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四十六話 指南役


 それにしてもシャロンさんは僕のそばにずっといるな。もしかして、この家にいるとき限定の専属の使用人みたいな感じなのかな?

 だとしたら、おそらくトイレとか風呂以外はずっと張り付かれるのか。

 専属の使用人という響きはいいけど、ずっと一緒なのはな……。

 さすがに自分の部屋でゆっくりしたいときとかは一人にさせてくれるのかな?


「じゃあ福崎君とエルディーさん、準備はいいかしら?」


「はい」


 ルヴィエさんの準備はいいかしら、にYesと答えたが僕はこれから何をするのかを知らない。

 今いる部屋の大きさ的には、学校で毎朝使っていた第五訓練室と同じぐらいだ。

 僕たちが対抗戦で戦う形式は三対三なので、連携の練習でもするのかなと思いつつ、ルヴィエさんの次の言葉を待つ。


「ではまず、あなたたちの指南をする者を紹介するわね」


 え?指南役って?

 そんな疑問が浮かんだあと、男性と女性が一人ずつ入ってきた。


「福崎君の指南役は私の剣の師匠でもある、ベネディクト・ドロレ」


 美人、って感じの黒髪の女性が僕の方を見て無言で頭を下げる。

 おそらく頭を下げた女性が黒髪の女性がドロレさんなのだろうと僕も頭を下げる。

 ……なんか見覚えがあるような。

 

「エルディーさんの指南役はうちの用心棒のエルヴェ・ランボーよ」


「よろしくな、お嬢ちゃん」


「えっと、よろしくお願いします」


 エルディーさんの指南役は三十歳くらいのイケてるおじさんって感じだな。

 自分の指南役はなんとなく真面目そうなのに対して、エルディーさんの指南役はいろいろと緩そうでいいな。

 見た感じのイメージだから、本当は真逆とかもあり得るけど。


「じゃあ特訓はこのスペースを三つに分けてやる感じですか?」


「いえ。エルディーさんはこの部屋で、福崎君は基本的に屋敷の外でやる予定よ」


「えっ、外なの」


 僕は基本的にインドア派だから、外は嫌なんだけど。


「不満なの?」


「……いえ」


 不満だと言っても室内でやらせてくれるわけでもないだろうしと思い、嫌だとは言わなかった。





 特訓のために屋敷を出た僕は、目的地がどこか分からないので指南役であるドロレさんの後を追っている。

 外でやることになったことには不満があるけど、だからと言って嫌だと駄々をこねたりはするつもりがない。 

 そうしたい気持ちはあるにはあるけど、そんなことしたところで相手の心証を悪くするだけだし。


「ここらへんでいいか」


 目的地に着いたのか、ドロレさんは歩みを止める。

 ルヴィエさんの家から出て大体五分ぐらいたっただろうか、辺りは見晴らしがよくて体を動かすには最適な草原が広がっており、右手には木々が立ち並んでいる。

 

「稽古をつける前に、まず貴様に聞きたいことがある」


 いや貴様って。

初対面の、それもたいした家柄じゃないけど自分の主人の娘の学友相手に使うような言い方じゃなくない?

 自分が師匠だから上下関係をはっきりさせることが目的なのかな?

 にしても、貴様っていう言い方は敵意がありすぎるような気がするけど……。

 

「どれくらいやる気があるのかを聞きたい」


「えっと……」


 ドロレさんの質問にどう答えればいいか分からない。

 やる気はありますってきりっと言えばいいんだろうけど、そういう風に言えるほどのやる気は僕にはない。

 嘘でやる気があると言ったとしたら、向こうが無茶苦茶しんどい特訓をさせてきたとしても、貴様やる気があるって言ったよなといった感じで断れなくなっちゃうだろうし。

 ただ、やる気がないとも言えないからな……。


「何だ貴様、やる気がないのか?」


「……いえ、あります」


 不機嫌そうに言ってくる人に、やる気がないもしくは何も答えないという選択肢を取れるほど僕は肝が据わってないので、少し悩みはしたけどやる気があると伝えた。


「じゃあかかってこい」


「えっと……、かかって来いっていうのは?」

 

「模擬戦をやるということだ。それくらい分からないのか!」


「……すみません」


 模擬戦をやるという意図だとは思ってはいたが、念のためにどういうことか聞いたら怒鳴られたんだけど。

 というか、少し質問しただけで怒鳴ってくるとか気が短すぎじゃないか?この人。

 この後もずっとこんな感じなら普通に嫌なんだけど。

 

「はあ、なんで私はこんなやつを……。おい、かかってこい!」


 小声で言っても聞こえてるんですけど。

 てか、なんでそんな僕嫌われているの?

 ……考えても答えが出なさそうだし、まずはやるか。


「甘い!」


 ファーストアタックはドロレさんに軽々と受け止められ、剣で押し返されただけで僕は吹き飛ばされた。

 馬鹿力過ぎるだろ!

 そんな言葉が浮かんだが、目の前にいる人物は僕の指南役として選ばれたという事実を思い出す。

相手は格上であることは間違いないわけだし、ちゃんと考えないといけないな。


 まず相手は僕の初手の攻撃の後は、僕のことを吹き飛ばしただけで追撃をしてこない。

 これは僕の実力を見るための模擬戦だからだろう。

 ただそれ以外は何も分からないな……。とりあえず魔法を使って攻めてみるか。

 

「ソードレイン」

 

 僕が魔法名を唱えると、剣が複製され次第ドロレさんに向かって降り注ぐ。


 次々と降り注いでくる剣をドロレさんは一歩も動かずに剣一本で捌き切る。

 避けられはするだろうと思っていたけど、一歩も動かないで一秒間に二、三本飛んでくる剣を捌き切るとかバケモンすぎる!

 正直飛んでくる剣を軽々と捌き切るような相手に接近戦なんてしたくないけど、僕の魔法だと遠距離じゃやることは今の魔法ぐらいしかないので、ドロレさんに近づいて攻撃を仕掛ける。

 それに片手は剣を弾き飛ばすのに使っているわけだから、勝ちの目はある程度はあるはず。


「いや、マジか!?」


 ドロレさんは弾き飛ばした複製した剣をキャッチして、その複製した剣を使って僕の近接攻撃を防がれたことに思わず声が出た。

 弾き飛ばした剣をキャッチするとか何それ?

 もしかしてルヴィエさん以上の化け物なんじゃないかと思いつつも、何度も斬りかかる。


 よし、僕の作った剣で対応してくれているな。だったら!

 僕は斬りかかるのと同時に、ドロレさんの持っている僕の剣を消す。

 通った!と思った瞬間、振り下ろそうとした右手が動かない。


「まだ手はあるか?」


 僕の右手はドロレさんに掴まれて全く動かすことが出来ない。

 不意を突いてこれか……。無理だな。

まだできることはあるけど、傷一つ追わせられる未来が見えない。


「参りました」


 降参を告げるのと同時に、すべての魔法を解除する。


「……私は貴様のことが気に食わん!」


 ドロレさんに怒りのこもった目を向けられて、僕は朝食の時に感じた悪寒がした。

 ……朝のやつ、気のせいじゃなかったのか。


「貴様のことは気に食わん、気に食わんのだが……。すまんフォスティーヌ、少しの間頼む」


 え、指南役のドロレさんがどっかに行っちゃった。


高評価とかでなくていいので、評価してくれたらうれしいです。

マイナスなものだとしても、感想も書いてくれるとうれしいです。

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