第十四話:さとしと美波のぶらり散歩(広島)
お好み焼きを食べて出てきた二人は、腹ごなしもかねて広島駅南口にある「愛友ウォーク」へとやってきていた。この商店街は再開発によって誕生したコンパクトな商店街で、 戦後の広島駅前を支えた伝統ある「愛友市場」の跡地に建てられていた。市場は一新されて綺麗な建物になったが、あえて当時の市場を思い出させるような「低い天井と狭い通路」のデザインが残されており、どこか隠れ家のようなレトロモダンな雰囲気が漂っていた。
「なんだか少し変わった雰囲気で楽しくなってきますね」
「俺は大学院生の時に留学していたインドネシアのバリ島の市場を思い出すよ」
さとしは昔を思い出しながら答えた。
「さとしさん留学してたんですか?」
「1年半ぐらいだけどね。もう15年以上前の話だけどね」
さとしのことを目を輝かせて見つめる美波。
「留学とかすごいです!じゃあ英語もペラペラなんですか?」
苦笑するさとし。
「残念ながら僕は町や大学にいないで、島の中央部にある高原地帯にある村に住んでいたからもっぱら使っていたのはインドネシア語だったよ」
「それでも十分凄いですよ。新婚旅行はバリ島に決定ですね!その時は通訳お願いしますね」
「いつ結婚することになったんだよ……。というかもうっ結構忘れてると思うぞ」
冷ややかな視線を美波に送るさとしであった。
さとしの視線など意に介さない美波は、肉まんを売っているお店の前で足を止めた。
そのお店の名前は豚まん専門店「広仙」。ここの豚まんは、もっちりした厚めの皮の中にジューシーな餡が詰まっていて、小腹を満たすのには最適であるとの事。
「さとしさん、ここ肉まん売ってますよ!買って食べましょうよ!」
「その身体によく入るなぁ。……それじゃ2つください」
飽きれた顔をしながらも2つ肉まんを買うさとしであった。
「皮がもっちりしてておいしいです!」
「中の餡もジューシーでいい感じだな」
2人ともあっという間に肉まんを平らげてしまった。
「さとしさん、今度はデザートを食べに行きましょう!」
そう言ってさとしに手を引き再びekieの1階へとやってきた。
「さっきここでおいしそうなチーズタルトが売ってたんですよ!買って帰ってお部屋で一緒に食べましょ」
目を輝かせる美波のお願いをさとしが断れるはずもなかった。
「いくつほしいんだい?」
「2つ……いや3つで!」
悩んだ挙句個数が増える始末。
「なら一応足りないとあれだから5個買っていこうか」
「さとしさん、大好き!」
満面の笑みでさとしに抱き着く美波であった。
このチーズタルトはタルト生地のサクサク感と、中のチーズクリームのとろける食感が大人気であるらしい。ここで美波がさとしに提案する。
「さとしさん、そこのベンチに座って一緒にチーズタルト1つ食べてみませんか?」
上目づかいでお伺いを立てる美波であった。
「しかたないな。なら1つだけだからな」
結局、さとしは提案を受け入れてしまう。
ベンチに座り仲良くチーズタルトをほおばる二人の姿は、親子とも恋人ともとれるような不思議な姿であった。ただ、一つだけ言えたことは、二人がとても仲良しであることだけは誰の目から見ても明らかであった。
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次の投稿時期は基本的に未定です。この作品はメインの「幼馴染の境界線」の投稿の合間に作成していきますので、ランダムな投稿になると思います。




