第十二話:グランドプリンスホテル広島と二つ目の御朱印
宮島観光を堪能した二人は宮島口の駐車場へと戻ってきていた。
車に乗り込んだ二人はこれから二人が今日泊る広島市内のホテルへと向かうのであった。
「美波、宮島観光はどうだった?」
「とっても楽しかったです!特にアナゴ飯と揚げ紅葉は最高でした!」
「相変わらず食いしん坊な感想だね。まあ俺もアナゴ飯は最高だったけどね」
そう言って笑いあう二人であった。
「それじゃこれから今日宿泊するホテルに向かうからね」
「今日泊るホテルはなんて名前のホテルでしたっけ?」
「今日宿泊するのはグランドプリンスホテル広島だよ。2023年にサミットが行われた時に使われたホテルだよ」
自慢げに話すさとし。
「なんかすごそうですね。……この服装で追い出されたりしないですか?」
「特に服装の規定とかないから大丈夫だよ。それにその服装美波に似合っててとても魅力的だと思うよ」
前を見ながら美波を安心させるように微笑んで答えた。
「そんなこと言われたら恥ずかしいじゃないですか!私が魅力的で、可愛いくて綺麗で、スタイルも抜群で、絶対お嫁さんにしたいだなんて」
「嬉し恥ずかし」という言葉が似合いそうな感じの様子の美波が思いっきりさとしの肩をたたいた。
一瞬肩をたたかれて驚いたさとしだが何とかハンドル操作を乱さないように踏ん張った。
「美波、あぶないだろ!そもそも嫁にしたいだなんて一言も言っていないんだが」
ジト目で美波を見るさとし。
「さとしさんてば恥ずかしがっちゃって、……可愛い」
嬉しそうに勝手な思い込みを爆進させる美波であった。
ーーー
車は高速道路を降りて、広島市内へと入っていく。
「市内は路面電車の通る道なんかもあって、慣れないとちょっと走りづらい感じがするな」
侵入する道を間違えないように慎重に運転するさとし。
車は徐々に海の方へ近づいていく。
しばらくナビに従って車を走らせると、目の前に立派なホテルが見えてきた。
「もうすぐ到着するからな」
目を輝かせてホテルを見ている美波に声をかけた。
「今日はあそこに泊まるんですよね?それも……さとしさんと一緒の部屋で……」
最後の方の言葉は消え入りそうなか細い声であった。
「ああそうだよ。それに変なことしないから安心していいよ」
さとしが苦笑する。
「大丈夫ですから!さとしさんならどんと来いですよ!」
美波が虚勢を張って答えた。
ホテルの駐車場に到着し、荷物をもってホテルへと向かう二人。
「車に忘れ物はないか?」
「大丈夫ですよ」
ロビーに入るとさとしが受付でチェックインの手続きを行った。
その間美波はロビーの真ん中にある大きな噴水とそこの並ぶ国旗や写真を真剣なまなざしで眺めていった。
このグランドプリンスホテル広島は2023年5月に開催された「G7広島サミット」のメイン会場として使用されたホテルであり、その時の記念の写真などがロビーに飾られていた。
「それじゃ部屋へ行こうか。部屋は10階だからね」
「はーい」
美波はさとしの下へ駆け寄ってきた。
エレベーターで10階に行き、自分たちの部屋に入った。
部屋の窓からは正面に広島の街が見え、右側へ視線を移すと海も見ることが出来た。
「この後はどこか行きたい場所はあるかい?」
「夕飯にお好み焼きが食べたいぐらいかな……」
「それなら原爆ドームや資料館に行ってもいいかな?資料館が新しくなってからまだいけてないからちゃんと見ておきたいんだよね。後その近くに神社もあるしね」
「何て名前の神社なんですか?」
尋ねる美波にさとしが答える。
「空鞘稲生神社っていう神社だよ。天文年間(1532〜1555年)に創建された歴史あるお稲荷様なんだけど、境内には原爆の焼け野原から再び芽吹いた「被爆クスノキ」があって、強い生命力のパワースポットとして有名なんだよ。それと……「縁結び・恋愛成就」のご利益があるってさ」
「縁結びに恋愛成就!今すぐに行きましょう!」
さとしの言葉に飛びつく美波であった。
ーーー
タクシーで原爆ドームへとやってきた二人は、ドームの周りを歩いたのちに原爆資料館へと足を運んだ。
「新しくなる前に一度だけ来たことはあるんだけどね。あの時は子供だったから「怖いな」ぐらいにしか感じてなかったんだよね」
「さとしさんの子供時代、ぜひ見てみたいです」
目を輝かせて言う美波。
「どこにでもいるような子供だったよ。それよりチケット買うから並んで」
入場チケットを券売機で購入し中へ進んでいく二人。この原爆資料館は2019年に全面リニューアルが行われ、現在は「東館」と「本館」の2つの建物が渡り廊下で結ばれた構造になっている。
まず最初に【東館】のエリアに入っていくことになる。ここでは原爆が投下される前の活気あふれる広島の街並みや、なぜ広島に原爆が落とされたのかという歴史的背景を、大型のホワイトパノラマ(プロジェクションマッピング)などの最新技術を使って分かりやすく解説を行っていた。
さらに進むと、【本館】エリアに入り、ここでは被爆者の遺品や写真、惨状を伝える資料が、意図的に照明を落とした空間に静かに展示されていた。黒焦げになった三輪車、ボロボロになった衣服、亡くなったお子さんを想う親御さんの言葉など、「遺品が持つ無言の訴え」を通じて、あの日何が起きたのかを一人ひとりの人間の視点から生々しく伝えられており、二人はともに一言も発することが出来なかった。
資料館を出てきた二人は同時にフーっと大きなため息を吐いた。
ーーー
その後二人はスマホのナビを使って、空鞘稲生神社へと向かって歩き出した。
ほどなくして神社にたどり着いた二人は参拝を済ませ、神社の社務所へとやってきた。
「御朱印を頂きたいのですが」
「ようこそお越しくださいました。それでは書きあがりましたらお呼びしますのでこちらの番号札をお持ちください」そう言って1番と2番の札を渡された。
待っている間二人は被爆クスノキの元までやってきた。現在では境内を見守る立派な大木へと成長しており、その圧倒的な生命力にあやかりたいと、多くの参拝者が訪れるパワースポットになっている。
2人はクスノキのパワーを頂いていると、巫女さんが番号を呼ぶのが聞こえた。
お金を収め御朱印帳を受け取る二人であった。
「これで美波は人生二つ目の御朱印だね。ここの御朱印はとても力強さを感じるね」
書いてもらった御朱印を見ながらつぶやいた。
「ホントに達筆ですごいですよね」
美波もその字の綺麗さに感嘆する。
2人はお守りを見に行き、さとしはこの神社限定の御守りである旅御守りを、そして美波は恋愛成就の御守りを2つ購入した。
「一つはさとしさんにあげますから、私とお揃いでちゃんと肌身離さず持っておいてくださいね!」
強引に押し付ける美波であった。
ーーー
2人は路面電車の駅へ行き広島駅へ向かう路面電車が来るのを待っていた。
広島市の路面電車は広島電鉄が運営しており、広電の名前で親しまれている。広電は「動く電車の博物館」と呼ばれている。2025年からは広島駅に乗り入れることが出来るようになっている。
2人はやってきた路面電車に乗って広島駅を目指した。
2人はこれから向かう駅周辺の中心地で出会うグルメや観光名所を思い、心躍らせていた。
食いしん坊たちの御朱印集め紀行をお読みいただきありがとうございます。
もし気に入っていただけましたら、ブックマークと評価☆及び感想を頂けると作者みょうりに尽きます。
次の投稿時期は基本的に未定です。この作品はメインの「幼馴染の境界線」の投稿の合間に作成していきますので、ランダムな投稿になると思います。




