十九話 こういうのは苦手
僕は目を開けると、ぼーっとするけどなんかよく寝た感じがするなと思いながら体を起こそうとしたら――。
「いたっ!?」
体中からチクッと鋭い痛みが走って起こそうとした体の動きを止める。
「大丈夫?福崎君?」
「えっ?」
僕は声がした方に顔を向けようと――痛、ちょっと痛いけど顔を向けると、ルヴィエさんがいた。
「えーとー、まあ、はい。まあ、大丈夫なのかな?」
なんとなくさっきまでのことを思い出した僕は、確かに全身が痛いけど死ぬ可能性の方が高かっただろうから思ってたより大丈夫だとはいえるけど、体中が痛いのは間違いないので言葉尻に疑問符がついた。
「そう……。それはよかったわ」
「はい。……すみません、ちょっと今の体勢がきついので、いいですかね?」
「ええ、いいわよ」
痛みを感じて動くのを辞めた体勢が、ちょっとの時間保つとなると微妙にしんどくなるような体勢だったようなので、ルヴィエさんに体勢を直す許可を取る。
「痛たたたたたたた」
僕は寝ている体勢に戻そうとすると、地味な無視はできないようなやな痛みが来るので、ゆっくりと体を動かす。
はあ、しんどい。
「大丈夫?」
「……はい、なんとか」
「よかった。なんでも、ここに運び込まれた時は全身のところどころの骨が何本も折れていて、魔法でもすぐに完治できないほどだったらしいから」
「えっ」
なんとなくそうかもしれないとか思っていたけど、考えないようにしていたけど。
……僕、本当に大丈夫なのか?
「でも一緒にいた人が応急処置をしながら運んでくれたのもあって、これからの活動に支障は出ないみたい」
「あ、そうなんですか」
体自体は大丈夫なんだ。よかった。
今から、体に何か支障をきたしながら生きていかなきゃいけないのかって、本当に心配というか少し絶望していたから。
しかし、体を動かせなくなっていたら、学校に入るときに背負った借金とかどうすればよかったんだ?
……まあ、大丈夫だったわけだし、考えてもいいことはなさそうだから、まあいいか。
「……」
僕の中でいろいろと大丈夫と結論付け終わったところで、なんか静かだなと思ってルヴィエさんの方を見ると、こっちをじっと見ていた。
目が合うと、僕のことをがっつり見ていた目を微妙に動かした。
「あの、なんか気になることでも?」
「いえ、別に。……そろそろ帰るわ」
「あ、はい」
ルヴィエさんはバックを持ち上げて、席を立ち、部屋から出ていった。
明らかに僕になんかあったぽいけど、……まあいいや。
あと、わざわざお見舞いに来てくれていたぽいし、ありがとうぐらい言った方が良かったかな?
ガラガラガラ。
なんか扉が開いてルヴィエさんが戻ってきたのかなと思って体を動かさないように顔だけを向けると、エルディーさんがゆっくりと両手を使って横に開くタイプの扉を閉めている姿が見えた。
「福崎君、ごめんなさい!」
エルディーさんは勢いよく頭を下げた。
「いえ……」
正直エルディーさんに何といえばいいか分からない。
盗賊に襲われた時は、ルヴィエさんがいて何とかなったからあまり何も思わなかったけど、今回は僕とエルディーさんしかいなかったから、もっと頑張ってほしかったという気持ちはある。
あの時は命がかかっているというのもあって、足を引っ張っているエルディーさんに人生で一番イライラしていたし。
思い返してみたら一回ぐらいしか怒鳴り散らすようなことはしなかったけど、それはただ理性が働いてそんなことをしている暇はないっていうのと、そんな余裕さえなかっただけだと思う。
多分、特にそういう理由がなかったら切れ散らかして、今凄く後悔しているだろうし。
冷静になれる今なら、僕みたいに割り切れないならあそこで動けなくても仕方ないと思える。
それに、これからも一緒にやっていく相手と溝を広げてもしょうがないよな。
「まあなんか、もう少し頑張ってほしいとも思いますけど、……別にいいです」
「……ありがとう」
……はあ、やっちゃった。
皮肉も言うつもりもなかったけど、口を開いたらつい出ちゃった。
「なんか、あたしに出来ることはない?出来ることなら何でもするつもりだから」
「えっ……」
僕はエルディーさんのことをじろじろと見てしまった。
何でもするという言葉は、そういうことなのかと思ってしまう。
今まで生きてきた中で人のことを一度も異性として好きとか思ったことはないけど、性欲とかはあるから、エルディーさんみたいな美少女にそういうことを言われると思うところはある。
でも、相手の弱みでそういうことを迫るのは気持ち悪いし、相手もそういうことを求められる可能性を考えてないで言っているとしたら、やっぱり僕がそういうことで迫るのは無理だ。というか、そういうつもりだったとしても断るけど。
あーもう、考えちゃったのはお約束みたいな考えに毒されてのものだから仕方ないとしても、少しでも揺れてしまった自分が気持ち悪い。
「いえ、特にないです……」
「でも、福崎君には二度も助けれているわけだし!それに今回は、本当に命が危ない中で、あたしが足を引っ張って、それで福崎君がひどい目にあってい――」
「あの、もういいですから」
「でも――」
「すみません。帰ってください」
「……ごめんなさい」
色事関係なく何かを頼むのも、エルディーさんが嫌いだから何かしてもらうのが嫌だとかじゃなくて、誰であったとしても何かをしてもらうというのは苦手というだけだ。
それにこの話題を続けられると、いやがおうにも恐怖とぼこぼこにされた時の痛みと最後に大泣きしたことを思い出しちゃうし。
ただ僕が強く否定したせいか、エルディーさんはとぼとぼとした歩き姿を見せながら扉を開けて部屋から出ていった。
エルディーさんが部屋から出た後、エルディーさんが何もできなかったのはしょうがないと理解できているはずなのにああいう態度を取ったこと、変なこととを考えてしまったことに僕は自己嫌悪した。




