第2章 第十一話:幻想的な世界の中心で愛を叫ぶ、報われないけど……
居酒屋での夕飯を堪能した三人は、昼間とはまた違う、ネオンの光によるきらびやかな四条通を歩いていた。
そんな中、さとしが二人の方を向いた。
「そういえば八坂神社は夜でも入れるらしくって、ライトアップもされているみたいですよ。行ってみませんか?もし疲れてるなら無理強いはしませんから、遠慮しないで言ってくださいね」
そのさとしの言葉に二人の目の色が変わった。
「お母さんはお酒も飲んだしもうホテルに先に帰って寝た方がいいんじゃないかな?」
「それなら美波こそ歩き疲れたんじゃない?先に戻っておいていいのよ。神社には私とさとしさんだけでいってくるから」
「私は若いから平気だし、お母さんこそもういい年なんだから無理すると明日にさわるかもよ」
「あら私はあなたと違ってちゃんと毎日家の事やお散歩して足腰鍛えてるから平気よ。あなたこそ最近は部活もやってなくて足腰が弱ってるんじゃない?」
二人の間で激しい火花が散っていた。そんな中さとしだけはマイペースであった。
「それだけ元気なら二人とも大丈夫そうですね。なら行きましょうか」
そんなさとしに毒気を向かれた二人は一時休戦をする密約を交わすのであった。
八坂神社へ向かう途中で、四条大橋にやってきた三人は、橋の上から鴨川を見渡した。
「鴨川も昼間見たときとはまた違った趣があっていいですね」
そのさとしの言葉に呼応する美波。
「とくに川沿いの建物の明かりが川面に映っているのがすごい幻想的で、私も好きです」
「ホントにきれいね。私も好きですよ、さとしさん」
さとしに色っぽい視線を送る美鈴。
「ちょっとお母さん、休戦の約束したのにどさくさに紛れてさとしさんを口説かないでよ!」
小声で美鈴に抗議する美波であった。
「あら、私はこの景色が好きと言っただけよ」
美波の抗議を微笑みながら受け流した。
ーーー
八坂神社の階段の手前まで来た三人。
三人を最初に出迎えたのは鮮烈な朱色に輝く「西楼門」であった。
下から美しくライトアップされた西楼門は、鮮やかな朱色が夜空にパッと浮かび上がっているようであった。
この光景に瞬間的に言葉を失う三人であった。
その後境内に入った一行は、境内の中央にある舞台(舞殿)に、京都の祇園の老舗やお店の名前が書かれた数百個もの提灯が飾られているのを目にした。これら全てに明かりが灯っており、まるで光のシャワーを浴びているような、息をのむほど華やかで温かい景色が広がっているのを感じた。
「昼間来た時とは全くの別世界ですね……」
「ほんとね。昼間の厳かな感じも良かったけど、この幻想的な感じもすてきね」
美波と美鈴はその幻想的な光景にうっとりとした表情を浮かべていた。
「二人とも気に入ってくれたみたいでよかったよ。これなら連れてきたかいがあるってもんですね」
さとしの言葉に、美波と美鈴は同時に彼を見上げ、満面の笑みを浮かべた。
その瞳には、ライトアップの光以上に輝くような、さとしへの親愛と独占欲が宿っている。
「……来てよかったです。大切な人が一緒にいてくれるから、余計に素敵に見えるのかもしれないですね」
美波が少し頬を赤らめながら呟くとさとしの手を握った。
美鈴も負けじと、さとしの腕にそっと自分の腕を絡めた。
「ええ。こんな素敵な夜の景色を、大切な人たちと共有できるなんて……本当に贅沢な時間ね」
そんな二人の言葉を聞いてさとしが相変わらずの朴念仁を発揮する。
(二人ともお互いのことをそんなに大切に思っているんだね。やっぱり仲良し親子だな)
「さとしさん、もしかして私たち親子が仲良しだなーとか思ってないですかね?」
「よく分かったね。親子でお互いに大切なんて言える関係はとてもすてきだと思うよ」
ため息をつく二人であった。
「とりあえずそういうことで今はいいです。でもいつかは……」
「そうね。今は無理に関係を変えなくてもいいわね」
(なんかようくわからないが二人とも納得してくれたみたいだし大丈夫そうだな)
「それではそろそろ戻りましょうか」
三人は幻想的な境内の中を抜けて、ホテルへと帰っていくのであった。
そこで、初めて迎える3人で過ごすホテルでの夜に「何かあるのではないか」と胸を高鳴らせる親子がいたことは、二人の心の中だけの秘密である。
第2章第11話をお読みいただきありがとうございます。
今回はライトアップされて八坂神社での一幕を描かせていただきました。
実際に私はライトアップされた八坂神社に入ったことがないので、調べた資料と想像で書いてます。
おかしなところとかあったら教えて頂けると嬉しいです。
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明日も朝7時半に投稿する予定ですのでよろしくお願いします。




