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二十八話 リーダー決め


「なあ、これから何するんだ?というか、リーダー誰なの?」


「あなたがあの時いなくなってしまったから、決められなかったんですよ!」


 チームI班である僕たちは一週間一緒に依頼を受けるイベントが始まり、今現在は学校に集まっていた。

 チームI班というのは、僕とエルディーさんとダンフォードさんとモルトハウスさんとのチームのことで、他のチームもチームA班とかチームB班みたいに割り振られている。

 モルトハウスさんにダンフォードさんが切れている会話の内容からも分かる通り、最初に集まって以来は一度も集結したことがないので、これからどうするかとか以前にリーダーすら決まっていない。


「まあまあ、そんなこと言っててもどうしようもないわけだし、リーダー決めをしない?」


「……まあ、そうですね」


 ダンフォードさんはモルトハウスさんを険しい表情で見ながらも、しぶしぶといった感じでエルディーさんに同意する。


「とりあえず、俺はやりたくない」


「はぁ?」


「だって、めんどいし」


「……はぁ~、あなたなんかにリーダーは任せられないから、私はいいですど」


「まあ、やる気のない人に任せてもしょうがないわね」


 いやなんか、それずるくない?

 普通に僕もやりたくないから、そういう感じで一抜けするのはやめてほしい。

 モルトハウスさんに続いてやりたくないって言いたいけど、さすがにそんなこと言えるような勇気は僕にはない。

 しかも、普通にリーダーをやるとかでさえ嫌なのに、何かしら問題が一つは起きそうなチームを引っ張っていく役とか絶対にやりたくないよな……。


「福崎君はそれでも大丈夫?」


「大丈夫です」


 本当はダメと言いたいけど、さすがに言えない。

 

「じゃあ、あたしたち三人の中からっていうことになるけど、どうやって決める?」


「ありきたりですけど、私は一番適正がある人がいいと思います」


 適正か……。適性で言えば、エルディーさんだろうな。

 モルトハウスさんと僕は向いてないのは確実だし、ダンフォードさんは向いているように見えて融通とか利かなそうで、少なくともこのチームには相性が悪いモルトハウスさんがいるから無理そうだよな。

 そうなると、消去法的にエルディーさんっていうことになると思う。


 それに、元々僕とルヴィエさんと組む前はリーダー的なことをやっていたわけだし、一緒に組んでからも日程決めとか依頼決めとかは基本的にエルディーさんがやっていたから、ここにいる中でリーダーに一番向いているのは間違いないと思う。

 だからと言って、僕がここでエルディーさんが向いていると思いますとか言わないけど。


「じゃあ、あたしがリーダーをやろうかしら。もともと、チームでリーダーをやったことがあるし」


「なるほど。福崎さんはどう思いますか?」


「えっ」


「エルディーさんと同じパーティーメンバーですよね?」


「あ、はい。その、エルディーさんはしっかりしているので向いていると思います」


 いきなり話題を振られてきてびっくりしたけど、僕が思っている嘘偽りないことを口にした。

 だって、ギーベルさんとカバネルさんで組んでいた時も、問題なくとはいかなかったのかもしれないけどリーダーをやっていたわけだし。

 

「なるほど。なら私もエルディーさんがリーダーでいいと思います」


 僕がリーダーをやるとか絶対に嫌だし、ダンフォードさんだといろいろと面倒くさそうだから、いい感じにリーダーが決まってよかったな。


「じゃあさっそく、ここでこの後どうするか決めましょうか」





 リーダーがエルディーさんに決まった後、僕たちのチームはハルシュドという街へ向かった。

 ハルシュドは、村とかが多く存在しているような時代の中で町として存在しているという意味では栄えているとはいえるのだろうが、それ以上でもそれ以下でもないという感じの場所だ。

 強いて特徴的なところを上げるとするならば、列車で二十時間ぐらい掛ければ港町があるということぐらいだろう。

 この世界の列車はどのくらいの速さかは知れないけど、元の世界の電車と比べてもそん色ないスピードはあると思う。

 なら、結構遠くないか?と思うかもしれないが、前に授業で世界地図的なのを見た時に国自体がかなり広そうだと感じたので、相対的に近い方に分類されるのだと思う。

 だと思うという曖昧な言い方をしているのは、列車の速さは体感でしかないし、国の広さもでかそうだなという僕の感想でしかないので、正確なことは分からないからだ。


「今日の依頼のあなた、どういうつもりなんですか!」


「何のこと?」


「何のことって……。今日の依頼で何もしなかったことを言っているんです!」


 このチーム初めての依頼が終わって今日止まる宿について後、ダンフォードさんがモルトハウスさんに物凄い剣幕で怒鳴っていた。

 今回の依頼はウォーウルフというモンスターを討伐してきたんだけど、その時にモルトハウスさんは特に戦闘に参加せずに見ているだけだったことにダンフォードさんが怒っているのだろう。

 僕はそのことに関して、一人だけずるいなとは思ってはいるけど怒ってはいない。


 モンスターにはF 級からS級といった感じで等級があって、ウォーウルフはE級に分類されるモンスターだから、僕たちのチームとっては特に苦戦するような相手ではない。

 だから僕はそんなに気にしてないんだけど、ダンフォードさんは何もしてないというのが気に入らないんだろう。


「とりあえず、なんで何もしなかったのかを教えてください」


「俺の魔法はウォーウルフみたいな小物に使うようなものじゃないからだよ」


「何ですかそれ。そんなにたいそうな魔法なんですか?」


 ダンフォードさんは少し小ばかにしたような言い方をする。

 モルトハウスさんがイケメンでもないのにかっこつけて女の人を誘ったり、依頼では何もしなかったような人だから、疑いと侮蔑の感情がこもっているのだろう。


「ああそうだ。ウォーウルフ程度に俺の魔法を使うなんて赤字にしかならない」


「赤字……?」


「俺の魔法は触媒魔法って言って、魔法を使うときには触媒が必要だから金がかかるんだよ」


「……それって、いくらぐらいですか?」


「俺の手持ちだと、一番安いので一万ホープぐらいする」


「い、一万!?」


 一万ホープって、マジか……。

 一万ホープっていうのはどれくらいかというと、数値の部分は変えずにホープという単位を円に変換した値段と同じだ。つまり、一万円である。

 触媒魔法というのがどういう魔法なのか知らないから、高いとも安いとも言えない。

 けど、一つの触媒でたかだか一回しか魔法を使えなのだとしたら、ウォーウルフの依頼の報酬が一万ホープだから、それを四等分すると考えると赤字なのは間違いない。


「えっと、その一番安い触媒でどんなことが出来るの?」


 今まで会話に参加していなかった、エルディーさんがそう尋ねた。

 今まではただの口喧嘩だったから黙っていたんだろうけど、これからの戦闘に関わってくると思ったからモルトハウスさんに質問したのだろう。


「そうだな。一つの触媒で、ウォーウルフの数がどんだけいたとしても、見える範囲内だったら一掃できるだろうな」


「それはすごいわね」


 エルディーさんが言っている通り、かなり凄そうだな。

 正直言ってルヴィエさんは未知数すぎて分からないけど、エルディーさんはウォーウルフの依頼でそんな魔法は使ってなかったから、僕たちのクラスでトップクラスの実力を持つ人でも使えない魔法ということになるわけだし。


「その一万円よりも安い触媒ってないんですか?」


「あるぞ」


「じゃあ、それを買って使えばいいじゃないですか!」


「嫌だね」  


「何故ですか!」


 ……今の「嫌だね」はすごいな。当事者でもないのに、すげー腹立ったもん。

 今まで糾弾するといった感じだったダンフォードさんも、苛立った感じで怒鳴ってるし。

 

「俺が持っている触媒よりも価値が低いやつだと、触媒魔法じゃなくてもいいぐらいの性能の魔法しか使えないからだよ」


「……だとしても、安い触媒がないとあなたは何もすることがなくなっちゃうじゃないですか」


「ああ。だから俺は何もせずに、お前たちに任せたんだよ」


「な!?」


 なるほど。モルトハウスさんの魔法は狩りをするために使う魔法じゃなくて、もしもの時に使う魔法なのか。

 だとしたら、高難易度の依頼を受けるときとか、護衛の依頼での万が一の時があった時の要員とか、自分が護衛をされる側の時に向いているから、基本的に魔物を狩るような今回の依頼とはあまり相性が良くない魔法なんだな。

 そのことが分かったから、ダンフォードさんは何か言いたそうな顔をしながらも何も言わないんだろう。


「じゃあ、これからは何か対処が困難なことが起きたら対応してもらうということでいい?」


「ああ、それで構わない」


 ダンフォードさんは納得いかなさそうな表情をしながらも、特に何も言わなかった。

 モルトハウスさんに安い触媒を買って戦いに参加してくださいとか言うのかなと思ったから、ダンフォードさんが口を閉ざしたことに僕は意外に感じた。


高評価とかでなくていいので、評価してくれたらうれしいです。

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