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Limitless  作者: 神 賢一
第十章 Till The End

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第157話 Tomorrow never knows

 トーフ2年の間は月に一度程度の特務実習をこなしながら、剛達8人は模擬戦や特技訓練を行い、特技士としての力量を高めていた。

 そして平沢達トーイチ3年生を送り出すと、剛や希美はトーフ2年生が終わる春休みに入るのだが、その日の事については剛も希美は決めかねていた。

 トーフ2年の最終日――2026年3月31日。それは、吉祥寺に対妖魔特別警報が発令され、そして――天道光が現れる日であった。

 剛も希美も同じ悩みを抱えていた……翔や奈緒は良い。これまでも一緒にこの難局を乗り越えてきたから。

 だが、桂達4人はこの場に立ち会った事が無い。下手をすれば命を落としかねない、天道との対峙である。


「な~~んか悩んでるぅぅぅ♪ゆーやっちゃいなよ♪やっちゃいなよ♪」

「相変わらずどこから持ってくるネタか分かんねぇなぁ」

 翔が奈緒の頭をわしわしすると、どこの柴犬と言った感じで嬉しそうな表情を奈緒が見せる。

 軽く溜め息を吐きながら奈緒をわしわしし続ける翔は、剛と希美に向かってほろ苦い顔を見せる。

「あいつらがその程度だって言うなら、剛や希美の描いた世界、届かないだろ?だったら、あいつらも一緒に行こうぜ」

 その言葉で剛も希美も、覚悟を決めるのであった。


「春休みの間に屋外で模擬戦をやる?」

 剛が告げると代表格の桂がオウム返しのように聞き返してきた。

「ああ、吉祥寺にSUAD指定の屋外修練場があるから、そこで模擬戦と特技訓練を行おうと思ってな」

 答えを聞いて桂は考え込む。実際に1年近く簡易特技士として妖魔討伐に関わってきたが、特技士では無いためそこまで本格的に屋外で戦った経験は少ない。

 それなら、と思い、桂は校庭の答えを返す。

「じゃあ、僕は参加するよ。いつもの3人が参加するかは別だけどね」


「おいおい、俺らが参加しねぇみたいな言い方すんなよ」

 山縣が桂に抗議すると、それに伊藤が被せてくる。

「桂くんだけでは心配でしか無いですからね」

 多方面から苦言を言われてしかめっ面をしている桂に前原が助け舟のように聞こえる引導を渡す。

「桂くんって自分大事だから、何があっても生き残れるんじゃないかしら?」

 盛大に貶められた桂は剛をチラチラ眺めながら肩を落とす。

「今のパナソニック創業者の松下幸之助の言葉かな……世間は正しい、だったかな」

「とどめですよね?!」

 結局は理由はそれぞれに理屈付けしながら、3月末の井の頭公園での模擬戦と特技訓練には、全員参加するのであった――


「そうするとその日の昼食をどうするか、考えないといけませんね……」

 希美は奈緒の家を思い浮かべて懸念する。奈緒の家の居間は8畳くらいの広さはあるのだが、流石に8人で押し掛けると充分な広さとは言えなかった。

 それに、8人分の食事を奈緒の母親に押し付けるのも負担を考えると気が引ける状況である。

「ん~~?ウチなら8人くらいは大丈夫だよ~~♪」

 そうは言っても流石に手が足りないんじゃ?と剛は思ったが、その懸念を口にする前に奈緒が答える。

「あたしも料理は結構好きだし。あと、翔んるんが手伝ってくれればまっちし!」

「俺かよっ?!」


 とは言えこの8人の中で料理経験は実は翔が一番だったりする。

 平日は無理だが日曜日の休みだったり土曜日の模擬戦から帰宅した後など、母親も祖母も不在の時がたまにあったりすると、そう言う時は大体翔が妹の翼の分も一緒に料理を作っていたりする。

 男の手料理っぽいのは否めないが、それでもちゃんと食べられる料理を作れると言う意味では、翔はこのメンバーの中では最高戦力であるのは否定できない。

 奈緒の無茶振りの結果、模擬戦を終える30分前に奈緒と翔は奈緒の家に向かって到着次第料理の手伝いを行い、その後剛達6人が奈緒の家で合流する事となった。



 2026年3月31日――

 朝9時に吉祥寺駅南口に集合としており、奈緒を除く7人は5分前には集合していた。

(さあ……今日はどこなんだろうな……?)

 剛が振り向いてカレーショップを見るとそこには旨そうにカレーを頬張る奈緒の姿。

(なるほど……こっちだったか)

 苦笑する剛に気付いてその視線の先を見遣ると、希美にもその光景が視界に飛び込んできて、同じようにクスクスと笑い始める。

 それに気付いた翔がカレーショップを見ると、眉根に皺を寄せて扉を開ける。

「奈緒!40秒で仕度しな!」

「40秒?!翔んるん、ネタぶっこむな~~~~!!」

 そう言うと奈緒はカレー皿を抱えて掻っ込むように食べて38秒で終わらせるのであった。


「君らはいつもこんな事やってるの?」

 桂からごく普通の当たり前の疑問が呈された。

「んーー……まあ、俺達にしては日常のコミュニケーション、ってとこかな」

 剛からの答えを聞いて桂は絶望する。

「……神野くん達って、緊張感無いの……?」

 その反応に剛はクスっと笑って返す。

「その緊張感をほぐしてくれるのが奈緒の一番の魅力さ」

 魅力と言われて何故かポーズを取り始めた奈緒を余所眼に、返された答えにどう反応すればよいか分からず、桂は剛の顔を呆然と見つめるだけだった。


 井の頭公園にあるSUAD指定の屋外修練場へは待合せ場所から県道7号線に出て30m程西に進み、七井橋通りを南下して井の頭公園に入ると七井橋と狛江橋を渡り、橋を渡り終えた左手直ぐの場所であった。

 剛達8人は適当な場所を見付けて特装器を置くとストレッチなど準備運動を始める。

 ある程度身体が解れたところで2組ずつ模擬戦を始める事にした。

「最初は翔と奈緒、桂と山縣で良いかな?」

 剛の言葉に奈緒ははいはーい!と元気良く返事をし、残る3人は静かに頷くと模擬戦が行える場所に移動し、残る剛、希美、伊藤、前原の4人は模擬戦の様子が見やすい場所に位置取る。


 剛と希美からすると、翔と奈緒の模擬戦は安心して見られるものであった。これまで3年程一緒に競い合った中であり、特に翔と奈緒は一番回数をこなして来た間柄である。

 一方桂と山縣は、特に山縣の戦い方が二人には余り分かっていない。桂程の関係性も無い上に前世で戦ってきたのは桂がリーダーとして引っ張って来た組であり、どういう戦い方をするのか剛も希美も興味津々であった。

 ……相性が悪い上に、山縣は得物の利点を理解していない。

 その点桂は剣道の大会で上位に来るだけあって、そつが無い戦い方だが敢えて言うなら安全策が過ぎる。

 桂の勝利で終わった後、剛と希美は二人に近付く。

「桂をお願いできるかな?俺は山縣と話する」

 希美は頷いて桂に向かって歩みを進めると、剛は桂に敗れて項垂れている山縣の方に向かう。


「両手剣はリーチの長さと重さがあるから無理に振り回すのではなく、重さを活かして振り下ろしたらしっかり止めて次に備える。そうする事で隙を減らす事ができるし、特に小型妖魔の群れと戦う時に次の一撃に繋げる事ができる。そこを意識して見ると良い」

 剛は倉庫にあった木製の両手剣を振って実演して見せると、山縣は剛のブレの無い剣捌きに驚きの声を上げる。

「神野って剣も遣えるのか?!」

 剛は木剣を気に立て掛けるとその横に立て掛けていたハルバード型の特装器を手に山縣へと向き直る。

「遣えると言えば使えるが、俺のメインはハルバードなのは何度も見ているだろ?」

 あっさりと答える剛に山縣は呆れるしか無かった。


 その後8人は相手を変えながら3時間程模擬戦を続け――30分程前に奈緒と翔は食事の準備で先に奈緒の家に向かったが――剛と希美により桂達4人に対して1対2の模擬戦を最後に撤収して奈緒の家に向かうのであった。

第157話 『Tomorrow never knows』 Mr.Children

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