第3章 第四十二話:帰り支度
朝食を食べ終わった三人。
さとしは食べ終わった食器の片づけをし、美波と美鈴は忘れ物がないかなどの最終チェックを行っていた。
さとしが美鈴に食器を洗いながら声をかけた。
「今日の帰りの新幹線は東京を何時出発ですか?」
「13時30分の『のぞみ』に乗る予定ですよ」
「ならこちらを11時ぐらいに出て、東京駅でお昼ご飯を食べませんか?」
さとしが美鈴に尋ねた。
「東京に先に着いてしまっているなら、安心してお昼ご飯が食べられますね。是非それでお願いしますね」
「わかりました。忘れ物がないように気を付けてくださいね」
ここで美波も会話に参加してきた。
「それにしても今回もあっという間に帰る日になっちゃった感じがします」
その美波の言葉にさとしがどこか寂しそうな顔をした。
「ホントにそうだね。二人と過ごす時間は楽しいから余計にそう感じるんだろうな。これで二人が帰ってしまうと家の中が寂しくなってしまいそうだよ……」
「さとしさんって結構寂しがり屋ですよね。そんなに寂しいなら私がここに残ってあげましょうか?」
美波は冗談半分にさとしに言うのであった。
「もしそれが可能ならそうしてほしいぐらいだよ。でも学校があるからちゃんと帰らないとね」
「はーい。あ、でもそんなに寂しがらなくても平気だよ。ちょっと先になるけど私たち近くに来ることになると思うから!」
それを聞いたさとしが目を見開いて驚いた顔をした。
「え、それはどういうこと?」
「ホントは来年まで内緒にしようかと思ったんだけど、私さとしさんの母校を受けようと思って」
「大宮の?」
「はい、そうですよ。試験も来年の2月みたいですし。もし受かったらさとしさんの弟子であり後輩でもあるってことになりますね」
美波は嬉しそうに、華やいだ笑顔を見せるのであった。
さとしはその笑顔に見とれてしまうのであった。
ここで美鈴も会話に加わった。
「ちなみに美波がこっちに来ることになったら私も一緒に引っ越してきますから、その時は仲良くしてくださいね」
そう言ってさとしに微笑みかけた。
「ええ、その時は喜んで!」
さとしは改めて美波を見ると、
「ちなみに学科はどっちを受けるんだい?」
「さとしさんと同じ『柔道整復科』ですよ。だから通うようになったら色々教えて下さいね」
「そうなると、俺は美波の御朱印集め仲間で、師匠で、先輩で、家庭教師の属性までついちゃうな」
そう言ってさとしは楽しそうに笑っていた。
そんなさとしを横目で見ながら、美波は誰にも聞こえないような小声でつぶやいた。
「そこに『お嫁さん』も加えてもらうんだからね……」
「ん?美波、何か言ったかい?」
「なんでもないですよーだ!私たちが戻ってくるまで浮気しちゃだめだからね!」
「浮気って……。そもそもこんなおじさんに言い寄ってくる女性なんてそうそう現れないから安心しなよ」
そう言って楽しそうに笑うさとしであった。
ーーー
さとしの片づけと美波たちの帰りの準備が終わった三人。
「ひと段落着いたし、お茶でも飲みませんか?」
美鈴が代表して答えた。
「いただきますわ。美波も飲むでしょ?」
美波は「うん」と頷いた。
さとしが紅茶を入れて二人の前に置いた。
お茶請けにはこれまで出してきたお菓子の残りをテーブルの上に並べた。
「帰る前に埼玉のお菓子を堪能していってくださいね」
「ありがとう、さとしさん」
美波は一番に『五家宝』に手を伸ばした。
「美波は俺と同じで五家宝がお気に入りみたいだね。噛んだ時の感触と味が最高にいいんだよね」
そう言いながらさとしも一つ手に取るのであった。
「ちなみに美鈴さんはどれがお気に入りですか?」
「私はこの彩果の宝石が一番好きかしら。帰りの新幹線でも食べちゃいそうだわ」
「それなら残りを袋に入れるんで持って行ってくださいよ。その方がお菓子も喜びますから」
こうして帰りのおやつをゲットした美鈴であった。
時計の針は間もなく10時になろうとしていた。
第3章第42話をお読みいただきありがとうございます。
今回は美波の言っていたいい方法が明らかになりました。
そう、正解は『埼玉への移住』でした。
次の話辺りがこの章の最終話になると思います(もしかしたら一話ぐらい伸びるかも……)ので、最後までお付き合いください。
次回投稿予定日:9月19日(土)




