三十一話 役割
僕はゴブリンの集落に向かう際の中継地点である村で、普通の依頼はどのくらいの人数であたるのかは知らないけど今回の依頼は多いんだろうなと思いながら、他のチームのことを見ていた。
僕たちのチーム以外に三チーム。しかも、その三チームも別の二チームがくっついて一つのチームとなっているから、実質六チームいることになる。
さらに僕たちも合わせる八チームだから、かなりの大所帯だ。
僕たちと同い年くらいの人たちや見覚えがあるから多分僕たちと同じエスクウェス学園の人たちといった経験値が少なそうなのも結構いる。
けどビネートサンのような、僕たちよりは経験値を積んでいそうなパーティーもわりかしいるように見える。
こういう合同クエストは受けたことがないから何とも言えないけど、そういうのは変というか、違和感があるなと思った。
「福崎君、もうそろそろ、作戦会議だって」
「あ、はい。分かりました」
エルディーさんに話しかけられて、もう作戦会議の時間かと思って空を見上げると、陽がそろそろ沈み始めていた。
結構な時間、一人でボーと考えてたんだな。
「ねえ、福崎君。ちょっ――」
「ちゃんと相手を引き付けて、後ろにゴブリンを通さないようにしろよ」
「分かってますって!任せてください!」
「本当に大丈夫か?まあ、何かあったら助けてやるけど」
エルディーさんが何か伝えようとしていたところに、僕と同じぐらいの年の男の人と、がっちりとした体格の男の人の会話で遮られた。
「……ごめんね、やっぱり何でもない。じゃあ、先に行ってるわね」
「はい」
エルディーさんが僕に何か言おうとしていたことが前にもあったから、何でもないわけではないのだろうと思っている。
けど、話が遮られた後に何を言えばいいのかと黙り込んでいたら、僕が黙っていたからエルディーさんが気まずくなってしまって言いづらくなってしまったのだと思う。
僕はこういうことに対する対処能力の低さに自分は駄目人間だなと思いつつ、エルディーさんの姿が見えなくなったのを確認してから作戦会議が開かれる場所へと向かった。
「今回はあたいとアーヴィン、ダンフォード、福崎が前衛、エヴァンとアンブローズ、エルディー、モルトハウスが後衛をしてもらうよ。いいかい?」
これ、作戦会議っていうよりも作戦内容の伝達だよなと思いつつも、特に文句もない――いや、痛いのは嫌だし僕は魔法師だから後衛がいいなとは思ったけど頷いた。
「あの、僕は近接戦が得意だから前衛の方がいいような……」
意外なことに弟の方のバークさんが、歯切れは悪そうな言い方で否定的な意見を出した。
意外だと思った理由としては、おどおどしていて自分から意見を言わなさそうだなということと、見た目と性格から後衛――むしろ戦えるのかなと思っていたのに、近接戦が得意だと言ったからだ。
「駄目だ」
「えっ?」
「後衛には大抵のことは器用にこなせるエヴァンがいるけど、もし後ろから襲われた場合にとっさに対処できるのがいた方が安全だからね。だから、あんたは後ろを担当してもらうよ」
「……はい、分かりました」
なんか、納得がいってなさそう間があったな。
弟の方のバークさんは自分から前衛がいいんじゃないかって聞いたのは、おそらく前衛をやりたいという気持ちがあるからなのだろう。
そういう気持ちがあるのにも関わらず、後衛をやらされる理由が保険っていうのは納得いかないのかもしれないな。
……というか僕が前衛をやらされるのって、僕たちのパーティーに魔法師が多い中で一応前を張れるからって理由だと思ってたけど、弟の方のバークさんが前衛を出来るなら、普通は僕とポジションが逆じゃね?
意見を出すのとかやりたくないから、言う気はないけど。
「大まかに前衛、後衛で分けて言ったけど、これからもうちょっと詳しく役割分担について説明するよ。まず、魔槍術が使えるダンフォードとアーヴィンには一番前で相手を引き付ける役割をしてもらう。そして、あたいと福崎は後ろに敵を通さないようにしながら、一番前で引き付け役の二人の手助けをする」
ダンフォードさんとアーヴィンさんが引き付け役か。
ダンフォードさんは魔槍術といって、魔法を使った槍術で戦うからガチガチの近接戦が得意で、アーヴィンさんも腰に剣をさしているから前で戦いそうだし適任な感じがするな。
で、僕とウィンパーさんはその補佐か。
一見楽そうに見えるけど、後ろに敵を通さないようにするとか、前で引き付けている役割と後衛の邪魔をしないように立ち回わったり、結構気を遣わなきゃいけないポジションな気がする。
敵が厄介であればあるほど立ち回りが大変そうな感じがするけど、今回のゴブリンはどうなんだろうな?
経験値が高そうなウィンパーさんが同じ役割だから、意外と楽な可能性はあるけど。
「エルディーはゴブリンを魔法で殲滅、モルトハウスは邪魔にならないようにしながら、何かあった際には魔法を使いな。エヴァンはエルディーとモルトハウスを守りながらも後方から援護、アンブローズは一番後ろで何かあった際に対処をしてもらうよ」
自己紹介の時に何でも屋と言っていた兄の方のバークさんは後衛を守りながら後ろから支援、弟の方のバークさんは一番後ろで後衛。
エルディーさんは魔法で敵の殲滅、モルトハウスさんは魔法を使うことを強要されない感じか。
経験値が高いウィンパーさんと兄の方のバークさんが補佐役というのはかなり安全重視な感じがするなとは思うけど、さすがは等級が上から三番目であるBランク冒険者の采配なだけあって、ちゃんと理にかなってるなと感じた。
「何か意見はあるかい?」
僕が感じていた通りウィンパーさんの采配は良かったのか、特に何も意見は上がらなかった。
高評価とかでなくていいので、評価してくれたらうれしいです。




