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三十四話 休息と化け物


 ゴブリンを全滅させた後、僕含めた依頼を受けた人たちは、ゴブリンの集落から少し離れたところで休息を取っていった。

 何人かはゴブリンの集落でやることがあるみたいで、この場にはいない。

 ベテランそうな人たちがいないことから、ゴブリンに襲われた人とかの保護をするためにゴブリンの集落に用があるんだけど、ショッキングな光景が広がっている可能性があるから新人には見せられないとかありそう。

 僕はそんな光景は見たくないから、もしそうなのだとしたらその配慮はありがたいけど。

 

「スタンディングさん、めっちゃすごかったっすね!俺と全然年が変わらないのに!」


「まあな。俺ぐらいになれば、こんぐらい当然よ」


「さすがっすね!」


 スタンディングさんは他のパーティーの人におだてられていた。

 当然とか言って何でもない風を装っているけど、絶対に気持ちよくなってるよな、あれ。

 今なんでスタンディングさんがおだてられているのかというと、今回の依頼で目立っていたパーティーの一人からだ。

 だから、エルディーさんとダンフォードさんも似たような感じだ。

 

 僕もそのパーティーメンバーの一人だけど、何もしてなかったので特に興味は持たれていていない。

 その証拠に僕の周りはとても静かだ。

 まあ、あまりよく知らない相手から好意的な感じで来られても、どう反応すればいいか分からないからありがたいけど。

 

「お疲れさまでした、福崎さん」


「……お疲れさまでした」


 弟の方のバークさんにお疲れ様と言われて、疲れるほどのことをしてないというか、ほぼ何もしてないよなとは思ったけど、その思いを口に出すのはどうなのかと感じ、ちょっとだけ間があいたけど素直にお疲れ様と返した。

 ……なんか弟の方のバークさんと一緒にいると、今日の朝のことを思い出して少し恥ずかしいな。


「あの、これどうぞ」


 弟の方のバークさんは、塩漬けされた肉を渡してきた。


「あー……、ありがとうございます」


 僕は言葉にした後に、ありがとうという気持ちが感じられないような言い方をしちゃったなと思った。

 勿論、今日の昼食を持ってきてくれていることには感謝の気持ちはあるんだけど、この肉がうまくないというか、不味いよりだから、テンションが下がってしまう。

 こういうのが今日だけだったらいいけど、これから村や街もないようなところに行くときの食事は、こんなんばっかだと考えると遠出したくないな。


「そういえば、福崎さんはあのエスクウェス学園に通っているんですよね?」


「一応そうですね」


「エスクウェス学園ではどんなことをしてるんですか?」


「えっと……、授業を受けたりとか、魔法の勉強をしたりとかですかね」


 口にしていて思ったけど、我ながらすごく内容が薄いな。


「そうなんですか。エスクウェス学園に来る前とかは何をしていたんですか?」


 弟の方のバークさんは僕が薄い内容で返したので淡泊な返しだったけど、エスクウェス学園に来る前には何をしていたのかということには期待したような目をして質問してきた。

 エスクウェス学園を卒業したというだけで拍が付くらしいから、どこかいいところの出だとか、才能を見込まれて入学したとか思っているのかもしれないな。

 でも、僕はそんな華やかな経歴ではないどころか、この世界の人間ですらないから、弟の方のバークさんが期待しているようなものではないだろう。

 それに、僕がこの世界の人間ではないということを言うわけにはいかないし。

 でも、今日の朝に弟の方のバークさんから言いづらいところまで聞いちゃったわけだしな……。

 何も言わないのはさすがにとは思うから、最近忘れつつあった記憶喪失設定で行くか。


「すみません。僕、学園に入る前の記憶がないんです」


「えっ?」


「記憶のないところにエスクウェス学園で拾われて、将来に学費を払うという形で入学したので、その前は何をしていたか分からないんです」


「……そうだったんですか。すみません」


「いえ」


 記憶喪失っていうのは嘘なのに、申し訳なさそうにされると逆にこっちが申し訳なくなるな。

 戦いなんてからっきしだった人間が、無一文で何も説明もなくいきなりこんな物騒な世界に転移させられたっていうのは、同情されてもいいようなことな気がするから、まあ……。

 それでも、弟の方のバークさんが聞いて申し訳ないと思ったことが嘘なわけだから、正当化はできないか。


「ゴオォォー!!」


 僕が誰かに言うわけでもない言い訳を考えていたところに、突然、骨の芯にまで響き、痛みを感じるレベルの雄叫びが聞こえてきた。

 そしてその雄叫びが聞こえた方向に視線を向けると、全長五メートルぐらいあるんじゃないかと思わせられるぐらい大きい白いゴリラのような化け物がいた。

 

 ……なにあれ。

 僕はその白い化け物を見た瞬間、本能的に恐怖を覚えさせられ、思考が止まった。

 

 辺りの時間が止まったかのように誰も動かない中、その化け物は近くにいた人に物凄い速さで腕をバットのような感じで振った。

 化け物に腕をぶつけられた人は、首がもげた。


「きゃ―――!?」


「新人たちは固まって逃げな!腕に覚えがある者どもはここでやつを足止めするよ!!」


 ウィンパーさんは悲鳴の声よりも大きく怒鳴り声をあげた。


「……ああ、そうだな。お前らー!!あれを狩るぞ!!」


 ウィンパーさんのおかげか、僕含めた周りの人たちの時間が動き出した。


 ……とりあえず、どうすればいいんだ?

 ウィンパーさんの言ってる通りにするのがいいのか?

 このまますぐに逃げだしたいけど、そんなことして他に同じような化け物がいたら終わりだし、固まって逃げないと絶対にまずいよな。

 ウィンパーさんみたいな人が、どう逃げるかの編成とか指示してくれればいいけど、あの化け物と戦うみたいだからそんな余裕ないだろうし、だとしたら僕がまとめられればいいけど、どうすれば……。


 どうすればいいかを知るための手がかりを得ようと周りを見回すと、ウィンパーさんを含めた数名が白い化け物と対面していた。

 僕と同じぐらいの歳の人たちは周りをすがるような目で見ていたり、頭を抱え込んでいたり、涙目で首を飛ばされた人を見ていたりしていた。


 ……はぁー、取りあえず落ち着こう。こんな経験は初めてじゃないんだ。

 僕は周りの慌てている人たちを見て、落ち着かなけらばならないと深呼吸をする。

 

「エヴァン!あんたは新人たちをまとめて逃げな!」


「……分かった。新人は俺についてこい!!」


 僕が覚悟を固めようとしていたところに、兄の方のバークさんは真面目な顔で僕たちのような人を集めるために大声を出した。

 僕はそんな兄の方のバークさんを見て、何となるのかもしれないと希望が見えてきた。


「僕は残ります!」


 まじかと思って、弟の方のバークさんを見る。


「何言ってるんだアンブローズ!あんたは行きな!」


「でもっ!」


「でも、じゃない!あんたが行かなかったら、新人どもに何かあったらどうするんだ!」


「……分かりました」


 話は終わったぽいな。もうなんか、早くいく感じになってほしい!


「グウォォー!!」

 

「おい!来るぞー!!」


 戦っている光景を見ていると不安になりそうだから見てなかったけど、今から始まりそうだ。


「じゃあ、行くぞ!ついてこい、お前ら!!」


 大声を上げた兄の方のバークさんに続く人たちの後ろを、僕はついて行った。


高評価とかでなくていいので、評価してくれたらうれしいです。

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