第3章 第二十五話:ゼリーフライ
美波達が埼玉のさとしの家に来て4日目の朝。今日も天気は快晴であった。
美波と美鈴が朝の準備を済ませて食堂へ行くと、さとしが朝食の準備をしていた。
「さとしさん、おはようございます」
「おはよう、美波。それと美鈴さんもおはようございます」
「さとしさん、おはようございます。何か手伝うことありますか?」
「料理の方はもうほとんど終わってるので大丈夫ですよ。よかったら飲み物だけ出してもらってもいいですか?」
「わかりました。昨日と同じものでいいかしら?」
そう言うと美鈴と美波が飲み物とグラスの準備をする。
さとしはてきぱきと行動する二人を見ていた。
「二人とも、もうこの家の住人みたいですね」
さとしはそう言って笑うのであった。
「あら、それは私たちのどちらかをお嫁さんにしてくれるってことかしら?」
そう言って美鈴はからかうように微笑むのであった。
「お母さん、もしかしたらさとしさんは欲張りだから両方ともお嫁さんにするつもりかもしれないよ」
美波はジト目でさとしを見るのであった。
「いったい美波は僕を何だと思っているんだい……。もちろん二人とも魅力的な女性だとは思うけどね」
そう言って、お返しとばかりに二人にウィンクするさとしであった。
ーーー
食卓の上にはそれぞれの前にスクランブルエッグとベーコンにサラダが乗ったお皿が置かれ、それとは別に中央に温められたトーストと『何かのフライ』、千切りキャベツそしてソースが置かれていた。
「今日は二人のために埼玉県名物のフライを用意しました。その名も埼玉県行田市名物『ゼリーフライ』です。これにたっぷりとソースを絡めてからキャベツと一緒にパンにはさんで食べてください」
さとしの説明を聞いてもすぐに動き出せない二人。
美波が恐る恐る質問をした。
「さとしさん、『ゼリーフライ』ってことはやっぱり……ゼリーのフライなんですか?」
「名前を聞いちゃうとそう思っちゃうよね。でもゼリーのフライではないんだよ。これは茹でてつぶしたじゃがいもに、たっぷりの生おから、みじん切りのにんじんやネギを混ぜ合わせて、そのまま衣をつけないで素揚げしたものなんだよ」
その説明を聞いてほっとする二人であった。
ここで美波は当然の疑問をさとしにぶつけた。
「でもそれならなんで『ゼリーフライ』なんて名前を付けたんですか?」
「一説には、形が小判に似ていたことから「銭フライ」と呼ばれ、それがだんだんなまって「ゼリーフライ」になったと言われているね。普通におからコロッケとでも名付けてくれれば紛らわしくなかったのにね」
さとしはそう言って苦笑いをするのであった。
「せっかく温めたんですから温かいうちに食べちゃいましょうか」
そう言って二人にお手本を見せるかのように作っていく。
①温めた食パンにバターを塗る
②キャベツの千切りと、ソースを絡めたゼリーフライ(温め直したもの)を挟む
たった二つの行程で出来上がりである。
二人もさとしに倣って作っていった。
そうして、出来上がったゼリーフライのサンドを勢いよくほおばる美波。
「『ゼリーフライ』の外はパリッとしてるのに、中がもちもちとした独特の食感で癖になりそうです」
美波の隣でゼリーフライサンドを食べている美鈴も続いた。
「もちもちのゼリーフライとパンの相性も抜群ね。それに衣が付いていないからコロッケなんかよりも軽くてヘルシーだからいくらでも食べられそうだわ!」
(またこのパターンなんだね)
さとしは苦笑いしながら心の中でつぶやくと、二人に尋ねる。
「『ゼリーフライサンド』もっと食べますか?」
そしてさとしの質問に二人仲良く声を合わせて答えるのであった。
「「食べます!」」
こうして心行くまで『ゼリーフライサンド』を堪能した美波と美鈴であった。
第3章第25話をお読みいただきありがとうございます。
今回は埼玉県行田市の名物『ゼリーフライ』について書かせていただきました。
私も初めて名前を聞いた時には「ゼリーのフライなの?」と美波と同じ疑問を持ったものです。
皆様の周りにも似たような食べ物があったら是非教えてくださいね。
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