第2章 第二話:伏見稲荷大社での苦行(中編)
参拝を終えた三人は境内に設置されている案内図を見ながら千本鳥居の位置を確認し、案内に従って進んで行く。
奥社で参拝し御朱印をもらったのち、一ノ峰まで行き参拝して戻ってこようということになった。
しばらく進むと、美波が大きな鳥居がいくつも連なっている場所を指さしながら言った。
「あれがスタート地点みたいですね」
「なら願い事を思いながら通っていこうか。この千本鳥居は『願い事を通す』といういわれがあるからね」
「そうなんですね」美波はそう答えながら願い事を思い描く。
(さとしさんともっと仲良くなれますように!)
「美鈴さんはどんなお願いをするんですか?」
「それは秘密よ。こういうのはよく話すと叶わないっていうじゃない」
そう言ってほほ笑んだ。その顔をはさとしを見て少しだけ赤くなっているように見えた。
(さとしさんともっと仲良くなれるように!)
くしくも同じお願いをする二人であった。
そんな二人の心の内など知る由もないさとしは、
(これからも三人で、たくさん楽しい御朱印集めの旅ができますように)
とささやかな願いをかけたのであった。
稲荷大神と書かれた大きな鳥居があり、その先にはいくつも鳥居が並んでいるのが見えてきた。
他の観光客の流れに乗って、鳥居の方へと歩いていく3人であった。
鳥居の下に入っていくとその光景は圧巻であった。
なだらかな坂道を歩いていく三人。
どこまでも続くのではないかと思いえてくる。
鳥居の周りは木々に囲まれており、夏でありながら涼しささえ感じられた。
ちなみにこの千本鳥居であるが、鮮やかな朱色の鳥居が隙間なく並び、まるで光のトンネルのようになっている幻想的な参道である。実はこの鳥居であるが千本と言いながら実際には約1万基あるといわれている。これは、江戸時代以降、参拝者が「願い事が通りますように」、または「願い事が通った」というお礼と感謝を込めて鳥居を奉納する習慣が広がったためだと言われている。
奥社にたどり着いた一行はお参りを済ませると御朱印を頂くための列に並ぶ。
三人の中で一番後ろの並んでいたさとしはふと変わった形の御守りが目に入り、それを三つ二人に気づかれないよに購入した。
御朱印をもらった三人は一ノ峰を目指す。
一ノ峰は稲荷山の頂上に位置するため、大半が急な坂道(階段)になっている。
それらを知らないで軽い気持ちでスタートしてしまうと思わぬ大変さに辟易してしまったりする。
しばらく歩いていた三人であるが、最初なだらかなものであった坂道が徐々に角度が険しくなってきていた。
「さとしさん、もう千本ぐらい通ってきったんじゃあないかな?」
美波が疑問を投げかけた。
「美波は知らなかったんだな。実は1万基ぐらいあるらしいぞ」
その数字を聞いて青くなる美鈴と美波であった。
「しかしこんな大変な坂道だとは自分も思ってなかったよ。……正直登り切れるか少し不安になってきた……」
弱音を吐いたさとしに美波がのっかった。
「それなら途中で引き返しますか?」
目を光らせて尋ねる美波にさとしが意地悪な表情をして、無情な宣告をする。
「それでもいいけど、そうなるとお願いはかなわなくなるけどいいのかい?」
その言葉を聞いた二人がハモって答えた。
「「それは駄目!絶対に奥社まで頑張りましょ!」」
真剣な表情になる親子であった。
奥社までの道のりは想像をはるかに超える苦行でるように感じられた。
途中何度か休憩を入れながら進んでいく。
途中に売店もあり、そこでさとしが一本のペットボトルのお茶を購入した。
早速お茶を飲むさとし。
「ゴクゴク……。ぷはー、生きかえるー!」
そんなさとしを見ていた美波にさとしが聞いた。
「美波もこのお茶の飲むかい?」
そう言って飲みかけのお茶を差し出すさとし。
(これは間接キスの大チャンス!早速お願いが叶っちゃうのかも!)
「いただきます!」そう言ってそのお茶を取ろうとした瞬間、そのお茶は美鈴によって奪われてしまう。
「私も喉が渇いてたから助かるわ」
そう言って間接キスのチャンスをものにしてしまう美鈴であった。
(お母さん、やったわね!でも、こんなことで負けてられないわ!)
「美波も飲む?」再度尋ねたさとしに美波が新たな要求をする。
「さとしさん、とりあえず再度さとしさんが飲んでみてください!」
「え、なんでだい?」
不思議がるさとしに対し、美波が言い放つ。
「いいから飲むの!」
美波の勢いに負けて再度口にするさとしであった。
そして、そのさとしが口をつけたペットボトルを、美鈴に奪われないように警戒する美波。
さとしが再度口を離すと、それをトンビが餌をとるがごとく高速で奪い取ったのであった。
その時の美波の目は獰猛なに肉食獣のそれであった。
その鬼気迫る美波を見るさとし。
(美波も美鈴さんもそんなに喉が渇いていたのか……。ちゃんとペース配分や体調なんかを気遣ってあげないとな)
そんなことを考えているさとしを尻目に、内海親子はお互いにライバル心を燃やしていたのであった。
多くの御神木と朱塗りの鳥居に包まれた神域で、二人の間の火花が音を上げずにぶつかり合っていた。
第2章第2話をお読みいただきありがとうございます。
今回は一ノ峰を目指す3人を書かせてもらいまさした。
今年、私も実際に一ノ峰を目指して登ったのですが、日頃運動らしいことをしていなかった私には、かなりキツかったです(-_-;)
ちなみにお願いは……秘密でございます(笑)
ストックがあと明日の分までしかありません。そこで皆様からの応援にて作者の腕を動かせてやってください(笑)。ブックマークや評価★で応援いただけると、きっと嬉しくなって頑張って書けると思いますので。
明日も朝7時半に投稿する予定ですので、よろしくお願いします。




