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Limitless  作者: 神 賢一
第九章 Dearest

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第146話 冒険者たち

 トーイチ格技棟に戻った剛達はロッカールームに向かい、特装具を外して特装器と共にロッカーに収納するとトーフの学食に集合する。

 予約していた昼食――既に午後3時を過ぎているのだが、中学3年生の剛達にしたら昼食抜きで妖魔と対峙して、そのまま何も食べないと言うのは体がたない。育ち盛りの年代からしたら食べないと言う選択肢は無かった。

「……ったく、剛も希美も無茶しすぎだろ」

 翔が二人に対して苦言を呈する。まだ降下中――それも高度50m以上――のヘリのハッチを開けて隕石群を発動させるなど、無茶どころか無謀過ぎると言っても過言では無かった。


「まあ……落下させるならより高い高度の方が効果あるかな、と思って……」

「自分が落下しちゃうかも知れなかったんだよー」

 言い訳じみた事を言う剛に対して珍しく奈緒がツッコむと、困ったような顔を剛は希美に向ける。

「……剛も私も今は青の個性持ちですから、何とかできたんじゃないかと思うわ」

「いや、根拠弱すぎだろ……」

 希美の言葉に呆れ顔で応じる翔であった。


(やっぱり……出現したか。それも、前世よりも大規模で……)

 一度しか――トーフに入学した時にしか現れなかった小金井公園の妖魔群。それが今回の転生では現れた。

(希美と、俺、か。転生している二人……でも、前の時は希美はまだ転生していなかったはず……)

 何が違うのか。考えてみるが分からないのだが、思い付くことが無い訳では無い。

(転生する『因子』みたいな物、なのか?……それが俺と希美に共通しているとか……)

 仮説はあくまでも仮設でしか無く、剛はベッドに寝転びながら考えるもその内睡魔に襲われるのであった。




「この先の事だけど……」

「ええ……トーイチ1年生だけでも終わらせるような……ですよね」

 夏休みが終わり、始業式を済ませた剛達4人は午前で終わった学内行事の後に学食で昼食を取っていたが、剛と希美が確認するように小声で話し合う。

「そこっ!二人でイチャイチャしない!」

「いや別にイチャイチャじゃねーだろ」

 翔に突っ込まれるも奈緒は不満そうに頬を膨らませて抗議する。

「そう言うのは二人っきりの時にやってよねー」

 剛も希美も苦笑する。翔には話した事を剛は希美に伝えていたが、奈緒は『知らない」人である。

(でも、奈緒に説明するのは相当苦労するなぁ……)


 その足で剛と希美は御魂を訪ねていた。

「え?特務実習の出動を最初にして欲しい、ですか?」

 普段のニコニコ顔から少し眉根を寄せて、希美から言われた言葉に御魂は意外性を感じていた。

「はい。先日の小金井公園での特務実習でも見て頂いた通り、私も神野くんも遠距離範囲特技を得意としています。混戦になると使うのが難しくなりますので、私達4人が最初に出動して混戦になる前に妖魔の数を減らしておきたいと思っています」

 その言葉を聞いて御魂は珍しく――最近は何故かそうなる事が多いのだが――真顔になって顎に手を当てて少し思案した後、いつものニコニコ顔に戻って希美に答える。

「まあ、以前にも似たような事をしていましたから大丈夫でしょう。上申してみますので少し待っててください」



「それで最前線に送り込まれる僕らの立場にもなって貰えないかなぁ……」

 小金井公園での妖魔討伐から1か月半程が経過した10月第2火曜日――原宿警察署のすぐ裏にある原宿外苑緑道付近に妖魔が出現して対妖魔警報が発令され、特務実習に出動する装甲輸送車の中、桂は剛と希美に恨みがましい目を向けていた。

 夏休み直前の北の丸公園での特務実習同様に、剛達と同じトーフ3年Aクラスの生徒6人は、装甲輸送車の定員が10人と言う事で今回も同じ装甲輸送車に乗車して、トーイチ生徒が出動する前に地下駐車場から現地に向かっていた。

 電車のロングシートのように向かい合う形で5人が座る装甲輸送車だが、進行方向左側にハッチに近い方から剛、希美、奈緒、翔、槍使い女子生徒の宍戸が座り、反対側は桂、伊藤、両手剣使いの山縣、ウォーハンマー遣いの松本、一番奥にメイス使いの女子が座っており、何やら翔と話し込んでいた。


(あれ?……この間は気付かなかったけど、前原さんかな?)

 2年までは同じクラスでは無かったが3年になってAクラスに昇格してきた、小金井五小で同じクラスにもなった事がある女子生徒である事に剛は漸く気付く。

 そして翔が前原と話をしている横で、奈緒はガルガルと言った雰囲気を醸し出していた。

「あたしの翔んるんになれなれしくしないでよっ!」

「いつからてめーの物になったんだよっ?!」

「え~~翔んるん()遊ぶの面白いのに~~」

 剛は余りの緊張感の無さに苦笑いしながら軽く溜め息を吐く。


 現場に到着すると剛達は装甲輸送車のハッチから飛び降り、妖魔の状況を確認する。数は約200――正直なところ、剛達4人であれば1人でも討伐可能な数である。

「翔!奈緒!二人で中央を先行してくれ!俺と希美は左右から掃討する!桂はみんなを纏めて討ち漏らしを片付けてくれ!」

 剛の言葉に奈緒が真っ先に妖魔の群れに突進し、翔は「またお守りかよ」と不満を言いながらも奈緒を追って空気矢で小型妖魔を討伐し始める。

 剛達も左手に外国車のショールームを見ながらピロティとなっているビルの下を抜けて緑道に駆け込むと、中央の遊歩道を挟んで剛は右側の、希美は左側の林に侵入して妖魔に向けて特技を発動する。


 〈岩石(stone)(bullet)!〉

 〈空気矢(air arrow)!〉


 木立であり緑道の右手側には1階に結婚式場が在る中層ビルが建っているため、二人が得意とする火力を前面に押し出した特技は使い辛い。

 それでも二人にとっては攻撃手段となる特技は多数存在しており、着実に妖魔を減らしていく。

 木立の中と言う事もあって完全には把握しきれない討ち漏らしを、桂達6人が連携を取りながら1体1体丁寧に討伐していく事3分。

 後発したトーイチ3年生が徐々に緑道内に侵入してくるが既に殆どの妖魔はトーフ3年生10人に討伐されており、僅かばかりの戦闘の跡を見る事ができただけであった。

「神野達に付き合わされてる6人も災難だな」

「ま、むしろそいつらにとっては良い経験じゃないか?」

 富澤と伊達は林の中に入り込んで、話をしながら討ち漏らしが無いかを確認して行った――



 対妖魔警報は10日後の次週金曜日、更に10日後の次々週月曜日、その1週間後の翌週月曜日と、間を置かずに3度発令されたが、何れも200体から300体と言う小規模の出現であり、剛達がトーイチ地下駐車場を先発してその後にトーイチ生が出動すると、到着して現場に突入した頃にはほぼ終わっている状況が続いた。

 最初の内はトーイチ生も楽で良いと考えていたが、2度も3度も同じような状況が続くと流石に疑問に思い始める者が出て来た。

「なあ石田……俺ら最近戦っとらんやろ。この状況アカンのとちゃうか?」

 トーフ入学のために大阪から上京してきてそのままトーイチに進学した生粋の関西人である井上が、同じくトーフ入学時に上京してきた相方と言える石田に不安を訴える。

「そんな気にする事か?妖魔の数が少ないんやったらそれはそれでええやん」


「そうやって気ぃ抜いた時に特別警報出たらどないすんねん?」

 何を心配性な……と石田は思うのだが、それ以上に井上の懸念は強かった。最後に真面まともに妖魔討伐を行ったのは7月中旬の北の丸公園での特務実習であり、小金井公園の特別警報の時は出動すらできず、既に4か月もの間妖魔との戦いを経験していなかった。

 このままでは妖魔との戦いのカンを忘れてしまうし、何よりも気持ちが緩む――それがトーイチ全体に蔓延する事を井上は危惧し、行動を起こすべく席を立ち上がる。

「ちょっと俺教官に言うてくるわ」

第146話 『冒険者たち』 Do As Infinity

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