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天使のフットボール  作者: リリー
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30/39

30、先輩③

西村のことをあまり話したくないのか…

モゴモゴしていた戸田がようやく口を開いた。




私とちさは中学1年からエンジェルスのユースに入団して

1コ上の先輩に樹里さんがいた。


その当時の樹里さんはサッカーの実力はもちろんのこと容姿もズバ抜けていて

美少女って感じの樹里さんに私やちさだけじゃなく同期の皆が憧れてた…

樹里さんは練習では厳しかったけどそれ以外では後輩に本当に優しくて

特にちさは妹のように可愛がられてた。

ちさは一人っ子だから樹里さんのことを本当のお姉さんみたいに慕ってて

普段のファッションからサッカーのスパイクもヘアゴムも何をするにも樹里さんのマネばかりしてた。


私とちさは中学校は別々だったんだけど樹里さんがいる高校を受験して二人とも合格した。

ちさはクラブチームだけじゃなくて学校でも樹里さんと絡めるって喜んでたの。

授業が終わってから練習に行くときはいつも3人で一緒だったし

学校が早く終わった日とかは遊びに行ったりもしてて本当に楽しかった…



樹里さんには好きな人がいたの。

同級生の速水さんって人だったんだけど・・・

速水さんは高校のサッカー部で女子からは凄い人気だった。

樹里さんは速水さんとサッカーを通じて仲良くなってたみたいで

二人が話しているときは私達は近づかないように気をつかってた…

速水さんと話をしているときの樹里さんは乙女の顔になっていて本当に楽しそうだった。


私達が高校2年の夏頃だったかな・・・

速水さんが頻繁にちさに話しかけてくるようになって。

ちさも速水さんってカッコイイとか言ってたけど

学校中のアイドルみたいな人だったから話しかけられてビックリして…

速水さんはちさのことが好きだったみたいで何回も何回も誘われてたみたいだけど

ちさは樹里さんの気持ちを知っていたからずっと断っていた。


ある日、練習後に私とちさがファミレスでご飯食べてたんだけど…

偶然、その店に速水さんがサッカー部の人達と来て

一緒に食べようよ!ってなってしまって・・・

もちろん、ご飯食べた後はすぐに帰ったし

ちさは連絡先を聞かれても教えなかった。


それが悪いことにご飯食べてたのを樹里さんの友達に見られてたんだ…

翌日には樹里さんの耳に入って

しかも、ちさと速水さんが2人でデートしてたみたいに吹き込まれたみたいで。

ちさに対する樹里さんの態度が一変しちゃったの。

シカトに始まってドケ!と言いながら突き飛ばしたり

練習ウエアや弁当をゴミ箱に捨てられたりスパイクを水たまりに入れられたりして…


だから私は樹里さんに何回も言ったんだよ。

ちさと私が2人でご飯食べてたとこに、たまたま速水さん達が来ただけだって!

そしたら、今度は私にも同じことをするようになって…

毎日毎日そんなことばかりされてたから私、もうサッカーをヤメようと思ってたんだけど

嫌がらせをされる度に、ちさが「私のせいで迷惑かけて本当にゴメンね!」って泣きながら謝ってくるから

私がヤメたら、ちさはもっとヒドイ目に合う!

私がちさを守ってやらなきゃって思うようになったんだ。



2ヶ月くらいは2人で我慢してたんだけどこのままじゃエスカレートする一方だと思って

私、思い切って当時ユースの監督をしていた西田さんに打ち明けたんだ。

そしたら西田さんは「分かった!」と一言だけ言い残しその場を去って行った。

西田さんはいつもニコニコして明るい人なんだけど

そのときの西田さんの顔は怒っていて本当に怖かった・・・


翌日から樹里さんは練習に来なくなった。

退団させられたって聞いた。

私とちさは西田さんに呼び出され監督室に行ってみると

西田さんは土下座をしながら「ツライ思いをさせて本当に申し訳なかった。」と謝ってきた。

私達は大好きなサッカーをまた楽しくできるって西田さんに本当に感謝した。

先輩達も私とちさに謝ってきた。

樹里さんは女王様だったから誰も逆らえなかったのは分かってたから逆に申し訳なかった…


たまに学校で樹里さんとすれ違ったりしてたけど、お互いコミュニケーションをとることもなかった。

そして樹里さんは卒業した・・・


樹里さんはサッカーをヤメたと思ってたんだけど大学でまたサッカーを続けてたんだ。

そして3年前、名古屋に入団して私達はNリーグの試合で再会した。

最初の対戦のときに、ちさと挨拶に行ったんだけど「いちいち来るな!」とか怒鳴られちゃって…

その後、樹里さんは大ケガしたから対戦することはなかったんだけど。

今年また復帰して、ちさはこの前の試合でも挨拶に行ったんだけど完全にシカトされてた。

私はもう関わらない方がいいんじゃない?って言ったんだけど

ちさは「私のお姉ちゃんみたいな人だったし、いつか分かってもらえる」って言って聞かなかった。




一生懸命話してくれる戸田の目には大粒の涙が溢れていた…


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