29、先輩②
前節で負傷退場した武藤ちさのことが心配で心配で仕方なかった。
次の試合には出場できるのだろうか?
今シーズンこのまま出れないのでは?
人の心配などしたことがない俺がそんなことばかり考えていた…
金曜日の夕方、浅草で野暮用を済ませた俺は浅草駅へ。
駅ではチラシを配っているサッカー選手が数人いた。
(デカイの2人と小さいの1人か。ひょっとして、ちさちゃんも…)
なんてことを思いながら近づいてみると
八神・北原・戸田の3人だった。
(はぁ…八神かよ。)
なんか、鬱陶しい気分になったので知らん顔をして通りすぎようとした。
「おっ!エロホスト!おーい!おーい!」
八神が大声を出して寄って来やがった…
「あぁ…チラシ配ってたのか?ちーっとも気づかなかった!」
「嘘つけ!明らかに避けてただろ。」
「あっそうだ!ちさちゃんのケガは大丈夫なのか?次の試合は出れるのか?」
「教えなーい!」
「チッ!なんでだよ!」
「チームの守秘義務。」
「じゃあしょうがねーな。」
八神と話していると北原が近づいてきた。
「こんばんは!もうすぐチラシ配るの終わるんで
終わったらお店に行ってもいいですかー?」
「ダメダメ!明後日、試合だし。」
「明日はオフだからリフレッシュしたいんですよ!」
「エンジェルスの選手は出禁だからダメ!」
「なんで?ちさのケガの情報を教えますよ!」
「ん・・・!?いいよ!遊びに来な。息抜きも必要だしな。」
「やったー!」
「なんで、そんなに店に来たいの?」
「息抜きですよ!息抜き!あはは。」
しばらくすると支配人から声が掛かった!
「勇気、ご指名だ。あのデカイねーちゃんだ。
なんか幼いコを連れて来たけど高校生じゃないだろうな…」
「え!?」
幼いのは戸田葵だった・・・
(八神の野郎、また仲間を増やしやがって‼)
「よっ!来てやったぞ!」
「こ…こんばんは。」
「はぁ…戸田さん!こんなとこ来ちゃダメだよ!」
「あ、はい…」
「葵はちさにチクるから連れてきたんだ。これで共犯!」
「そっか…あれ!?北原さんは?」
「今日は一人で座るってさ!」
店内を見渡すと北原は既に幸一郎を指名し楽しそうにはしゃいでいた。
(あ~ぁ…大丈夫かよ。)
「どうなっても知らねえぞ!大丈夫なのか?」
「え!?亜由のこと?なんか幸一郎君のことめっちゃタイプなんだって!」
「戸田さん、八神の相手してると北原さんみたいになってしまうから気をつけなよ!」
「は、はい…」
「なによそれ!失礼ね‼」
「八神が連れてくるからあんなになっちまったんだろ?」
「ギクッ!」
「言っとくけど俺は助けてやらないからな!」
「そんなこと言わないで何かあったら助けてあげてよー!
幸一郎君の先輩でしょ!!」
「甘い‼ホストに道徳心を求めんな!
それよりも、ちさちゃんのケガは大丈夫なのか?」
「知らなーい!」
「チッ!またかよ。
でも、なんであの名古屋の西村樹里奈ってヤツはあんなにラフプレーを繰り返してたんだ?」
「エンジェルスに恨みでもあるんじゃないの。
葵は何か知ってる?」
「あ~…」
「え!?マジで何かあるの?」
「う~ん…」
「大丈夫!私もエロホストも誰にも言わないから!」
おとなしくしていた戸田葵がポツリポツリと語り始めた・・・
「樹里さんはユース時代の先輩で…」




