23、試合後
開幕戦に負け、出ばなをくじかれてしまった浅草エンジェルス。
気持ちを入れ替えての2戦目は横浜でのアウェイゲーム!
昨年、2部リーグで優勝し、1部に昇格してきたシーピアー横浜が相手だ。
一方、一泡吹かせようとする新参・シーピアーはガチガチに守りを固めてきた。
エンジェルスは開幕戦同様、攻めまくるも決め手に欠く試合展開。
なかなか点を取れない攻撃陣に八神の叱咤する大声が頻繁に聞こえていた!
後半40分、北原がペナルティエリア付近でファウルをとられてしまう。
このFKを横浜の山崎に直接決められてしまう…
残り5分、必死に攻撃するも得点できず試合終了・・・
またしても負けた。
開幕2連敗だ。
「長老、どうしちゃったんですかね?」
「本当に何やってんだか…」
周りのサポーターもガッカリしている様子だった。
そんなとき・・・
「テメー、いちいち!うるせーんだよ!」
北原の声が聞こえて来た。
「そんな言い方しなくてもいいじゃない!」
北原と八神が何やら揉めているようだった。
「ゴチャゴチャ言うから混乱するだろ!」
「あれだけファウルに気をつけろって言ったのに!何やってんの?」
ピッチ上での大声にスタンドの観客も一様に驚いた。
「なんだ、なんだ?ケンカが始まったぞ!」
「誰だよ、あれ?」
「あーぁ!長老、ケンカをおっぱじめましたよ…」
「元気があっていいじゃねえか!はっはー。」
(長老、笑ってるよ・・・)
ユニフォームをつかみ合っている二人をキャプテンの谷口が止め
周りの選手達も二人を必死に引き離そうとしていた。
俺はふと、ちさちゃんの方を見た。
(あ・・・)
ちさは戸田葵と二人でゲラゲラ笑っていた…
(な、なんで?この子は笑ってるんだ?友達がケンカをしているというのに…)
そんな、ちさちゃんを見て俺もつい吹き出してしまった。
「長老、武藤と戸田は笑ってますね。はは。」
「ははは。落ち込んではいないようだな!安心したよ。」
「そうですね。昨年、連敗したときはこの世の終わりみたいな感じでしたもんね。」
「まだまだ、大丈夫だ!じゃあ、来週な!」
「そうっすね!」
連敗だしケンカはするし本当に大丈夫かな?などと思いスタジアムを後にした。
どうにかその場は収まり選手達もロッカーに引き上げた。
ミーティングも終了しメンバーも帰り始めたときだった。
「ねえ、北原さん。ちょっといい?話あるんだけど。」
八神が北原に声をかけた。
「なによ!」
そして二人はベンチに座り話し始めた。
「私の言い方が気に入らなかったのは謝る。ゴメンなさい!」
「別にいいよ…」
「あのね、北原さん。なんで私がエンジェルスに移籍したか分かる?」
「ど、どうせあれでしょ!女王様になって威張りたいだけでしょ?」
「そんなことの為にわざわざ移籍しないよ!」
「じゃあ、なに?」
「私はこのエンジェルスをどうにかして優勝させたいと思ったの!
本当にこのチームで優勝したいの!」
「それは私だって同じだよ!昨年あれだけやれたんだし!」
「昨年あれだけやれたから今年も普通にプレイしてれば勝てるって思ってるでしょ?」
「そりゃ今年は優勝候補って言われてたし自信もあったよ…」
「エンジェルスは相当、研究されてるよ!昨年と同じことをしてても勝てないよ!」
「え!?」
「パスの出しどころもシュートのタイミングも何もかも読まれてるよ。」
「うん・・・」
「あと、西田監督は策はあるとか言って悩んでるのを聞いたんだ…
それをするとチームワークが乱れるんじゃないかって危惧してた。」
「私?」
「多分ね!私は文句を言ってるんじゃないよ。そこは分かってね!」
「うん・・・」
「何回も言うようだけど本当にこのチームで優勝したいの!
だから試合中に気づいたことを言ってただけなの。」
「八神さん、分かったよ…私こそ勘違いしたりカッとなったりしてゴメンね。」
「綾香でいいよ!タメだしさ。」
「う、うん…」
「一緒に優勝しようよ!」
「綾香!でも、もう2連敗してしまったし…」
「まだ2試合じゃない!リーグ戦は始まったばかりだよ。」
「まだ、2試合か…よっしゃー!やってやろうじゃねえか!!
監督の策でもなんでも聞いてやるよ!」
「よし!じゃあ、飲みに行こう!」
「えっ!今から?」
「うん!明日は休みでしょ?おもしろい店があるんだ!」
「へーおもしろい店?よし、行ってやる!!」
「そうこなくっちゃ!!」
二人は意気投合してベンチから立ち上がると
隠れていた戸田が近づいてきた。
「もう話し終わったの?」
「葵!あんたまだいたの?」
「だって、殴り合いとかなったらマズイじゃん…」
「なんないよ!それよりもさ、飲みに行くんだけど葵も行かない?」
「飲み?あんなにケンカしてのに?」
「うん。もう済んだことはいいの!ねえ、綾香!」
「そうそう!これから亜由との結束会をするんだから!」
ケンカによるチーム崩壊かと思われたが腹の底から話し合った二人はお互いを理解し信頼感が生まれたようだ。




