四十三話 ルヴィエの家
ルヴィエさんからの特訓を受けることになった僕とエルディーさんは、ルヴィエさんの案内のもと特訓をする予定の場所であるルヴィエさんの家へ向かっていた。
そういえば電車みたいなもので移動しているときに、エルディーさんがどんな家なのとルヴィエさんに聞いてルヴィエさんが行ってみればわかるとか言ってはぐらかしていたけど、どんなところなのかな?
わざわざ学校ではなく家で特訓する意味あるような場所なんだろう、っていうのは分かるんだけど。
多分だけど、体を動かしたりとか魔法を自由に使えるような空間があるのは間違いないよな。
僕たちの指導を出来るような人がいるという可能性もあるのか。
つまりは道場的なところなのかな?
だとしたら、ストイックな人が多くて疲れそうだな。
まあ対抗戦があるから、これから時期は第五訓練室みたいなところは使う人が増えてくるという予測をして、いつの時間でも自由に使える場所がいいという判断をした可能性もあるけど。
もしくは――、
「ついたわよ」
たどり着いた目的地は、中世を舞台にしたお屋敷といったらこれだよなといった感じのものが立っていた。
……もしくはルヴィエさんが貴族なのかなと予想したけど、それっぽいな。
「ねえ、ルヴィエさん。あたしの服、安物だし礼儀とか分からないんだけど、大丈夫?」
エルディーさんから緊張しているのが伝わってくる。
僕が心配していることを質問してくれて、すごくありがたい。
「大丈夫よ」
ルヴィエさんは大丈夫だと言ったけど、エルディーさんの緊張はあまり解けたようには見えなかった。
僕も無礼に当たることをして、打ち首とは言わないまでも不味いことになるったら嫌だなと思っているから、エルディーさんの気持ちはよく分かる
「先に私が入ってあなたたちのことを説明するから、ここで待っていて」
「え?僕たちが来ることを説明してないんですか?」
「手紙は送ったからあなたたちが来ることは伝わっているけれど、返事の手紙が届く前にここに来ているから、一応私が先に行くわ」
「えっと、それ本当に大丈夫なの?」
「ええ、大丈夫よ」
ルヴィエさんは次の質問をさせる暇もなく、屋敷の中へと歩いて行った。
「ねえねえ福崎くん。本当に大丈夫かな?」
「いやまあ……、住人であるルヴィエさんが言ってるから大丈夫なんじゃないですかね」
僕はそう口にしつつも、言っていることにあまり自信はなかった。
ルヴィエさんの家のことなんて何も知らないから。
「えっと、それは気休めで言っている?」
「そういう面もないわけではないですけど、ルヴィエさんが大丈夫って言うんだったら、何かしら大丈夫といえるような理由があると思うので」
「……確かに。ルヴィエさんだったら、何かしらの根拠があってそういうことを言いそうだもんね」
エルディーさんは僕の言っていることに納得したのか、さっきまでの不安そうにしていた態度がなくなった。
「福崎君、エルディーさん、来て」
屋敷から出てきたルヴィエさんがこっちに声を掛けてきた。
僕たちのことを呼ぶということは歓迎されているかは分からないけど、とりあえず中に入ることは許されたということだろう。
もし駄目だったのならこのお屋敷での特訓はなくなるかもしれないと考えていたから、大丈夫だったことが実はちょっとだけ残念だな。
……まあでも、別の場所でやることになるから関係ないか。
「どうも、レインちゃんの母親であるアリアーヌ・ルヴィエよ。二人ともレインちゃんと仲良くしてくれてありがとうね」
ルヴィエさんの年齢を考えてると三十は超えているはずなのに、二十歳だと言われても納得してしまいそうな母親が出てきた。
ラノベとかだとあるあるな展開だけど、ルヴィエさんとルヴィエさんのお母さんを見比べるとマジか!っていう風な驚きがある。
魔法とか魔力とかある世界だから、もしかしたらそんなにおかしいことでもないのかもしれないけど。
「そんなことないです。いつもルヴィエさんには助けてもらっています」
「僕もルヴィエさんはとても頼りになるので、一緒のパーティーに組ませてもらってありがたく思ってます」
どう反応すればいいのかと困っていたら、エルディーさんがいい感じのことを言っていたので、ちょっとアレンジさせて答えた。
「あらほんと。お母さん、レインちゃんが立派にやっているみたいで嬉しいわ。……確か、福崎くんとエルディーさんだったわよね?」
「はい」
お母さんだから当たり前なんだけど、あのルヴィエさんが名前で、しかもちゃん付けで呼ばれていることがちょっと――結構面白いな。
「レインちゃんって、学校じゃどんな感じなの?手紙は送って来てくれるんだけど、そういうのは全然教えてくれなくって」
母親に友達を合わせた時にされたくない質問ベストスリーに入りそうなのが来たな。
「先生からの問いかけには毎回正解していて、実技もペーパーテストもいつもうちのクラスの中で一番を取っていて、みんなルヴィエさんに尊敬の念を抱いています」
すごいなエルディーさん。よくすらすらとそんな言葉が出てくるな。
言っていることも嘘は言っていないし、お母さんが知りたいであろう人間関係も周りの人たちから尊敬の念を抱いていると言って、交友関係がほぼ僕たちとしかないことを言及していないのがうまいわ。
「そう。福崎くんはレインちゃんってどういう感じに見える?」
「ええっと……」
僕への質問が、学校ではどういう様子かということから僕がルヴィエさんをどう思っているかに変わってしまいどう答えようか迷っている中、なんとなくルヴィエさんに目を向ける。
ちらりと横眼で見た僕は、ルヴィエさんは何も感情が読み取れない顔をしていた。
よくよく考えたら自分だったらこんなの絶対に嫌だから、ルヴィエさんがこの羞恥の時間――恥ずかしがっているのかは分からないけど、無の感情で乗り越えようとしているのが見て取れた。
「ねえ福崎君、どうなの?」
「あ、すみません。そうですね……、パーティーで一緒に依頼を受けるとき、冷静沈着だから的確な指示を出してくれて、すごく強いのでとても頼りになります」
僕はとりあえず、当たり障りのない内容を口にした。
「そういってくれると嬉しいわ」
ルヴィエさんのお母さんは人当たりの良い笑みを浮かべた。
こういうのって、笑みを浮かべていても裏があったりとかよくあるけど、そこらへんどうなんだろう?
とりあえず、腹黒い感じはしないけど。
「ここに来たばかりで疲れているだろうから、今日はゆっくりしていって」
「待って、アリアーヌさん。私たちは対抗戦に向けてきたのよ」
アリアーヌさん……?
ルヴィエさんとルヴィエさんのお母さんは結構似ているから義理の母という感じにも見えないし……。
でも、若すぎるからな。なんかあるのかな?
「今日ぐらい、いいじゃない!福崎くんとエルディーさんもそれでいいかしら?」
「はい、大丈夫です」
「はい」
僕的には今日ぐらいはゆっくりしたいので同意した。
「レインちゃんもそれでいい?」
「……はい」
意外とすんなり了承したな。
お母さんが相手だからか?
「じゃあ、福崎君とエルディーさんが止まる部屋に案内するわね」
元の世界だったら止まるのにいくらかかるのか分からない――それどころかこんな屋敷なんてほぼないだろうから止まれないか。
まあそんなところに泊まるのだと思うと緊張する。
だって、高そうなものを壊しちゃったりとか、カーペットとか寝具とかを汚しちゃったら怖いし。
「それじゃあベネディ、案内してあげて」
「了解しました」
使用人らしき人が頭を下げる。
そんな光景を見て、ルヴィエさんって貴族なん――そういえば、一切貴族とかそういう話はなかったか……。貴族じゃなかったとしても、金持ちなんだなと実感させられた。
高評価とかでなくていいので、評価してくれたらうれしいです。
マイナスなものだとしても、感想も書いてくれるとうれしいです。




