第2章 第一話:伏見稲荷大社での苦行(前編)
京都タワーを降りてきた三人はいったん京都駅へ向かい、コインロッカーに大きな荷物を預け、身軽な格好になっていた。
今日は三人とも動きやすいようにスニーカーを履いている。
さとしが最初の日程を口にした。
「今日は最初にまずは伏見稲荷大社に向かいましょう」
それを聞いた美波が事前に調べてきたことを自慢げにしゃべる。
「伏見稲荷大社ってあの鳥居がたくさん並んでる神社ですよね!一度行ってみたかったんですよ。それにお稲荷さんの総本宮だって書いてありました」
「よく知ってたね。全国三万社のお稲荷さんの総本宮なんだよ。特にあのたくさん並んだ千本鳥居はテレビでも何度も放映されるぐらい有名だもんね」
「ならさっそく向かいましょ!多分たくさんの観光客が来ているでしょうから早くいかないと予定の時間を過ぎちゃうわよ」
美鈴が二人をせかすように言った。その表情はこれから始まる旅への期待でとても晴れやかな笑顔であった。
「確かに時間がもったいないし、さっそく出発しよっ!さとしさん」
そう言って楽しそうにさとしの腕を引っ張って歩く美波の姿も楽しそうなのが一目瞭然であった。
京都駅に着いた三人は「JRみやこ路快速」に乗り稲荷駅まで向かった。電車の中は観光客や地元の人が多く乗っており、大変混んでいた。京都の土地柄か、外国人観光客の数が大変多かった。
稲荷駅から神社へ向かう参道にも多くの外国人観光客があふれており、人種だけを見ればさながら海外といった様相を呈していた。
「すごい数の外国人ですね。ちょっと埼玉では見ない数ですよ、これは」
埼玉県で人の多さや満員電車には慣れているさとしにとっても、ある意味異様な光景であった。
「三原にもいないわよ。というかこんなにたくさん人自体がいないわ」
美鈴も人の多さに驚いているようである。
多くの人の間を抜けながら参拝するために本殿を目指す。
やっとのことでたどり着いた本殿で参拝の列に並び順番待ちをする三人であった。
参拝までの待ち時間があるので読者の皆様に簡単に伏見稲荷大社について説明しよう。
伏見稲荷大社は先ほどの会話で出てきたが、全国三万社のお稲荷さんの総本宮である。この稲荷山自体が御神域であり、ここにある杉にはすべてお稲荷様が依る「御神木」とされている。商売繁盛・五穀豊穣・安産・学業成就・病気平癒など幅広い御利益があるとされている。参拝のルートとしては本殿で参拝し御朱印を頂いた後で、千本鳥居を抜けて奥社参拝所へと向かい、御朱印を頂くのが一般的である。
本殿の参拝を終え、御朱印をもらった三人はその御朱印を見ながら話をする。
「ここの御朱印は結構シンプルな感じなんですね」
美波が素直な感想を述べた。
「俺の勝手な意見だけど、有名な神社の御朱印は割とシンプルなものであることが多いかな。そのもっとも代表的なのが伊勢神宮だね!お伊勢さんの御朱印は本当にシンプルだったよ」
「私はこういうシンプルな御朱印も好きですよ」
美鈴がいうと、
「私は華やかな方が嬉しいかな」
と美波が返した。
(珍しく好みが割れたな。まあ、かくいう俺はどちらの御朱印も趣があって好きなんだけどな)
そんなことを思いながら、さとしは御朱印帳から視線を上げ、ふと美鈴と美波の顔を代わる代わるに見比べた。
(……どっちも魅力的だよな……)
御朱印の話をしていたはずが、いつの間にか二人の女性としての魅力に心の中で評点をつけていた自分に気づき、さとしは慌てて咳払いをして視線を外した。
「それじゃさっそく千本鳥居へと向かおうか」
不埒なことを考えていたことを悟られないように、元気な声で二人に声をかけるさとしであった。
境内の空気は人が多くいても、どこか心の休まるような気に包まれていた。
そのせいか、三人ともこの後に苦行がやってこようとは夢にも思っていなかった。
第2章第1話をお読みいただきありがとうございます。
今回は伏見稲荷大社についてですね。私が実際に行ったのは今年の2月だったのですがとても多くの外国人観光客であふれており、驚いたのをよく覚えています。
京都でもほかの神社ではそこまでではなかったんですけどね。
今回、話に出た御朱印のタイプについてですが、様々なタイプの御朱印が存在するので、皆様もまだやられていない方がいたらぜひ初めてみてください。ちなみに私が初めてもらった御朱印は埼玉県大宮の氷川神社でした。
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