24、ケンカのあと
「亜由、ここだよ。ここ!」
「えっ!?ここホストクラブじゃん…」
「勇気、ご指名だ!あのボーイッシュのでっかい姉ちゃんが来たぞ。」
「マジっすか?」
「今日は連れもいるぞ。なんか二人ともモデルみてーだな。」
「連れ?あ、はい。分かりました。」
俺は席へと向かった。
(八神…マジかよ!ん!?一緒にいるのは北原か)
「おーい!来てやったぞ。」
「え?なんで来たんだ?今日試合だったじゃん!北原さんまで…」
「なんか、おもしろいとこあるから飲みに行こうって誘われたんですよ。あはは。」
「北原さん、こんな不良女子サッカー選手に付き合ってたらバカがうつるよ!」
「なに、その言いぐさ?文句あんの!」
二人ともどんどんどんどん酒を飲み始めた
そのペースがまた早い
「あれ?そういや二人は今日ケンカしてなかった?」
「ケンカしました…」
「でも、そのあと二人で話し合ったんだよ。」
「私が間違えてました。綾香に文句言ったりして申し訳ない
って反省したんです。」
「まぁそんなこんなで仲直りして飲みに行こうってなって~」
「てなって~ホストクラブかよ!試合後の選手がこんなとこに来るとか普通におかしいだろ?」
「もう固いこと言わないでよ!」
「葵も誘ったんですけど帰っちゃいました…」
「それがマジメなサッカー選手だよ!帰って疲れを癒さないと…」
「ジジイみたいな説教するな!」
「そういえば、二人がケンカしてたとき、ちさちゃんと葵ちゃんはゲラゲラ笑ってたよね?」
「笑ってましたね。なんか私と綾香は必ずケンカするって、ちさが葵に言ってたらしいんですよ。」
「そしたら予想通りケンカしたからマジうけるとか言ってたらしいよ!失礼だよね!」
「葵は少しは心配してたみたいで私達の話し合いが終わるまで待っててくれたんですけど…」
「ちさは疲れたとか言ってさっさと帰っちゃたし!あのガキャ!!」
「そうだったんだ!そりゃおもしれーや。」
「まあ、ちさは仲直りするまで予想してたって葵が言ってたんですよ。」
「何もかも、ちさちゃんは分かっていたんだよ!あの子はスゴイなー!」
「はぁ?何がスゴイんだ?うちらが大人だったからだよ!!」
「あ~てか、私、こういうとこ初めてなんです…」
「まぁ普通は女性一人でホストクラブに乗り込んだりしないよね?
約1名、そういうのがいるんだよ!」
「綾香は一人で乗り込んで来たんですか?」
「あぁ!ちさはホストに狂ってんのか?って大騒ぎしてさ。」
「ちょっと、そんな大騒ぎはしてないでしょ!ちさが心配だったんだよ…」
「でも、ちさはこういうとこに来るような子じゃないでしょ!」
「だって!このエロホストが、ちさのユニ着てたから…」
「ちさを応援してるフリをしてるんだろ!って、俺に食って掛かって。」
「ははは。ウケる!」
「酔っぱらいの相手は大変だよ。」
「あー!あれ!シャンパンタワーやりたーい。」
「八神と同じこと言ってるよ…」
「ねー、亜由。あれやってみたいよね!」
「高いからヤメな!」
「あ、綾香。あそこに立ってる人、超イケメンじゃない?」
「どこどこ?あっヤバイ!!イケメンじゃん!」
「お兄さん、呼んでくださいよ~」
「おーい!そこのイケメンさ~ん!」
後輩の幸一郎が気付いてこちらに歩いて来た…
「こんばんはー。勇気さん、こちらはモデルさんですか?」
「いやいや、ただのバカ二人組だ!関わらない方がいいぞ。
お前も忙しいだろ。戻れ!」
「あ~すみません。何かあったら声かけてくださいね。」
「分かった!分かった!」
「ちょっと、なによ!せっかくイケメン君が来てくれたのに。」
「そうですよ!あんなイケメンと話す機会なんてなかなかないんですよ!!」
(こいつら必死だな…)
「あのな、アイツはこの店のNo.1だぞ!
金もない年上のおばちゃんなんか相手にするわけないだろ。」
「チッ!つまんないのー。」
「おばちゃんは言い過ぎじゃないですかー?」
「いやいや、アイツはまだ20歳だから…
アイツから見たら、お・ば・ちゃ・ん!」
「ふん!もういいですよ!!」
とか言いながら実は八神と北原が幸一郎にハマってしまうのが怖かった。
アイツのイケメンとコミュニケーション能力を持ってすれば簡単に落ちるのは分かっている…
後輩の稼ぎの邪魔をするつもりはないが二人に地獄を見させるわけにはいかない。
サッカーに集中してもらいたい心底そう思った。
「二人とも、もう帰って休んだ方がいいんじゃない?」
「まだ早いですよ・・・」
「ねえ、エロホスト!ちさのどういうトコがいいの?」
「あっ、私も聞きたい!」
「そうだな~!まず、笑顔が太陽なんだよ!
あの子がニコッと笑うと太陽みたいにパァーッと光が差し込むんだ!」
「プッ…」
「ね、ヤバイでしょ。」
「八神、なにがヤバイんだ?」
「あっいや!で、それで?」
「ん~、俺から見たら天使なんだよ!」
「天使だと!?」
「綾香、お兄さんが言ってるのはいつもうちらが一緒にサッカーやってる~ちさのことだよね?」
「だ…だと思う。」
「俺がスタジアムで見てるのは、まさに天使のフットボールなんだ!
その天使が突き飛ばされてもスライディングかまされても
真夏の炎天下にフラフラになりながらも立ち上がってまた走り出すひたむきな姿に
いつもいつも感動させてもらってるんだよ。」
「きゃはははははははははははははははは」
「ひゃはははははははははははははははは」
八神と北原の大笑いが店内に響き渡った
「エロホスト!テメー、頭おかしいんだろ!!」
「も~ヤバイ!腹痛い!そういうのヤメて!!!」
「え!?な…なにが?なんで感動しないんだ?」
「黙って聞いてりゃ何が天使だ?」
「笑顔が太陽だって!ぷぷ…」
「あのな!エロホスト、私達だって同じなんだよ!
体を張ってシュートブロックしたり痛い思いしてみんな頑張ってるんだぞ!」
「そうですよ!ちさだけじゃないんだから!!」
「そりゃ分ってるよ!」
「ちさの前でオドオドしやがって!武藤さん頑張ってください!とか言ってたし!」
「ははははは。なにそれー!ウケる!そんなこと言ってたの?」
「桜まつりのときだよ。ちさが来たら緊張しまくってたよ。」
「しょうがねーだろ!」
「そういえば昨年、駅前でチラシ配りしてたときも、ニヤニヤしながら凄い早歩きでちさに近づいてきたんだから!
もう私、不審者だと思って股間を蹴り上げてやろうと思ったし!!」
「えっ?そんなに怪しかった?」
「めっちゃ怪しかった!!」
「蹴り上げて再起不能にしてやればよかったんだよ!だって天使とか言うんだぜ!」
「あっはははははははは!天使はヤバイって!もうそれツボるからヤメて!!」
「でもエロホストの気持ち少しだけ分かるかな。
ちさが怒ったときキャンキャンキャンキャン言ってカワイイもんね。」
「あー!あの小型犬みたいな怒り方でしょ?」
「そうそう!あれカワイイよねー。」
「癒される!あれを見たいときわざと怒らせたりしてさ。
もー、ちさ!カワイイーってなるよね。あはは。」
「綾香サイコー!よく分かってる!!」
(こいつら、ちさちゃんを犬扱いかよ・・・)
俺を散々バカにして八神と北原は帰りの準備を始めた。
「ねえ、亜由。おもしろかったでしょ?」
「いやー、ヤバイヤバイ!ホントおもしろかった!」
「エロホスト!マジウケたよ。100点!」
(くそ…八神の野郎!少しからかってやる!)
「さあ、綾香お嬢様!いつものようにおんぶをして階段を上りますよ!」
「えっ!?マジ?綾香!いつもおんぶとかしてもらってるの?」
「うっ…」
「さあ、綾香お嬢様!こちらへどうぞ!」
「ち…違うよ!あ、あれよ!こうやって体を触ろうとしてるのよ!!
なんたって相手はエロホストだからさ。」
「なにそれー、気持ち悪い!お兄さんそういうのマジキモイからヤメて!!」
「いや、違うって・・・いつも八神が…」
「ほら、亜由。帰るよ!」
そう言うと八神は自力で階段を駆け上がった。
「じゃあ、二人とも気をつけて帰るんだぞ!」
「はーい。もうセクハラはしないでくださいね!」
「そうだぞ!エロホスト!」
(こいつら・・・)
「次の試合も応援行くから頑張れよ!」
「了解でーす。」
「エロホスト、任せときな!次の試合は足が折れてでも勝ってみせるよ!!」
(八神は去り際だけはいつもカッコイイんだよな…)




