五十一話 特訓のやり方
とりあえず、時間が空いたけど何しようかな?
「あ、福崎くん」
「はい」
せっかくの休みだから一人でぬくぬくしていたいなという気持ちはあったけど、特にやることもないし、無視するのもおかしいのでエルディーさんの声掛けに応じた。
「最近の調子はどう?」
「……まあまあですかね」
昨日までだったら魔力切れになるまで魔法を使わされ、体力が尽きてもたたき起こされるとかいう元の世界だったら教育委員会で問題になるような特訓という名の拷問を受けていたせいで、最悪とさえ答える気力がなかっただろうけど……。
とりあえず今日は休みというプラスがあるので、あいだを取ってまあまあと答えられた。
いや、あいだは取れてないけどね、全然。
ただ単純に、最悪だとか言って不満を言う感じにしたくないという気持ちもあるし。
「へえ。あたしも厳しい特訓だなと思いながらも自分の身になっているのは感じるから、なんとも言えないかも」
「なるほど。ちなみにどんな感じなんですか?」
厳しいって言っても僕よりつらいことはないだろうなと思ったけど、別に僕レベルのしんどさで言えよという意図はなく聞いてみた。
そういう感情がないのか?と聞かれたら、なくはないけど。
「不得意な魔法の練習をするって感じね」
「不得意ですか?」
エルディーさんって確か、どの属性の魔法でもクラスの中でトップ三の成績を取るオールラウンダーだったはずだけど?
「うん。最初にどんな魔法が得意で不得意なのかっていうのを調べられて、放出系魔法は得意なんだけど物質化させる魔法は不得意って話になったのよね。だから、今は物質系魔法の練習をしているの」
放出系魔法っていうのは火の玉を飛ばすファイヤーボルトみたいな、いかにも魔法って感じのやつで、物質系魔法っていうのは僕が使っている剣を作るような魔法だ。
「え、でも前に襲われた化け物に土属性の魔法を使ってましたよね?」
「あれは純粋な物質型魔法とは言えないらしくて、属性魔法としてあたしは使っているから、普通の物質系魔法とは違うみたい」
「そうエルディーさんの指南役が言っていたんですか?」
「うん」
うーん……、よくわかんないけど、物質系魔法を放出系魔法として使っているってこと?
本物の拳銃に見えるけど実は紙で精巧に作られたもので、さらにはその紙の拳銃は球も打てるみたいな。
純粋じゃない物質系魔法という言い方からして、物質系魔法ではないというわけでもなさそうだし、側は鉄だけど銃身だけは紙でできているって表現の方が近いのかな?
「それで福崎くんみたいに、物質系魔法だけで魔法を作るなんてことをしているのよね」
「へえー」
それってつまり、エルディーさんが物質系魔法を自由自在に使えるようになったら僕ってただ放出系魔法を使えないだけって感じにならないか?
……まあ別にいいんだけど、なんかちょっと悲しいな。
「福崎くんはどんなことをしてたの?」
「……僕は基礎能力を上げる、っていう感じですね」
「魔力操作能力の向上とか?」
魔力操作能力っていうのは、ドロレさんが言っていた魔力をなじませるとか言っていたのと多分同じだろう。
「はい。あと、僕の戦い方的に近接戦もするので、走り込みとか剣の素振りとかもですね」
「あー、たしか、エルディーさんと福崎君で一緒にやっていた時もそんなことしてたよね?」
「はい」
素直に僕がやっていること――死にそうになるまで剣を振っているとか詳細に言ってしまうと、いろいろと不満が出てしまうから具体的なことは口にしない。
「ルヴィエさんと一緒にやっていた時と違ったりするの?」
「違いますね」
根本的にやっていること自体は変わらないんだろうけど、ハードさが段違いだからな……。
正直、ここに来たらきつくなる可能性はあるだろうなとは思ったけど、そんなきつくなるとかそういう次元じゃなかった。
「え、それはどんなところが」
「こっちの方がしんどいですね。こっちに来てから、ご飯を食べる以外は寝ること特訓しかしてないですからね」
「あー」
エルディーさんは何か納得したようにうなずいた。
僕が朝ご飯を食べたら外に出て、夕食前に帰って来ている姿を思い出したのだろう。
「え、じゃあ待って。福崎くんは外に出ている間ずっと指導を受けてるの!?」
「まあ。一応食事はとってますけど」
……その食事も走っている合間に取るって感じだけどね。
「……大変だね」
エルディーさんは何とか言葉を絞り出した感じでいう。
やっぱ、そうだよな……。
「はい」
ずっと外にいるというだけでもそんな感じなのに、僕のやっていることを聞いたらエルディーさん、どんな反応するんだろうな?
「ねえ、福崎君。そんな感じであたしも福崎くんも各々でやってるけど、三人で連携をとる特訓とかした方がいいと思わない?」
これは対抗戦に向けての話か?
これが本題なのかな?
「まあ、やった方がいいとは思いますね」
三対三の試合をやるんだから、勝つんだったらある程度連携とかも出来るようにしていかなきゃいけないだろうし。
ただ、僕はそんなに勝ちたいとかいう気持ちはないし、ルヴィエさんも興味があるのかどうかも分からないし。
残り二週間を切っている今の時点で、やってないということはやる気はあんまりないんだろうけど。
「やっぱりそうだよね……。この後用事があるから、またね」
「はい、じゃあまた」
おそらくルヴィエさんに三人での特訓をすることを伝えに行くんだろうな。
なんか僕も一緒に行く流れになるのかなと思ったけど、そうはならなかったな。
そんなことしに行くのは面倒だからありがたいけど。
……というか、もし三人でやるって話になったら、あの地獄みたいなことやらなくて済むんじゃないか?
だったら僕も一緒に説得しに――、……僕が一緒に行っても何も変わらないか。
「とりあえず、今日はゆっくりくつろごう」
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