第十一話:アナゴ飯と大鳥居
参拝を終えた二人は神社を出て、さとしが以前から目星をつけていたアナゴ飯のお店を目指して歩いていた。
お店の名前は「まめたぬき」と言い、表参道商店街の中ほどにある明治創業の老舗宿「錦水館」が直営するモダンなお食事処である。
お店の前までやってきた二人。
立派な店構えに美波が少しだけ緊張した面持ちになる。
「このお店だね。じゃ入ろうか」
「高そうだけど大丈夫?」
「お金ならちゃんと持ってきてるから平気だよ。さあ行くよ」
さとしが美波の背中を軽く押して店内へ入っていった。
店員さんに案内されて席に着いた二人はランチメニューを見ながら、
「このアナゴとカキフライの競演セットなんてどうだい?おいしそうだよ」
値段を見ておとなしくなってしまう美波が遠慮がちに言った。
「さとしさんと一緒のでいいです」
「OK。ならこれで決まりだね」
さとしが店員さんを呼んで注文をする。
「すいません。このアナゴとカキフライの競演セットを二つお願いします」
注文を受けた店員さんが注文をキッチンへ伝えに行った。
さとしは事前に仕入れていた情報から、このお店の特徴を美波に伝える。
「ちなみにここのアナゴ飯は宮島では珍しく、煮穴子をさらに陶箱で一気に蒸し上げるっていう独自の製法をとっているらしいよ。だから、お箸で持つと崩れてしまうぐらい、ふわふわで口の中でとろける柔らかさが最大の特徴なんだってさ」
おとなしかった美波がその話を聞いた途端、目がアナゴ一色に染まり元気になったのは言うまでもない。
しばらくすると注文した品が運ばれてきた。とてもおいしそうな匂いが漂っていた。
「それじゃ食べようか」
「「いただきます」」
2人は息ぴったりに合掌すると、アナゴ飯の蓋を外してアナゴと対面した。
陶器でできたお重?の上にのっている立派なアナゴ、そしてそのアナゴに沢山かかっているタレが食用をそそる。
最初に一口お味噌汁で口を潤したさとしは、アナゴとその下のご飯をレンゲスプーンですくって口へ運んだ。
「ホントにふわふわなアナゴだね。……このたれもご飯にあってとってもおいしいよ。いくらでも食べられそうだ」
美波にいたっては脇目も振らず、一心不乱にアナゴ飯に食らいついていた。
お代わりを求めてくるんじゃないかという勢いだ。
2人とも残さずおいしくすべて平らげ、お茶を飲んでフーっと息を吐いた。
「満足してもらえたかな?」
「もう大満足です!いつかまた連れて来て下さいね」
「機会があったらね」
はぐらかすさとしであった。
時計を見ると12時半を少し過ぎていた。
「今日は12時半から徒歩で鳥居まで行けるとなっていたから、そろそろ大丈夫だろうし、大鳥居に向かおうか」
「ちょうどおなかもいっぱいだし腹ごなしのお散歩にちょうどよさそうですね」
お腹をさすりながら言う美波。
(しかし、この細い体のどこに入っていくのやら?)
ふとお腹の上に視線を移すと、その大き目の胸が目に入ってきた。
(こっちについてるのか!これはなかなかに立派なものをお持ちで……。い、いかん、俺は美鈴さんの信頼を裏切るような汚れた目で美波を見てしまった。気をつけねば……)
美波はさとしの心の中の葛藤など気が付かずお腹をさすり続けていた。
お店を出た二人は大鳥居に向けて進んでいく。徐々に大きくなっていく大鳥居。
厳島神社の大鳥居は、宮島の海のなかにそびえ立つ、国の重要文化財にも指定されている世界的なシンボルである。ただ海の中に立っているだけでなく、先人たちの驚くべき知恵と技術が詰まっっている。
例えば1本の杭も打ち込まれていないにもかかわらず、ただ置かれているだけで強い風などにも倒されないのは、鳥居の1番上の横梁の部分は実は箱のようになっており、その中にこぶし大の重い青石が約7トン分も敷き詰められている。あえて頭を重くすることで、お重の重しのように全体を海底へグッと力強く押し付けているのである。あとあまり知られていないのだが、大鳥居の1番上の東西の妻板(端の板)をよく見ると、実は異なるゴールドのマークが彫られておいる。東側に「太陽(日)」のマーク、西側に「月」のマークがあり、これは風水の思想に基づいたもので、艮(うしとら:北東)の方向にある鬼門を封じ、宮島の聖域に邪気が入るのを防ぐ「魔除け」の意味が込められていたりもする。
2人は近くまでくると、美波がさとしにくっつき後ろに大鳥居が入る角度で写真を複数枚写した。
そして今度はさとしにスマホを渡し、美波は鳥居の足元まで進んでいく。
「足元がぬかるんでるかもしれないから気を付けるんだぞ!」
美波は危なげなく無事に大鳥居にたどり着いた。
満面の笑みで大鳥居の中心に立つ美波を純粋に可愛いと感じるさとしであった。
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次の投稿時期は基本的に未定です。この作品はメインの「幼馴染の境界線」の投稿の合間に作成していきますので、ランダムな投稿になると思います。




