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二十話 意識の変化


「ソードレイン」


 僕がそう口にすると、魔法で複製した十本以上の剣が地面に降り注ぐ。

 

「珍しいわね」


「!?」


 誰も来ないと思っていたところに声を掛けられたから、心臓が一瞬キュッとなったのが実感させられたぐらい驚き振り向くと、ルヴィエさんがいた。


 今僕がいる部屋は前の世界で通っていた学校の体育館ぐらいの広さがある、この学園の中で自主練が出来る場所だ。

 なんで誰も来ないのかと思っていたかというと、今の時刻が朝の六時で自主練が出来る場所は全部で十部屋あり、さらにその中でもこの部屋が一番自主練するための器具がそろってないし、狭いからだ。

 というか、ふと思ったけどここよりもいい場所が――屋外もあるけど、好きに使っていい場所が十部屋もあるとか普通にすごいよな。


「いつもここで訓練していたの?」


「いや、そういうわけではないんですけど……。まあなんか、最近はって感じです」


 魔王軍の男に襲われた後、エルディーさんがエスクウェス学園に帰ろうと提案してきた。

僕的にも帰りたい気持ちが強かったのでその意見に賛同し、ルヴィエさんも否定的な意見は出さなかったので、二週間前ぐらいにここに帰ってきていた。

 帰ってきてすぐはどうしてあの魔王軍とかいうやつが襲ってきたのか、どうすればよかったのかとか、これからどうしようとか考えていた。

 そんな風に考えた結果、この世界を生きていくのなら――安心して生きていくのなら強くなるしかないと考え着いた。

 だから僕は、図書館に行って魔法の本を読んで勉強したり、四日前から授業前に毎朝修練していた。


「そう」


 ぼこぼこにされたから自主練をするようになったっていうのはわかっちゃうだろうから、ちょっと恥ずかしいな……。


「その魔法、どういうものなの?」


「えっと、自分の複製した剣を上から狙って降らすっていうものですね」


「そう。ソードレインというのは、とても分かりやすい魔法名ね」


 うっ!

 最初は自分で考えた魔法の名前を唱えるとか恥ずかしい以外の何物でもなかったが、最近は慣れてきて気にしなくなった。

 けどさすがに、知り合いに自分で考えたセンスのかけらもないような魔法の名前を聞かれただけでなく、褒められているとしても自分のつけた名前の良しあしを判断されるのは恥ずかしいものがある。

 そんな中二病みたいに自分で魔法名とかを考えるからそんなことになるんだと思うかもしれないけど、魔法名をつけて口に出しているのには意味があるからしょうがない。

 

 魔法は何も言わなくとも発動させることはできるけど、基本的には魔法名を唱えながら発動させた方が威力や効果が上がる。

 何故かというと、魔法とはその魔法がどんなものかとイメージできることが重要で、その唱えている魔法名と魔法がリンクすることでより鮮明な魔法のイメージがインプットできるからだ。


 例えば、お手本となる先生が魔法名と唱えて魔法を発動させたとする。

 そうすると生徒たちは、魔法で起きた現象と唱えた魔法名がリンクするので、魔法名を唱えることが魔法のイメージの補助になるという感じだ。

 あと、単純に魔法の名前が起きる事象にちなんでつけられているため、イメージしやすいというのもあるらしい。

 だから難易度の高い魔法になってくると、自分がイメージしやすい魔法の詠唱に変えたりとかもあると、最近読み込んでいる教科書に書いてあった。

 

「あんまりこういう名前を付けるのとかは苦手なので、そういってくれるとありがたいです」


「そう」


 今ふと思ったけど、ルヴィエさんって名前を付けたりとか、魔法を唱えたりとか苦手そうだよな。

 この世界じゃ魔法は普通のものだから、魔法を唱えるのが恥ずかしいとかはないかもしれないけど。


「そういえば、ルヴィエさんはどうしてここに?」


「いつも朝使っている場所に人がいたからよ」


「なるほど……。じゃあ、別の所に行くんですか?」


 僕としてはそうして欲しいけど。


「いえ、どうせ他の部屋も埋まっているだろうからここを使うわ」


「え、どうしてですか?」


「……相変わらずね、あなたは」


 ルヴィエさんはジト目で見てくる。

 なんか変なこと言っちゃった、僕?


「やる気のある人たちは、今から二か月後にある対抗戦に向けての特訓をしているのよ」


 たいこうせん……?対抗戦かな?

え、なにその面倒くさそうなの。


「ちなみにチーム対抗戦と個人の対抗戦があるけど、どちらにも参加できるし、どちらかには強制参加よ」


 えー、まじか~。

普通に嫌なんだけど。


「……はぁ~、少しは変わったのだと思ったのだけど」


「……すみません」


 ルヴィエさんは僕が嫌そうにしていることが雰囲気で伝わったのか、冷ややかな目線を送ってきた。

 確かに強くなることに力を入れることは決意したけど、そういう面倒くさそうなやつをやりたいかというと、それはそれ、これはこれという感じだ。


「ちょうど一緒にいるわけだし、模擬戦でもする?」


「いえ、やめときます。……なんかその、今戦ってもあまりにも結果が見えてますから、もうちょい実力を付けたらでいいですかね?」


「……そう。なら、三日後ね」


「えっ……?模擬戦をってことですか?」


「そうよ」


「……ちょっと早すぎません?」


「じゃあ、いつまで待てばいいの?」


 いつまで待てばいいのって……、永遠に待ってくれるとありがたいのですが……。

 はあ……。なんか、今まであった面倒くさいながらもここにきて自主練するという意欲が一瞬で無くなってきた。

 ……もうここに来るのやめようかな。


「福崎君、明日来なかったら……。分かっているわね?」


「……はい」


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