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Limitless  作者: 神 賢一
第十章 Till The End

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155/166

第155話 この世界は僕らを待っていた

 剛と希美と翔が奈緒の家に行った翌日――

 月曜日ではあるが、放課後になると剛は翔を伴い近所の公園に向かう。

 その手には翔の家――正しくは翔の祖母の家だが、庭の隅に置かれていた長さ1m程の木材の角棒が2本。

 公園に着くと人が居ない場所に向かい、剛は翔に角棒を手渡すと手解きを始める。

「翔はレイピア風の片手剣を使う事になるから、大きな動きよりも瞬発的な動き……そうだな、突きと、肘から先を使った斬り付けを先ずは練習するのが良いと思う」

 そう言うと剛は自ら手本を示し、翔にも行うように促す。

「俺は分かったけど、剛は何の武器を使うんだ?」

 剛は翔に向き直るとふっと息を吐いて穏やかな顔を見せる。

「俺はハルバード……槍に斧と返しが付いた長柄武器だ。今週末材料買って作るから、出来たら見せるよ」



 4人は月に一度、状況報告と現在の実力を確認するために吉祥寺に集まり、井の頭公園で最初の半年は型稽古を、それ以降は模擬戦を行っていた。

「なあ……剣なのは分かるんだが、レイピアってヨーロッパの剣だろ?何で木刀を使うのが良いんだ?」

 特装器としてレイピア形状の物を使用する事になる翔が剛に尋ねる。

 剛は手を差し伸べて翔から木刀を受け取ると、片手で振りながら感触を確かめる。

「木刀って意外とレイピアの刀身の反りに近いんだよ。それに重さも似た感じだから、片手で振り続けている事で特装器を手にした時にすんなり馴染むと思うんだ」

 そう言って剛は翔に木刀を返すと、自作した木製のハルバードを構え直す。

「じゃあ、始めるぞ」



 4人で集まるのは月に一度であったが、剛と翔はほぼ毎日のように近所の公園で模擬戦を行っており、その内週に1回は小金井公園の屋外修練場で特技訓練を行っていたのは前世までと同じであった。

 そして翔は前世までより早く、6年生に昇級する直前に白の個性を手にする。

「……2色持ち、か……」

 掌に白く輝く霞のような法力を見詰め、翔は感慨深げに言う。

「個性獲得だけじゃ終わらないぞ。特技も習得して行かないと」

 剛の言葉に翔は不敵な笑みを浮かべて頷く。



 夏休みに入る直前の7月中旬、4人は井の頭公園に集まって今回は模擬戦では無く合同での特技訓練を、公園内にある屋外修練場で行っていた。

 既に習得している特技を習熟させる事と、翔は獲得した白の個性の特技を習得する事が目的であった。

 屋外修練場の防護壁から20m程離れた場所に立った翔は息を大きく吸って吐いた後、左の掌を防護壁に向けて白の法力を込め始める。


 〈(shining)(arrow)!〉


 翔が特技を発動させるとまぶしく輝く矢が3本発生し、空気を斬り裂きながら残光を残して防護壁に突き刺さる。

「へぇ……翔が空気矢を習得していたのは知っていたが、今度も矢なんだな。でもどうして同じ矢の特技なんだ?」

 剛が素朴な疑問を投げかけると、翔はニヤリと笑みを浮かべて答える。

「煌矢の特徴は人に当たっても無害なんだ。そして、妖魔に当たると……爆発して周囲の妖魔を巻き込む」

「すご~~~っ!何その便利機能~~~?!」

 その特徴に奈緒が奈緒らしい表現で驚きを現すが、希美も感慨深げに顎に手を当てて考えていた。

「人に当たっても無害……まだ避難できていない民間人が居る場合や、混戦になった場合でも人側の損害を気にせずに発動できるのは、非常に大きいかもしれません」

 その希美の言葉に、翔は誇らしげに笑みを浮かべるのであった。



 剛は翔との鍛錬を日曜日を除いて毎日行っていたが、剛自身は日曜日も休むわけではなく、小金井公園の屋外修練場で特技を磨いていた。

 特に6年生に昇級してからは複合特技――単色の法力では無く、2色・3色の法力を使って発動させる特技を習得するために修練を続けているのだが、多色持ち自体が1万人に1人と言う希少性のため中々情報が得られず、手探りでどう言う特技なら発動するかを想像しながら進めるしか無かった。

(御魂衛でも4色……それを考えたら、5色同時発動なんて誰一人試した事が無い特技なのだろうが……天道を倒すには何か今までと違う特技が必要な事は間違いない……)

 剛はひたすら2色、3色、4色の特技を模索し続けるのであった……



 2024年2月――

 剛、翔、希美、奈緒の4人は、西新宿の国立東京第一高等学校附属中学校――通称、トーフに集まっていた。

「やっぴやっぴ~~~♪今日と明日だね~~~♪」

「何か緊張感ねぇなぁ」

 奈緒の言葉に翔が返すが、苦笑いしながら剛が応える。

「でも、試験の緊張を和らげてくれるだろ?それが奈緒の一番の力さ」

 ほへーーと奈緒が呆けたように言うが前世までの奈緒の癖である事を知っている剛はスルーして、希美に顔を向ける。

「行こうか」

 希美は剛の顔を見据えて頷く。

「行きましょう」

 4人はトーフ総合舎に向けて歩を進めるのであった。



 翌日――

 国立東京第一高等学校附属中学校の試験は実技に移っており、学科試験を通過した剛達4人は第3格技室に集まっていた。

「私が最初だけど……大丈夫かしら……?」

 4人の中で受験番号が一番若い希美が懸念を口にするのだが、その懸念は試験に受かる事では無く、無駄に注目を浴びる事であった。

 だが、それに対して剛はニヤリと笑い、希美に向かって事も無げに言う。

「一番得意なのを、遠慮なく叩き込んでくると良いよ」


 希美は30m四方ほどのブースに足を運ぶと、ゆっくりと左手を肩の高さまで真っ直ぐ上げ、静かに法力を込め始めると、これまでの人生で幾度とも無く発動してきた特技を発動させた。


 〈隕石(meteor)(swarm)!〉


 特技が発動されるとブースの天井近くに黒い点――特装器を使っていないにもかかわらず5個の隕石が発生し、瞬く間に赫灼たる熱と光を湛えて音を超えた速さで地面に落下し、溶鉱炉のような灼熱と爆風を超える衝撃波がブース内を満たす。

 その様子に試験官として立ち会っている現役SUAD隊員でもある教官は皆驚愕し、口をあんぐり開ける者や「うわぁ……」とうめく者もいた。

 教官でもその状態であり、希美の事を知らない受験生達は余りの衝撃に半ばパニックに陥っている者も多数存在している。

 ブースから戻って来た希美はその有様を眺めて不安げな表情をするが、翔と奈緒、何より剛が不敵な笑みで迎えてくれているのを目にして軽く首を揺らして笑みを浮かべる。

「次は剛の番ね」

 希美の言葉に剛は自信に満ちた笑みで頷く。


 希美の特技の余波で動揺した受験生の中には上手く特技が発動できなかったり、法力すら発生させる事ができずに試験を終える者が何人かいた後、順番となった剛は希美達に軽く手を上げてブースに向かうと、2回大きく息を吸って吐いた後に両手を斜め下に広げて目を閉じてうつむき、法力を込め始める。


 〈竜巻(tornado)炎舞(flamewind)!〉


 赤と青の相反する個性により発動された特技は赤の個性により直径20cm、高さ1m程の火柱を生み出すと、青の個性により急速に渦を巻き始めて周囲を激しい風で巻き込み、巻き起こる烈風の摩擦から生じた小さな稲妻を伴いながら瞬く間に直径1m、高さ3mの炎の竜巻と化す。

 見た事も無い2色の個性から生み出された特技を目にした教官達は息をするのも忘れたかのように固まり……受験生の中には腰を抜かして床にへたり込む者も現れる。

 その現場の様子を格技棟管理室のモニター越しに眺めていた眼鏡を掛けたやや長身で引き締まった体付きの男が、ニコニコ顔を崩さず静かに呟く。


「遂に現れましたね。私を超える、全色(full)持ち(colors)の存在が」

第155話 『この世界は僕らを待っていた』 茅原実里

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