第3章 第三十一話:川口神社、夫婦神に見守られながら……
西川口駅まで戻ってきた三人は、京浜東北線でお隣の川口駅へとやって来ていた。
「今度はここから徒歩で約10分ほど行った先にある『川口神社』へ行きましょう」
さとしはそう言うと、二人をエスコートするように神社へ向かってゆっくりと歩き出したのであった。
川口神社へは、川口駅の東口を出て、ペデストリアンデッキ(歩行者用デッキ)をまっすぐ進んで行く。その後、正面にある川口市立中央図書館などが入る「キュポ・ラ」の左脇にあるエスカレーターを下りて地上へ向かった。降りた先にある大きな通り(本町大通り)に沿って、しばらく真っ直ぐ進んで行くと、「本町ロータリー」の交差点にぶつかり、そのまま直進して渡って行った。ロータリーを過ぎて少し進むと、右手に「川口神社」の大きな鳥居が見えてきたのであった。
「『川口神社』に到着しましたよ。ちなみにこの神社の創建は西暦940年前後と言われていて、1000年以上の歴史があるそうですよ」
「この神社もそんな古くからここにあるのね。きっとたくさんの人たちがお参りしてきたんでしょうね」
美鈴が感慨深そうにつぶやいた。
「もともとは『氷川社』とか『氷川大明神』なんて呼ばれて、川口町の鎮守として地域住民や歴代の領主から深く信仰されてきたそうです。明治時代に近隣の天神社や稲荷社、金山社を合祀し、今の『川口神社』へ改称されたらしいですよ」
「ちなみにこの神社の御祭神はどなたなんですか?」
美波が神社通のようなことを聞いてきた。
「おお、美波も段々神社巡りの楽しみ方がわかってきたようで嬉しいよ!ちなみにこの神社の御祭神は『素戔嗚尊』や『櫛稲田姫命』、『菅原道真公』などの5柱の神様が祀られているんだよ」
「ということはもしかしてここも『良縁祈願』の神社なんですか?」
目を輝かせながら尋ねる美波であった。
「美波は本当によく神社のことがわかってきたみたいだね。まさにその通りだよ」
美鈴も美波に負けていられないと、今までの神社巡りで覚えた知識を語りだした。
「菅原道真公がいるということは『学業成就』や『商業の発展』なんかにもご利益があるんじゃないですか?」
「美鈴さんもさすがです!こうして二人が神社に興味を持ってくれるのは本当に嬉しいですよ。これからもずっと、一緒に(御朱印集め)しましょうね!」
さとしのその言葉にドキッとする二人。
((『これからもずっと一緒』ってそれってもしかしてプロポーズ?))
顔を赤くする二人を見てさとしが心配する。
「二人とも顔が赤いですけど、結構歩かせたから疲れちゃいましたか?」
そのさとしの反応を見た二人は、(これは絶対にプロポーズではないわね……)と考え、深いため息をついた。
そんな二人を見たさとしは焦りながら二人に話しかけた。
「俺、またなんかやらかしちゃいましたか?」
「本当にさとしさんは乙女心をすぐ弄ぶんだから……。将来、ちゃんと責任は取ってもらいますからね!」
「美波の言う通りね。これはちゃんと責任取って私たちのことを幸せにしてもらわないといけないわね」
「ええー……。二人を幸せにすることに力を貸せるのはとても嬉しいですけど、それってもしかして……」
いくら鈍感なさとしでもさすがに徐々に二人の気持ちに気が付き始めていた。
(でもこんな美人親子が本当に俺のことを?だって俺は単なる普通のアラフォーおじさんだぞ!そんなことがあり得るのか?下手なこと言って、もし違ったらめっちゃ恥ずかしいぞ……)
ここで美波が問いただす。
「『もしかして』の後は何ですか?」
一瞬言葉に詰まるさとし。
「な、何でもないです……」
さらに今度は美鈴が追い打ちをかける。
「さとしさんが私達を幸せにしてくれるんですよね?」
その美鈴の圧力に首を大きく縦に振るさとしであった。
「どうしたら二人を幸せにできるかはわからないですが、私でよかったら全力で二人を幸せにしてみせます!」
そのさとしの言葉を聞いて心底嬉しそうな顔をする二人。
「言質は取りましたからね!さとしさん、これから末永く宜しくお願いしますね!」
そう言って美波はさとしの腕に抱き着いた。
「美波だけでなく、私のこともちゃんと幸せにしてくれないと嫌ですからね」
そう言って美波とは反対側の腕に自分の腕を絡めていく美鈴であった。
「ははは……。お手柔らかにお願いします……」
さとしは嬉しいような困ったような顔をしていた。
「そ、それよりもまずは御朱印をもらいに行かないと……」
そう言ってこの場から逃げようとするさとしの腕を、しっかりと美波と美鈴が両サイドから捕まえていたのであった。
「ええ、せっかくですし、ちゃんともらいに行きましょう。た・だ・し、このままでね!」
「さすがお母さん、わかってるー!ということでこのまま行きましょうね、さ・と・し・さん」
さとしは小さな声で「はい」と言って、二人に連行されたまま御朱印を頂いたのであった。
二人から逃げられないと悟ったさとしはふと、『素戔嗚尊と櫛稲田姫命の夫婦の神様は今の三人の関係をどのように見てるのだろう?』と、夫婦神に思いを馳せるのであった。
第3章第31話をお読みいただきありがとうございます。
今回は川口神社での一幕を書かせていただきました。
とうとう鈍感なさとしも少しずつ二人の想いに感づき始めてきましたね。
さとし自身、自分にそこまで自信を持てないせいで、確信までは至っていないようですが。
今後、三人の関係がどのように進展していくのか、『素戔嗚尊と櫛稲田姫命』の夫婦神と共に温かい目で見守ってあげてください。
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