11、接客①
代表の合宿があるということでNリーグは2週間の中断期間となった。
浅草エンジェルスの試合が見れないと人生に物足りなさを感じる…
そんなとき、ちょっとしたエピソードがあった。
いつものように地下鉄を降り、店へと向かっていると
明らかに俺を尾行している女がいる。
(それにしても尾行がヘタくそな女だ…バレバレじゃねえか)
職業柄ストーカー行為をされるのは度々あることだが
事件にでもならない限り警察に訴えたところで相手にもしてくれない。
それどころか「クスリでもやってるんだろ」とか「精神科で診てもらえ」
などと罵倒してくる警官もいる始末だ。
開店と同時に支配人から声が掛かった。
「勇気、御指名だ。初めて見るお客さんだな。」
テーブルに行くとラフな服装で少し大柄な女が座っていた。
(この服装…さっき尾行してたヤツだな)
「こんばんは-!初っすよね?」
「は…はい。」
女が顔を上げた。
(あっ!こいつは…)
そこには東京エリーザのディフェンダー・八神綾香が座っていた。
(どういうことだ?尾行して来たくらいだから俺のことを知ってるんだろうな…
単刀直入に聞いてみるか)
「あの、東京エリーザの八神さんだよね?」
「あっ…私のこと知ってるんですね。」
「知ってるよ。八神さんはエリーザの守備の要で代表にも選ばれたこともあるんだよね?」
「はい。今回の代表合宿には選ばれませんでしたけど…」
「俺は浅草エンジェルスを応援してるから敵だけどね。ははは。」
「やっぱり、あの人ですよね。
メンバーの間でも、なんかホストみたいな人いるよって言ってたんですよ。」
「えぇっ!俺、そんなに目立ってんの?」
「結構、浮いてますよ。あはは」
「うわ、マジか…でもさ、名門エリーザの選手がこんなとこ来ちゃダメだよ。」
「いやー、今週はオフだったから久しぶりにショッピングとかしてたら
あなたを駅で見掛けちゃってついて来ちゃいました。」
「あらら…まあ、初回はお試し価格だから安いけど、1杯飲んだから帰んなよ。
俺が言うのもなんだけど、金かかるしさ。」
「は、はい。じゃあ1杯だけ…」
なんやかんやで女子サッカー選手の接客が始まった・・・




