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三十三話 余裕


「ポジションは一昨日に話した通りにやるよ。分かったかい?」


 ウィンパーさんの問いに、僕含めたパーティーメンバーは頷いた。


 改めて辺りを見回してみると、緊張しているのか、結構な数の人たちの動きがぎこちないように見える。

 まあ、これからゴブリンの集落を潰すという大きめな依頼が一時間後に控えている中だから、当然の反応なんだろうけど。


「それにしても、あんたたちはあんまり浮足立ってないようだね」


 ウィンパーさんがこっちを向いて言う。


「私は腕を磨くために、実践経験は積んできましたから」


「あたしはつい最近、これ以上のことを経験したので」


 ダンフォードさんとエルディーさんは、気負っていない様子で答える。

 僕と出会ったばっかりだったらエルディーさんも周りみたいに緊張していたかもしれないけど、エルディーさんは仲間の裏切りとか死にそうな目に合ったりしているからな。

 ウィンパーさんみたいな頼れる相手がいる中で、規模は大きいけどゴブリン討伐程度であれば、緊張するほどでもないのだろう。


 ダンフォードさんのことはあまり知らないけど、一緒に依頼を受けた時にあまり強くない魔物とはいえ、ウォーウルフを一瞬で蹴散らしていた。

 ルヴィエさんとの特訓で割かし体は動かせるようになってきたけど、その光景を見て近接戦ではダンフォードさん相手に五秒すらも持たせられないと感じたからな。

 僕自身がちょっとだけ体を動かせる程度の腕前だから、僕を基準にした比較じゃあ意味ないのかもしれないけど。

 

 僕がそんな風に考えていると、ウィンパーさんがお前も話せと言わんばかりにこっちを見てきた。


「あ、えーと……、いろいろとあったので」


「今回ぐらいの相手だったら、自分の身ぐらい自分で守れるレベルだから別に」


 僕に続いて、モルトハウスさんも答える。

 モルトハウスさんの魔法を見たことは一回もないけど、普段使いは難しくても一発逆転レベルの魔法が使えるなら、何かあった時には一番優秀なのかもしれない。


「なるほど、頼もしいねぇ。あんたたちは大丈夫かい?」


「はい!」


「問題ねえ!」


 弟の方のバークさんとスタンディングさんは気合の入った返事をした。

 二人とも、大体僕と同じぐらいの歳だろうけどこういうのは慣れてるのかな?

 ……そういえば、昨日の朝に弟の方のバークさんと話したとき、一年前から入ったとか言ってたな。

 一年という期間が長いのか短いのかが僕には分からないから、慣れていると言えるのか判断できないな……。


「じゃあ――」


「おいおい姐さん。俺の意気込みを聞いてないぜ」


「……なんで、あんたのことなんか聞かなきゃならないんだよ」


 ウィンパーさんは面倒くさそうに言う。

 僕たちみたいな新人の意気込みを聞く意味はあるだろうけど、長いこと一緒にやってきた相手の意気込みなんて聞く意味ないからだろう。

 そんな相手が意気込みを聞いてないぜとか言ってくるのとか、だる絡みでしかないからな。


「まあまあ、そういわずに。今日の俺は絶好調だから、困ったときは頼ってくれていいぜ!」


 兄の方のバークさんはエルディーさんとダンフォードさんに向いて言う。

 エルディーさんとダンフォードさんは何と返せばいいのか分からないからか、苦笑いをしている。

 エルディーさんはともかく、ダンフォードさんってこういうのは嫌いそうだからなんか言いそうだなと思ったけど、相手が年上でよそのパーティーだからか何も言わないな。


「はあ、あんたねえ……。そこの馬鹿が言っている通り、困っていることがあったらあたい達を頼りな」


 僕は素直にうなずいておいた。


 ウィンパーさんの反応で思ったんだけど、もしかして兄の方のバークさんは何かあったら頼ってくれっていうことを伝えたかったのかな?


「馬鹿はひどくないか、姐さん」


「……じゃあ、他のパーティーも動き出したし行くよ」


 まあ、性格的に、っていうのもありそうだけど。





「クソッ!こいつら!」


「頭に血を上らせるな!お前の役割は盾役だろ!」


 作戦会議が始まる前に会話をしていた二人だと思いながら、僕は見ていた。

 

「こら、よそ見してるんじゃないよ」


「はい」


 ウィンパーさんは僕のことを叱ってきたが、声にはそこまで力を感じなかった。

 多分、よそ見をしていても大丈夫だからだろう。

 理由としては、僕たちのパーティーがあまりも優秀すぎるからだ。

 

 周りの戦っている様子を見ると、誰も致命的な傷は受けてはいないが苦戦はしている。

 だけど、うちのパーティーの前衛であるダンフォードさんとスタンディングさんはゴブリンを一瞬で倒してしまうし、その二人の戦闘範囲外はエルディーさんが魔法で蹴散らしている。

 そして僕含めたそれ以外のメンバーは何もしていない、というか何もすることがない。

 

「薄々こうなるのは分かってたけどねぇ。やっぱり優秀だったね、あんたたち」


「そうですかね。……まあそうだとしても、僕は関係ないですけど」


 ウィンパーさんの反応から感心というか呆れが感じられた。

 僕の予想だとウィンパーさんは、スタンディングさんがそこそこな働きをして、僕とエルディーさんとダンフォードさんが拙いながらも頑張るという構図だったのだと思う。

 ウィンパーさんの言い方からして、どこかのタイミングで僕たちのパーティーの面々はゴブリン相手なら苦戦しないだろなと思ったんだろうけど。


 なんで、ウィンパーさんは僕たちが苦戦することを想定していると僕が予想したのかというと、周りのパーティーメンバーのポジションと苦戦している様子を見たからだ。

 ウィンパーさんからポジションの説明を聞いた時、なぜ一番実力があるウィンパーさんと兄の方のバークさんがサポート役なのだろうと疑問に思った。

 疑問に思ったとは表現したけど、実は僕なりの予測があって、他のパーティーも経験値が高そうな冒険者がサポート役のポジションについていることで確信に変わった。

 この依頼は、駆け出しの冒険者が受けるにしては難易度の高い依頼をベテランの冒険者がサポートに回ることによって、安全に経験を積ませることが目的なのだと。


「あんたはこのまま何もしないのかい?」


「まあなんか、僕のやることはなさそうですし」


 何かしろと言われているような気もしなくもないけど、やる意味がないし働きたくないので、何もしない理由を言った。

 ウィンパーさんに白い目で見られている気もするけど、気にしない。


 この後も僕たちのチームは一切苦戦することなく、だからと言って他のパーティーに干渉しないことがルールなので無理に倒しに行ったりもせずに、ゴブリンの集落を潰すという依頼は他のパーティーも含めて無事に終わった。



高評価とかでなくていいので、評価してくれたらうれしいです。

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