「ねぇわ」

 奈緒の頭に軽くチョップを入れて即座に否定する翔。だが、その息の合った寸劇だけでもこの4人は運命に導かれた存在なのではないかと、前原も、桂も思ってしまう。

「まあそこは……神の導き、とでも言っておきましょうか」

 奈緒が神野剛の神の導きーーと良く分からないダジャレのような事を言っているが、どうやら答えとしては理解できるような事では無い、何か不可思議な事が4人を引き合わせたのでと桂は納得できないまま飲み込むしか無かった。


 食後に奈緒の母親が淹れてくれた紅茶を飲みながら、この後どうするか桂達が話しているその時であった――


 ≪対妖魔特別警報発令!!対妖魔特別警報発令!!妖魔出現場所は武蔵野市吉祥寺本町!!近隣に居る方は直ちに安全な場所に避難してください!!繰り返します!対妖魔特別警報発令!!……≫


「特別警報だって?!どこなんだ、吉祥寺本町って?!」

 近隣地区への突然の特別警報発令に驚愕して動揺している桂に対し、既に立ち上がって特装器を専用の収納袋から取り出した剛が首だけ向けて答える。

「駅の北口側だ。桂、伊藤、山縣、前原さん、4人も行くぞ」

「えっ?!」

 行くぞ(・・・)とはどこに……特別警報が出ている妖魔出現地域に、特務実習でも無いのに向かう訳は……そう思いながらも剛達4人は既に特装器を手にして立っている。

「まさか……神野くん、現場に行くんじゃ……」

 前原は声を震わせながら言うと救いを求めるように希美に顔を向けるが、強い意志を湛えた視線を向けられて無情とも言える答えを聞く羽目になる。

「私達は特技士です。近隣で妖魔が出現し、民間人に被害が出ようとしている時に、指を咥えて傍観するなど有り得ません」


 剛と希美を先頭に8人は井の頭公園を駆け抜け、吉祥寺駅北口を目指している間に剛は素早く指示を出す。

「俺が西に向かってから北上する!希美はサンロードの方に!翔と奈緒は大通りを北に向かってくれ!桂達4人は避難誘導を最優先に頼む!」

 駅のアンダーパスを抜けて北口ロータリーに出るや否や、剛は特装器に法力を込めて特技を放つ。

 〈溶岩(lava)(bullet)!〉

 銃弾サイズの150発を超える溶岩弾を放つと熱の尾を引いて妖魔の大群に向かい、100体程の中小の妖魔を穿つと炎が上がり、更に100体程の周辺の妖魔が炎に巻きこまれて灰と消えていく。


 妖魔が消滅した路上に剛が向かったのを視線の端で捕らえた希美は特装器を掲げて法力を込める。

 〈(diamond)(dust)!〉

 北口ロータリーの降車場のような場所を中心に半径20mをマイナス200度を下回る極超低温で満たすと妖魔は瞬時に氷結して破砕し、陽光を反射して煌めきながら塵と化して行く。


 翔は奈緒と並んで吉祥寺大通りを駆けながら、まだ民間人が残されている妖魔の群れがいる場所に向けてレイピア型の特装器を向けて特技を放つ。

 〈(shining)(arrow)!〉

 眩い光を放つ50本程の矢は残像を残しながら妖魔の群れに音の速さで飛翔し、妖魔に中ると爆散して周りの妖魔を巻き込むが、その特性から民間人には全く被害を及ぼさない。矢が中って呻き声をあげて倒れそうになった男性からは「あれ?何で?」と言った困惑の声も聞こえた。


 民間人がビル内に退避したのを見届けて、奈緒は特装器のハンマーを掲げて必殺技と言える特技を放つ。

 〈爆裂(explosion)!!〉

 吉祥寺大通りに本町新道が突き当たる路上5mで法力の渦が赤い光点に集約した瞬間、半径20mを爆炎が襲い掛かり妖魔を消滅させ、その5倍の範囲を爆風が渦巻いて妖魔を吹き飛ばし、爆風が収まると何も存在しない路上だけがあらわになった。


 剛達4人と別れた桂達は、桂と山縣、伊藤と前原の2人ずつに分かれて民間人の避難誘導を行いながら、妖魔を1体1体と討伐して行く。

 既にオーク程度なら一人で倒せるのだが、コボルドやオークのように数で押し寄せてくる妖魔には一人で対峙するのは剛達のようには行かず、常に二人でフォローし合いながら妖魔の群れを削り続けていた。

 その時、桂も、山縣も、伊藤も、前原も背筋が凍り付くような――死神と言うのが居るのであればそれに首筋を撫でられるような――死の重圧と言うより死そのものの存在を感じ取る。

 その存在は4人からは100m以上離れている吉祥寺通りに元町通りが突き当たる路上に在り、元町通りからは希美が、吉祥寺通りからは剛がその存在に向けて駆け寄って行く。


 剛が200体を超える妖魔の群れに向かって隕石群を放とうと思った刹那、群れの横合いから飛翔斬が飛んで来て20体程の妖魔を斬り裂いて塵へと変えていった事で、すぐそこに希美が居る事を悟る。

 剛は隕石群では無く土剣山に切り替えて特技を発動させ、5m程の土の針が半径5mの範囲で無数に生じると何十体もの妖魔を串刺しにする。

「姿を見せろ、天道光!」

 剛の呼び掛けに応えたかのように、身長150センチにも満たない小柄な体に青みがかったショートボブの銀髪、白を基調としたロリータ風の衣装に身を纏い、真っ白にも見える顔に輝く金色の瞳は大きく見開かれてどこに焦点があるのか定かでない女――天道光が姿を現した。


「おやぁ……誰かと思ったら去年の夏にアタシが遊んでたのを邪魔してくれたボウヤじゃないか……折角だから、感動の再開を祝って……遊びましょうよ。あーそーびーまーしょーうーよーーーー!!」

 天道は手にしたメイスを掲げてから振り被ると、込められた法力により野球のボール程の眩い光の球が生じる。


 〈破砕(crushable)(photo)(sphere)

 〈破砕(crushable)(photo)(sphere)!〉


 剛はハルバードの穂先を天道に向けて白の法力を込め、天道が放った物と同じ特技を放って迎撃する。

 二つの破砕光球は中間地点で衝突すると、目が眩むような激しい光を放ちながら爆散して周囲を爆風が吹き荒れる。

 爆風に顔を顰めながらも剛は次の特技を発動すべく、特装器に法力を込め始める。

(今は俺の方に意識を向けさせて……そうすれば希美が不意打ちする事も可能だ!)


 〈岩石(stone)(bullet)!!〉


 200発を超えるビー玉程の大きさの石礫が風を斬り裂く音を残しながら天道に迫ると、左右からトロルがその射線を防いで身代わりとなって蜂の巣状態になり、仰向けに倒れながら塵となり暴風に掻き消されていったその時――


 〈(flaming)(blade)!!〉


 5mを超える炎を纏った剣が、剛に集中しきっていた天道を背後から襲い掛かるのであった。

第158話 『UNDERWORLD』 AZALEA(久遠七海 staring Lezel)

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