第151話 The Edge of Eternity
≪対妖魔特別警報発令!!対妖魔特別警報発令!!妖魔出現場所は新宿区西新宿!推定妖魔出現数は15,000から20,000体!!東京第一高校の特技科生徒は特装具を着用、特装器所持の上、第1格技室に再集合せよ!!繰り返す!対妖魔特別警報発令!!対妖魔特別警報発令!!妖魔出現場所は新宿区西新宿!――≫
けたたましく鳴り響くサイレンとアナウンスに、トーイチ生は特装が格納されているロッカールームに駆け出し、成す術がないトーニ生、トーサン生は教員や教官の指示に従って上階にある第3・第4格技室に向かう。
剛達4人も第1格技室の出口に駆けて行ったところ、剛の前に立ち塞がる人影が現れる。
「待ちなさい!剛!!」
「姉ちゃん?!邪魔するな!!」
立ち塞がったのは恵であった。三校合同特別講習でトーイチに来ており、特装科の特別講習が終わってから第1格技室に来ていたのであった。
「邪魔なんかじゃない!アンタ達が戦う意味は何なの?!」
「そこのぺったん娘!!貴様は何をやっておるのだ!!」
横合いから声が掛かりその方を見ると、いつものように白衣の前を開けて足早に近付いて来る入間の姿があった。
「入間……関係無い人間が口を挟まないで!!」
「関係無いのは貴様の方だ!!トーイチ生の、特技士の活動を邪魔建てする気か?!」
恵に掴み掛らんとばかりに近寄って来た入間は顔だけ剛達の方に向けて不敵な笑みを浮かべる。
「素晴らしい模擬戦であったぞ、4人とも。こやつは私に任せておけ。行け!!」
入間の言葉に剛と希美は顔を見合わせて頷き、「ありがとうございます、入間さん!」と剛の言葉を残して4人は第1格技室から駆け出して行く。
「待ちなさい!剛!まだ話は――」
「邪魔建てするなと言うてるであろう!!何の権利があっての事だ?!」
険しい顔で詰め寄る入間に対して忌々しげな顔を見せる恵が反論する。
「何の権利?!あたしは、剛の姉よ!!部外者のアンタこそ何の権利で邪魔するの?!」
「部外者は貴様の方だ!神野恵!!貴様が彼ら4人と共に戦えるのか?!何かサポートでもしてやれるのか?!違うであろう!!」
正論をぶつけられて入間から目を逸らす恵は肩を震わせ拳を力任せに握り締め、歯を食い縛って全身から悔しさを溢れ出させる。
「……アンタは剛の……剛と希美ちゃんの事を知らないから……」
「死に戻りの事か?本田に聞いたわ。それが何だと言うのだ?!」
えっ?と恵は驚く。剛と希美の転生――死に戻りの事を、入間は翔から聞いて知った上で「それが何だ」と言い放ったのだ。
「死ぬのよ?!殺されるのよ?!それを、それが何だとはどう言う事よ!!」
その答えを聞いた入間はいつものように胸の下で腕を組んで、少し身長差がある恵の顔を睨むように見上げる。
「そうだな。この世界での神野と星野は死ぬのかも知れん。だが、それがどうした?奴らは違う世界でまた立ち上がり、修羅と生き残りを賭けて戦うであろう。ならば、私のやる事はその違う世界でも彼らに最高の特装を用意してやる事だ!!」
恵は目の前に居る元同級生が理解できない生き物に――バケモノに感じられた。
転生――死に戻りなんて、違う世界なんて、そんな幻想を信じる事など恵には全く理解できなかった。
だが、目の前に居る入間はその事を受け入れて……いや、恐らく理解して納得しているのであろう。
恵にとって入間と言う存在は、身体的コンプレックスを刺激されると言う点で忌避もしていた部分はあるが、それ以前に何かにつけて特装の話ばかりしている当時から頭がおかしい人物と考えていたが、ここまで自分の常識と掛け離れた、異常と言うより異質な存在とまでは思っておらず、頭も心も理解を拒み続けていた。
「現実を理解できぬと言うのであれば仕方あるまい。だが、私は別の世界でまた彼らと会えると言うのを楽しみにしているぞ。はっはっはっはっは――」
そう言うと打ちひしがれている恵を残して入間は立ち去って行った。
入間が立ち去った後も、恵は立っているのもやっとの状態で項垂れたまま、第1格技室に立ち竦むのであった……
「剛……恵姉ちゃん、あれで良かったのかよ……?」
第1格技室に駆けながら翔が尋ねると、剛は首を横に振る。
「姉ちゃんはきっと受け付けないんだよ、この状況を。頭でも、気持ちでも」
「入間さんみたいな人が稀有って訳か……」
恵の事もある程度理解している翔はそんな状況に悲しげな顔をする。
第1格技室を出るのが遅れたため、剛達が再び第1格技室に戻って来た時には殆どのトーイチ特技科生徒が集結している状態であった。
剛と翔は希美と奈緒の姿を探し、見付けると直ぐに駆け寄って行く。
剛と翔が希美と奈緒に合流すると、そこに御魂が駆け寄って来た。
「神野くん、星野さん、本田くん、鈴木さん。4人は直ぐに出動してください。いつも通りで構いません」
御魂の言ういつも通りの意味を理解した4人は第1格技室から議事堂通りに躍り出ると、剛と希美は北へ、翔と奈緒は南へ向かって特技を放つ。
〈溶岩弾!〉
〈細氷!〉
〈空気矢!〉
〈華炎嵐!〉
密集している妖魔は一撃で100体程の数を減らすが、15,000体を超えて出現しているその数からしたら微々たるものであり、直ぐに次の妖魔の群れが押し寄せてくる。
剛と希美は無限にも思える妖魔の集団に特技を放ちながら進み、北通りが見えてきたところでアイコンタクトで合図し合うと、特装器を掲げて赤の法力を込め始める。
〈〈隕石群!!〉〉
込めた法力、入間の特装器、そして二人同時に発動した相乗効果で北通りの上空50m程に現れた400個程の黒い点は、議事堂北交差点を中心に東西150mの範囲に点在したかと思った瞬間、白く輝き灼熱を湛えて音を置き去りに落下すると轟音と共に地面に衝突し、周囲を焦熱と衝撃波で満たして1,000体を超える妖魔を一瞬にして殲滅する。
北通りのアスファルトは焦熱に溶かされてマグマのように湧き立ち地獄の様相を見せており、剛と希美は格技棟の地下から北通りの向かい側にある西新宿駅方面に向かうと再び地上に戻り、東都医科大学付属病院に続く道に屯する妖魔を狩り続けていく。
剛達と別れて南に向かった翔と奈緒は中央通りを新宿中央公園がある西に向かうと、中央通りの路上にも、立体交差する都庁通りの路上にも数多の妖魔が跋扈するのを目にする。
翔は特装器を掲げて青の法力を込めると、習得した中で最も広範囲に効果を放つ特技を発動させる。
〈細氷!!〉
これまで3年以上に渡り続けてきた特技訓練と、改装されて8倍の特技増幅量を誇る入間特製の特装器により、立体交差を中心に半径50mが-200℃に覆われて瞬く間にあらゆる物が氷結し、氷結した500体を超える妖魔は破砕されて太陽光を反射して正にダイヤモンドダストのような煌めきを生み出す。
「ほへぇ~~、涼しくなった~~~♪」
翔が放った細氷の余波が残る中央通りを奈緒は駆け抜けると、はっきりと目視できるようになった新宿中央公園前交差点に向けてハンマーを掲げ、赤の法力を込めると必殺技とも言うべき特技を放つ。
〈爆裂!!〉
交差点の上空約5mに輝く赤い光点が発生したその瞬間、半径30mが爆炎に包まれて範囲内の200体を超える妖魔を蒸発させ、その熱で爆炎から10m範囲内の妖魔を発火炎上させ、更に半径150mにも及ぶ範囲を熱を伴った爆風が吹き荒れて妖魔を吹き飛ばし、1,000体程居た妖魔は地上から消え去るのであった。
「ヤダーー。折角涼しかったのにまた暑くなったーー」
「相変わらず緊張感無ぇなお前は!」
そう言い合いながら翔と奈緒は次なる妖魔の群れに向けて駆けて行くのであった――
第151話 『The Edge of Eternity』 Stevie Wonder




