第六話:内海家ご訪問&突撃晩御飯【加筆&修正】(26年6月17日)
少し日が傾いてきていた。時刻は午後5時過ぎを示していた。
三原港に着いた二人は三原駅に向かって歩いていた。
美波の家は港からだとちょうど駅に反対側に位置し、駅から歩いて約10分程度の距離であるとの事であった。
「美波は足の具合はどうだ?痛くなってないか?」
美波の足を気に掛けるさとし。
「全然大丈夫ですよ。なんならここから駅まで走ってみせましょうか?」
元気いっぱいな美波であった。
「一応今日寝る前にもう一度施術しておこう。そのほうが治りも早いだろうしね」
「はい、よろしくお願いします」
美波の案内で駅を通り抜け、さらに10分ほど歩くと住宅街の中に内海家の家を発見した。
「ここが我が家ですよ!さあ、一緒に入りましょ」
そういうと美波は、さとしの手を引いて玄関の鍵を開け中に入っていった。
「お母さん、ただいま」
大きな声で母親に帰宅を知らせる美波。
すると奥の方からどたどたと音をさせながら美波の母親が小走りでやってきた。
現れた女性は30代半ばぐらいにしか見えない、きれいと可愛いが同居したようなとても魅力的な女性であった。
「美波、お帰り。あとようこそおいでくださいました、さとしさん」
「はじめまして?でいいのかな……。10年前にも一度お会いしていますが。折口さとしです。今日はお世話になります」
「さとしさん、なんか私とお母さんに対する態度が違いませんか?」
ジト目でさとしを見る美波。
「そ、そんなことはないよ。気にしすぎさ」
冷や汗をかくさとし。
「ほらほら、そんなところで話してないで中に入ってもらいなさい。さとしさんを客間に案内してあげて」
「はーい。行こ!さとしさん」
美波はさとしの手を引いて一階にある客間へと案内した。案内された客間は和室で、すでに布団が引かれていた。
「さとしさん、夜寝る時私が一緒に添い寝してあげようか?」
からかう美波にたいしてさとしが答えた。
「そんな悪い子にはレモンケーキは上げられないな」
美波が即座に反応し、土下座のポーズをとる。
「すいませんでした。どうか何卒レモンケーキの件、よしなに」
美波はすぐに表情を元に戻すと、さとしに温泉旅館であるような浴衣を差し出した。
「お母さんが良かったらこれを使ってもらってって」
「ありがとう。助かるよ」
お礼を言って素直に使わせてもらうことにする。
美波は浴衣を渡した後もニコニコした顔でさとしを見ていた。
「そろそろ着替えようかと思うんだけど……」
「私のことは気にせずお着換えください」
「いや、でていってほしいんだが、というかさっさと出ていきなさい」
そう言って部屋の外に美波を押し出した。
「さとしさんのいけずー!」
非難をする美波を外へ出し、入り口を閉めると浴衣に着替えた。
着替え終わったさとしはスマホとお土産のレモンケーキをもって美波の母親の下へ向うことにした。
入り口のドアを開けるとそこには美波が待っており、一緒に向かうことになったのだった。
「さとしさん、浴衣も似合ってるね」
「それならよかったよ」
美波の母親は台所で料理の仕上げをしていた。
「お母さん、さとしさん連れてきたよ」
「浴衣や布団の準備までしていただいてありがとうございます」
お礼を言うさとしに対し、美波の母親は、
「こちらこそ10年前と今回の2回も娘を助けていただいてありがとうございました。大したおもてなしはできないけれど自宅にいるようなつもりで楽にしてくださいね。」
「ありがとうございます。後、これ瀬戸田で買ってきたレモンケーキなんですけど良かったらどうぞ」
レモンケーキの箱を見たとたん美波の母親は満面の笑みになり、目だけはライオンの目に変化した。
「こんな大きい箱のレモンケーキもらっていいんですか?後で返せとか言わないですよね?」
(なぜか既視感が……)
「いいませんから安心してください。ですから安心して食べてくださいね」
美波の母親はうっとりとした顔でレモンケーキの箱を撫でていた。
そして娘の美波もそれに倣い、同じような表情で箱を眺めていた。
(この母親にしてこの娘ありだな)
苦笑いしながら二人を眺めるさとしであった。
ーーー
夕飯の準備が終わり、食卓には豪華な料理が並んでいた。
特に目を引いたのは「たこ飯」と「タコの天ぷら」で、まさにさとしが食べようと思っていた三原の郷土料理であった。以前瀬戸田のお店で食べたことがあるが、三原のタコは歯ごたえがあり、とてもおいしかったのを思いださせた。ちなみに三原のタコへの思い入れは強く、 「三原たこ消太郎(消防署)」「タコじい(商工会議所)」「 三原多幸だるま(ご当地マスコット)」など、街中の至る所でタコを見かけるほどだ。
美波に母親が「それじゃ食べましょうか」と言った。
「「「いただきます」」」
「さとしさんは飲み物はビールでよかったかしら?」
「はい、ビールを頂きますね」
そう言うと美波の母親はさとしのコップにビールを注いだ。
「美波さんのお母さんも飲まれますか?」
不満そうな顔をした美波の母親は、
「美波のお母さんて言い方はあれだから、よかったら美鈴って呼んでほしいかな」
とかわいらしくお願いした。
その美鈴の反応にさとしは顔を少し赤らめた。
「じゃあ、これからは美鈴さんって呼びますね」
その二人のやり取りを見ていた美波が抗議をする。
「なに二人でいい雰囲気になってるのよ!さとしさんは私のさとしさんなんだからね!」
「美波、独り占めはずるいわよ!私にもちゃんと分けてくれないと」
(そもそも俺はどちらの物でもないんですけど……)
ーーー
食事もあらかた終わり、食後にレモンケーキを紅茶で食べようということになった。
みしまやのレモンケーキは昔ながらのレモン型スポンジに、レモン風味の黄色いチョコレートがしっかりとかかっており、 卵を活かしたスポンジ生地はきめが非常に細かく、口の中でふわっと優しくほどけるモダンな食感であった。
「「しあわせー」」内海親子が同じ感想を述べた。
「レモンケーキは久しぶりに食べましたけど、おいしいですね」
さとしは素直な感想を述べた。
「「でしょ!」」またもハモル二人。
(やっぱりこの親子は似た者同士だ)
この後の会話で明日の日程に大きな影響が出ることにまださとしは気が付いていなかった。
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次の投稿時期は基本的に未定です。この作品はメインの「幼馴染の境界線」の投稿の合間に作成していきますので、ランダムな投稿になると思います。




