第2章 第二十二話:鴨川の納涼床
体調がだいぶ復活してきましたので、今日から再度投稿をさせて頂きます。今回は4日ぶりですので少しだけ長めになっています。
二条城を後にした三人はホテルまで戻って来ていた。
軽くシャワーを浴びて汗を流し、クーラーで体の熱を冷ましていた。
ここでさとしが夕飯について提案をする。
「せっかくの京都の四条の近くに泊まっているんですから、夕飯は『鴨川の納涼床』でとるのはどうでしょうか?」
「納涼どこ?お昼に食べた川の上の席みたいな感じですか?」
美波の問いかけに、さとしは笑顔で頷く。
「美波のその考えでほぼ正解かな。納涼床っていうのは鴨川沿いの飲食店が川の上にせり出したテラス席のことだよ。京都の夏の風物詩だね」
「昨日の夜、八坂神社に行くときに橋の上から見た幻想的な光景の事ね」
美鈴が思い出したように言葉を添えると、さとしは楽しげに返した。
「そうですよ、美鈴さん。昨日はその幻想的な光景を見る方でしたが今度はその光景の一部になるなんて言うのはどうですか?」
「ぜひ行ってみたいわ」
「私もいきたい!」
二人は声を揃えて賛同した。
「ちなみにお昼は和食でしたし、夜はイタリアンなんてどうですか?」
「「イタリアン!」」
二人とも目を輝かせて大きく頷くのであった。
ーーー
「それでは1時間後の夕方6時半に行きますのでテラス席でお願いします」
さとしが夕方6時半にイタリアンのお店に予約を電話で取っていた。
「6時半に予約が取れたのでそれまではゆっくり身支度しましょうか」
「「はい!」」
二人は元気よく返事を返した。
すると美鈴が、キャリーバッグからある物を取り出して提案した。
「実は今回こんなものを持ってきたんですよ」
美鈴が差し出したのは、落ち着いた雰囲気の男性用浴衣だった。
「この浴衣私も一緒に選んだんだよ!絶対にさとしさんに似合うから、三人で浴衣を着て行こうよ!」
美波が楽しそうにさとしの顔を見上げた。
さとしは目を丸くしていた。
「自分の分まで用意してくれたんですか?それならぜひ三人仲良く浴衣でいきましょう!まさに京都の町にぴったりの衣装ですしね」
「やったー!」
美波と美鈴が手を取り合って喜んでいた。
その光景は親子というよりも仲の良い姉妹と言った感じであった。
ーーー
三人は浴衣に着替え終わった状態で出発の時間を待っていた。
ちなみに美波は、白地をベースに、深い青や紺色で描かれた大輪の牡丹の花が映える、涼やかで気品のある浴衣で、帯には深いネイビーのシックな色合いの帯を使用し、全体の雰囲気を引き締めていた。
それに対して、美鈴は、少し深みのある美しい水色を基調にした浴衣にすっきりと伸びる白い百合の花と、可憐に寄り添う薄紫の小花がちりばめられている。帯は渋めの紫で大人っぽくまとめていた。
着替え終わった二人がさとしの前に立った。美波は楽しそうに、美鈴は堂々と。
「私たちの浴衣姿はおかしくないですか?」
「二人とも、凄く似合っていて素敵ですよ!二人は周りの目を引きそうで、私が一緒に歩くのが申し訳なく感じちゃいそうですよ……」
「私たちは周りの人に見せるためじゃなくて、さとしさんに喜んでほしくて着てるんだからそんなこと気にしなくていいんですよ!それにさとしさんだってすごくよく似合ってて素敵です!」
美波がさとしを見つめながら伝えた。
「ありがとう、美波」
さとしが微笑み返すと美波は顔を赤くしながら目をそらした。
「わかってくれればいいんです。さとしさんは私の一番の……な人なんですから」
「最後の方がよく聞こえなかったんだけど?」
顔を真っ赤にする美波。
「そんな細かいこと気にしなくていいです!それより、こうやって行けば気後れしないで済むでしょ!」
美波はさとしの腕に抱き着いた。
「なら私はこっちの腕ね」
そう言って左腕に腕を絡める美鈴であった。
ーーー
三人は鴨川沿いのお店へと三人仲良く腕を組んで歩いていた。
人通りも多くにぎやかな通りを歩いていく三には周りの人の目を引いていた。
三人はお店に到着すると、予約してあることを伝え、テラス席へと案内してもらった。
「このお店の外観は昔ながらの京都の家って感じなのに、中は完全に洋風な雰囲気なんですね」
美波が素直な感想を述べた。
「このお店は築100年の京町家の店内をおしゃれにリノベーションしたみたいだよ」
「私はこの感じ結構好きですよ」
美鈴が店内を見渡しながら感想を述べた。
「料理はどうしようか?ちなみにこのお店はフランスやイタリアの本格的な郷土料理とワインが楽しめるお店で、特に看板料理は、低温の油でじっくり煮てから炭火で焼き上げる『コンフィ』が人気みたいだよ」
「ならそれと、『京湯葉と彩大根のサラダ』なんてどうかしら」
「なら私は『スパゲッティーニ 宮津産鹿肉と根菜のボロネーゼ』が食べたいかも」
それぞれが次々に自分たちの食べたいものを注文していき気が付いたらテーブルの上は料理でいっぱいになっていた。その料理を白ワインを飲みながら食べる大人二人にオリジナルのミックスジュースを飲みながら美波も舌鼓をついていた。
「このジュース桃とオレンジとグレープフルーツが入ってるんですけどとてもおいしいですよ。よかったら一口飲んでみてくださいよ!」
そう言ってさとしの前にストローを指したままのミックスジュースを差し出す美波。
さとしは差し出されたジュースを美波の使ったストローを使って一口飲んで感想を述べた。
「このジュースは飲みやすくていいね」
美波は自分の元に戻されてジュースのストローを見つめ顔を赤くしていた。
「あらそんなにおいしいなら私にも一口くれるかしら?」
その言葉を聞いた美波は急いでジュースを両手で確保すると、耳まで赤くしながらストローを口に含んだのであった。
「そんなに飲みたいなら別に頼んだらいいでしょ!これは私のだからダメ!」
美波は顔を赤くしたまま美鈴をけん制した。
「美波、顔が赤いけどこれってジュースだよな?熱中症とかじゃないよな?」
さとしが心配そうに美波の顔を覗きこんでから、すぅっと自分のおでこを美波のおでこにあてたのであった。
「特に熱くはなさそうだし大丈夫かな……。でも、もし何かあったら遠慮しないで言うんだよ」
美波はさとしのその行動に遠のきそうになる意識を何とかこらえつつ、顔を赤くしたまま大きく頷いていた。
その光景をワイン片手に見ていた美鈴が呟いた。
「さとしさんは相変わらず天然の人たらしね。もう美波はメロメロになっちゃってるじゃない……」
美鈴はさとしを目を細めながら見つめていた。
そんな三人の食卓とは裏腹に、鴨川のせせらぎが聞こえていた。
第2章第二十二話をお読みいただきありがとうございます。
今回は二日目の夕食会でしたが、1日目が居酒屋さんでしたので、二日目はイタリアンのお店にしてみました。
今回のお店もモデルとなっているお店があるのですが、よかったら探してみるのも面白いかと……。
ただ私自身が行ったことはないので、もし行かれるようであれば、事前によく調べてから行かれることを推奨します。
今回も、さとしの天然ぶりと美波のチョロインぶりを遺憾なく発揮してくれています。そしてそれを目を細めて見つめる美鈴。今後の三人の展開はどうなるのか……。実際まだ結末とかは全然決めていないのでわかりませんが、最後までお付き合いいただけると嬉しいです。
体調もだいぶ良くなってきましたので、明日からできる範囲で午前中に一話投稿させていただきますので、よろしくお願いします。




