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二十九話 銭湯


 ダンフォードさんがモルトハウスさんに突っかかってきたあの後、今止まっている宿には風呂がついていないらしいので、僕たちは銭湯へと向かった。

 風呂はもちろん男女別々なのでエルディーさんとダンフォードさんはいないから、モルトハウスさんと一緒に湯船に浸かっている。


 銭湯みたいな大勢で風呂に入るのは修学旅行の温泉ぐらいしかないし、さらに言えば他人と一緒に風呂に入ることなんて全くないから、人の目線とかが気になっちゃうな。

 しかも、修学旅行の温泉とかはクラスメイトしかいないけど、銭湯には知らない人しかいないし。

 僕が他の人のことは気にしていないように、誰も僕のことなんて見てないっていうのは頭では分かってるんだけど。


「なあ、福崎はどっちが好みなんだ?」


 僕が他人の視線が気になっているところに、モルトハウスさんが好奇心からといった感じではなく、ただ純粋に疑問に思ったからといった感じで聞いてきた。


 僕が基本的に人と会話しないというのもあって、一対一でなくともモルトハウスさんと話すことは初めてなのかもしれないというレベルなのに、物凄く答えづらいことを聞いてきたな。

 女の人がグループにいる中で男二人が銭湯というシチュエーションでは、漫画とかアニメだとよくある展開ではあるけど。


「えっと、どういう意味ですか?」


「そりゃお前、アリエルとミリアム、どっちがいいかってことだよ」


 僕の想定していることと違うというわずかな希望にかけてどういう意味かと聞いてみたけど、思った通りだったな。

 というかモルトハウスさんの質問とは関係ないけど、男の僕ならともかくまだ出会って間もないのによく下の名前で呼び捨てできるよな、この人。


「そういうのはちょっとよく分からないです」


 勿論二人とも容姿がいいから可愛いなとかは思ったりする。

 けど、今まで生きてきた中で恋愛感情を抱いたことがない僕としては、付き合うとか好みがどうこうとかはあんまり分からないから、モルトハウスさんに言ったことは嘘ではない。

 あと、好きだ嫌いだとかを考えるのがあんまり好きではないというか、得意じゃないというか……、まあなんかそんな感じだというのもある。


「何だよ分からないって。言いたくないんだろ?」


「……ええ、まあ」


「じゃあいいや」


 言いたくないんじゃなくて分からないって言ったじゃんとは思ったけど、言い返してもいいことどころか面倒になりそうなので肯定しといた。

 でも、意外とすぐに興味をなくしてくれたのはありがたいな。


「モルトハウスさんはどうなんですか?」


 別にモルトハウスさんの好みとか興味があるわけでもないし、意地返しというわけでもないけど、ここで聞かないのもどうなんだろうと思い質問した。


「ん、俺はどっちもだけど、どちらかといえばアリエルだな」


 モルトハウスさんはエルディーさんの方がいいのかなとは思っていたけど、ダンフォードさんもというのは意外だな。

 ダンフォードさんの見た目が気に気に入らないとかそういうことじゃなくて、性格的にモルトハウスさんとそりが合わなそうと思っていたから。


「なんか、モルトハウスさんとダンフォードさんとはあまり相性が良さそうには見えなかったから、意外ですね」

 

「お前分かってないなー。ああいうお堅いのが落ちた時が最高なんじゃないか」


「はあ」


 モルトハウスさんがやれやれっといった感じで言う。僕は気にしないけどいちいちこの人、人を苛立たせてくるよな。

 まあそれはいいとして、モルトハウスさん、結構咲いていないこと言っているよね。

僕は気のないような返事をしたけど、正直分かる。

 ただ、そこまで行くのが大変だろうから、好みというよりも性癖って感じがするけど。

 あと、そうなってくると大抵は結局見た目が良ければいいって感じになってくるだろうから、ダンフォードさんのことが好みだというのは意外でも何でもないんだなと思った。


「じゃあ、そろそろ出るわ」


「あ、はい。僕はもう少し浸かってます」


 モルトハウスさんは体も温まってきたからか、それとも僕と一緒にいてもしょうがないと思ったのか、その両方かは分からないけど湯船から出ていった。


「……好みかぁー」


 ダンフォードさんはほぼ接点がないからあまり何も思わないけど、エルディーさんとルヴィエさんは、姉以外で――濃密さで言ったら今まで生きてきた中で一番関わってきた女性なのは間違いない。

 だから、あまり面識のないクラスメイトが死んでしまったという話を聞いても、そうなんだという風にしか思わないだろうけど、その二人がという話だったら多分思うことはあると思う。

 それが悲しいという感情になるのかはいまいち今の僕には分からないけど。

 ただ、だからと言って生涯を共にする、そこまでいかなくとも恋人として過ごしたいと思っているのかと聞かれると、どうなんだろ、とはなる。

 

「あーもう、分からん!」


 無駄にいろいろと考え込んでしまう癖で考えちゃったけど、あんまり考えたい話題でもないし思考を打ち切った。

 向こうには、僕にそういう関係になりたいと思うような、関係性も信頼度、好意もないだろうし。


「出るか」


 僕は頭が若干ボーっとしてきたので、風呂から出ることにした。

 でも、大勢の知らない人も浸かっている湯だと考えるとそのまま出る気にならなかったので、シャワーを使って体を洗い流してからにした。


高評価とかでなくていいので、評価してくれたらうれしいです。

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