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天使のフットボール  作者: リリー
21/39

21、シーズンスタート

待ちに待った開幕戦がやってきた。

昨晩は遠足前日の子供のようにワクワク感が止まらずなかなか眠りにつけなく

朝は朝で興奮し早くに目が覚めた。

13時キックオフだというのに待ちきれず9時には台東区スタジアムへ到着した!


開門ゲート付近にはすでに長老がスタンバイしていた。

長老も開幕が待ちきれないようだ。

「おっ!兄ちゃん。久しぶりだな!」

「ども、今年もよろしくお願いします。」

「ヨロシクな!」

「この日が楽しみで楽しみで!」

「おう!なんたって今年は優勝候補だからよ!しっかり応援してやってくれよ!!」

「そうっすね!」

昨年の浅草エンジェルス快進撃の影響もあるのか

ユニバーサル大阪をホームに迎えての開幕戦に大勢の観客が詰め寄せた。


11時には開門となりダッシュで昨年お世話になったいつもの指定席へ。

(ココだ!ここが俺の指定席だ!!)

4ヶ月ぶりに戻ってきたその席は本当に居心地の良い場所だった。


弁当を食べてくつろいでいると選手達がウォーミングアップを始めだした。

「ちさ、頑張ろうね!」

「おう!あや、絶対勝とう!!」

「あっ!エロホストがマヌケ面で弁当食べてるよ!ウケる!!」

「コラ!そういうこと言っちゃダメって言ったでしょ!」

(よし!今年も来てくれた…)



やがてキックオフの笛が鳴り、いよいよ今シーズンが開幕した。

試合はエンジェルスが一方的に押しているものの

なかなかゴールが奪えない展開が続いた・・・

前半終了で両チーム無得点。

エンジェルスの一方的な展開にそのうち得点できるだろうと楽観視していた。

後半15分、試合が動いた・・・

押しに押し込まれていたユニバーサルに縦パス一本でカウンターを仕掛けられ

あっという間に先制されてしまう・・・

「あ~・・・」

スタジアムにはため息が漏れた。


先制はされたが猛然とユニバーサルゴールに襲い掛かるエンジェルス。

何度も何度も攻め込むがどうしてもゴールが奪えない…

次第に選手達にも焦りが見えてきた。

そして、後半43分。

1点目と同じようなカウンターを喰らい失点してしまう・・・

土壇場での2点目に絶望感を感じた。

そして、そのまま試合終了のホイッスル!

圧倒的にゲームを支配しながらの敗戦だった。


「長老、あれだけ押していながら負けましたね…」

「そうだな…相手からしたら計算通りの試合プランだよ!」

「え!?圧倒的にエンジェルスのペースに見えましたけど違うんですか?」

「違うな!まんまと罠にハマっちまってたよ…」

そんな話をしていたら八神が近づいてきた。

「あー、長老!負けちゃった…ゴメンね。」

「バカヤロー!あや、次は負けるんじゃねえぞ!」

「はーい。じゃあね!」

そう言って八神はロッカーに引き上げて行った。


「あれ、長老は八神と知り合いなんですか?」

「あぁ、家が近所なんだよ。あいつが幼稚園のときから知ってるよ!」

「マジっすか!」

「おう、あいつは家庭環境が複雑でな…」

「えっ…」


長老から八神の意外な話を聞かされた。

「あやは中学校入学と同時に親元を離れてエリーザの寮に入ったんだ。

そして、高校1年のとき母親が亡くなっちまってよ。

あいつは父親を心配してエリーザを退団して実家に戻るって言い出したんだけどさ、

父親が大丈夫だからサッカーを続けろって言ったらしいんだ。」

「父親も熱心な人ですね!」


「いや!それがよ、母親が死んで1年も経たねえうちに新しい女を作っちまってさ。

そのことで、あやは本当にショックを受けたらしくてな。

自分には帰る場所がなくなったとか言って

実家に全く帰らなくなったらしいんだ・・・」


(八神のヤツ、俺と同じじゃねぇか・・・)

「それは思春期の女の子にはショックが大きいですよね。」


「まあ、俺も男だから父親の気持ちも分からなくはないけどな!

もう何年も連絡すら取ってないってお父ちゃんも嘆いてたよ…」

「八神も寂しいヤツだったんですね・・・」

「そうだな。おっと、帰らねえと!じゃあ、また来週だ!」

「お疲れっす!また来週っすね!!」


八神が俺と同じ境遇だったとは思いもしていなかった・・・

ただ、あいつは俺と違う。

一心不乱にサッカーに打ち込んで代表選手にまで上り詰めたという点だ。


開幕戦の敗戦よりも八神の話の方がショックだった。

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