第2章 第十話:京都の夜、居酒屋料理と深まる三人の絆
熊野神社から京都駅に戻った三人は、コインロッカーから荷物を取り出すと、タクシーで今日泊るホテルへと向かった。
今日泊るホテルはダイワロイネットホテル京都四条烏丸店である。
タクシーがホテルに近づくとそのきれいなホテルの姿が見えてきた。
ホテルの前に泊まったタクシーを降り、受付を済ませるさとし。
部屋であるが最初さとしはシングルとツインを一部屋ずつ取ろうといたが、美波と美鈴からの強い要望で、三人が一緒に泊まれる部屋が良いとの事であった。
そこでこのホテルにあったフォースの部屋を選択した。
この部屋は幅110センチのベッドを4台置いてあり、トイレとバスがセパレートされている。
「それでは部屋へ行きましょうか」
さとしは二人に声をかけた。
三人が部屋に入ると、ベッドが4つ並んでおかれていた。
ベッドは入り口に一番近いのがさとし、そして、窓際から美鈴と美波ということになり、さとしと二人の間にある1台のベッドは別の用途に使うことにした。
「それじゃまずは美鈴さんから施術していきますので最初にシャワー浴びてきちゃってくださいね」
間のベッドはさとしが施術をするのに使うことにしたのだった。
美鈴が出てくると部屋に備え付けられていたナイトウェアを着て出てきた。
シャワーを浴びて出てきた美鈴は、ほほが少しほてっており、大人の女性としての魅力を十二分に引き出していた。
そんな美鈴に一瞬だけ見とれるさとしであったが、「ウォホン」という美波のわざとらしい咳で現実に引き戻された。
「それではここのベッドにうつ伏せに寝てください」
言う通りに素直に従う美鈴であった。
「さとしさん、よろしくお願いしますね」
「はい。もし痛かったりしたら遠慮せずに行ってくださいね」
さとしは全体を優しくなでるように美鈴の身体がマッサージを受ける準備を整えてから、マッサージを始めていった。緩急をつけたそのマッサージは大変気持ちよく、いつの間にか美鈴はウトウトと半分眠りそうになっていた。
約30分ほど施術を受けていると美波がバスルームからナイトウェアに着替えて出てきた。
「お母さん気持ちよさそう……」
「相当疲れてたんじゃないかな。もう少しだけ待っててもらえるかな」
そういうとマッサージを続けていく。
「さとしさんのそれやってもらうとすごく気持ちよくて、眠くなってきちゃうんだよね」
「なら後でやってあげる時にゆっくり眠りながら受けるといいよ」
そして10分ほどたったところで、最後の仕上げとばかりに体をさすって終わりにした。
「美鈴さん寝ちゃってるし、美波ちゃんは俺のベッドでやるかい?」
「いいんですか?」
「もちろん構わないよ。ならここにうつ伏せになってね」
そう言って美波のマッサージが始まったのであった。
ーーー
約1時間後。二人のマッサージを終えたさとしがシャワーを浴びてバスルームから出てきた。
「美鈴さんも起きたんですね」
美鈴が申し訳なさそうな顔をしていた。
「せっかくやってもらったのに途中で寝ちゃってごめんなさいね」
「マッサージを受けて寝るなんてごく普通のことですから気にしないで構いませんよ。それより身体の調子はどうですか?」
元気に立ち上がって力こぶを作る真似をする美鈴であった。
「この通り元気いっぱいよ!」
「私も完全復活です!」
「二人とも元気になってくれたみたいでよかったよ。それならそろそろ準備して夕飯を食べに行こうか」
外出できるように外出用の洋服に着替える三人であった。
ーーー
洋服に着替え終えた三人は、ホテルの部屋を出て四条烏丸の夜の街へと繰り出した。
「今日の夕飯はどこにしましょうか?」
美鈴さとしの方お向いて尋ねた。
「私はいつもで先では居酒屋さんに入ることにしてるんでっすよ。居酒屋さんなら気楽には入れますし、結構地元の食材とかもあったりしますからね」
「居酒屋さんなら私いってみたいです!……さとしさんに私の初体験を導いてほしいです」
そう言ってさとしの顔を見上げる美波であった。
「初体験って……。僕でよければエスコートさせてもらうよ」
そう言って笑うさとしであった。
「美鈴さんもそれでいいですか?」
「ええ、居酒屋さんなら地元の料理とかも食べられるでしょうしいいんじゃないかしら」
ーーー
三人が入ったのは以前さとしが一度着たことのある地元の居酒屋さんで、とても落ち着いた感じのお店であった。
お客さんはそれなりに入っていたが騒がしさもあまり感じない。
「このお店は雰囲気がいいですよね。ここなら味もおいしいですし、落ち着いて食事を楽しめると思いますよ」
「そうね。まずは何を飲もうかしら。さとしさんは何にしますか?」
美鈴に聞かれたさとしはメニューを見ながら答えた。
「私はとりあえず生で」
「なら私も一緒の物を飲もうかしら」
「二人だけ同じもの飲んでずるい!」
不満を漏らす美波であった。
「お酒はあと2年たってからだね」
美波の頭を撫でながら笑顔で慰めるさとしであった。
「料理に関してはまずは夏の京と言ったらやっぱりハモ料理だよね!」
「なんで海のない京都で海のお魚のハモなんですか?」
首をかしげる美波。
「ハモはね、祇園祭の時期に欠かせない食材で、別名「ハモ祭り」とも呼ばれているんだよ。梅雨の水を飲んで美味しくなると言われているね」
「ハモは鍋もいいんでしょうけど、今日は暑いからハモの天ぷらなんていいんじゃないかしら」
ハモの天ぷらや京だしの厚焼き玉子、九条ネギの厚揚げ、湯葉のお造り、賀茂なす田楽などの京都ならではの料理に、定番の鳥のから揚げやポテトサラダなどを注文した。
運ばれてきた料理の数々に、テーブルの上が一気ににぎやかになる。
「わあ……! これがハモの天ぷらですね。すごく綺麗な白身……」
美波が感嘆の声を上げる。さとしが手慣れた手つきで天つゆに大根おろしを入れ、美波の小皿に天ぷらを一つ取り分けた。
「まずはそのまま、軽く塩を振っても美味しいよ。京野菜の料理も、この店は出汁が効いていて格別なんだ」
さとしの言葉に促され、美波が食いしん坊の本領発揮とばかりに勢いよく口に運ぶ。
衣はサクッと軽く、中のハモはふわふわと溶けるような食感だ。
「……っ、おいしい! 今まで食べたことのない食感です……。これが京都の夏なんですね」
頬を膨らませて感激する美波を見て、美鈴も優しく目を細めた。
彼女は湯葉のお造りに箸を伸ばし、丁寧に醤油をつけて口に運ぶ。
その所作は、「はんなり」や「京女」と言った言葉が似合いそうな洗練されたものであった。
「本当ね。出汁の香りが、歩き疲れた体に染み渡るようだわ。さとしさんが連れてきてくれたおかげね」
美鈴は生ビールを一口含み、満足げにため息をつく。
さとしは賀茂なす田楽を突きながら、心地よい店内の程よい喧騒を楽しんでいた。
「京都は、こうして旬のものをゆっくりと味わうのが一番の贅沢ですよ。……美波、お酒の代わりにこの冷たい出し巻き卵をどうぞ。ここの名物だからね」
「ありがとうございます!」
美波はアルコールが飲めない代わりに料理を存分に味わい尽くす決意を固めていた。さとしに料理を取り分けてもらうたび、瞬く間に平らげていく二人の母娘は、彼が自分たちに向けてくれる細やかな気遣いに、言葉以上の繋がりを感じ取っているようだった。
「もし食べたいものがあったら遠慮しないでどんどん頼んでいいからね。それにしても、地元の食材を、こうして美味しくいただけるのは最高ですね」
さとしが何気なく言うと、美鈴は深く頷いた。
「ええ……。本当に。それになんだか私達本当の家族みたいだと思わない?」
その言葉に、美波も同調するように小さく笑った。「でもお嫁さんの座は渡さないからね」と警告するのは忘れずに。
居酒屋という、旅先の日常が溶け合う空間で、さとしという温かな人間味を中心に囲み、三人の食卓は静かに、しかし濃厚な幸福感で満たされていった。
ハモの天ぷらの香ばしさと、京野菜の繊細な旨み。それらを味わいながら、三人は明日への期待と、今この瞬間の充足感に浸っていた。
京都の夜は静かに更けていくのであった。
第2章第10話をお読みいただきありがとうございます。
京都編の1日目にしてすでに10話目までいってしまいました(-_-;)
京都編が終わった時に全体で何話まであるのかちょっと不安になって来てます……。
でも京都って神社もたくさんあるし、書きたいことは山ほど出てきてしまうんですよね。
ということで何話になったっとしても気にしないことにします。
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投稿する話の作成が間に合った際には、毎朝7時半ごろに投稿する予定です。(土日はもう少し遅い時間に投稿予定)




