十六話 めんどい依頼
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「今回はどんな感じの依頼なんですか?」
「ビックボアの討伐よ」
僕はエルディーさんから今回の討伐対象の名前を聞いて、依頼でもないのに三日ぐらい前に相手にしたやつかと思い出す。
モンスターにも冒険者みたいに強さを表す等級があり、ビッグボアは下から二番目のEランクだ。
大型車ぐらいの大きさのイノシシだったから、でかくてめちゃくちゃ迫力があったのが印象に残っている。
巨体だから突進力が高く、さらには巨体を支えるための力もあるため、単純な力比べをした場合はそこらの人間では対応できない相手であるらしい。
普通に考えて、人間の倍以上はあるイノシシだからそらそうなんだろうなって感じだけど。
ただ、頭がよくないので罠を仕掛けて直接対決しなければたいしたことないらしい。
らしいという曖昧なのは、僕たちが魔法を使えば一発の相手だからだ。
だから、それほど等級も高くないのかもしれないな。
「じゃあ、今回も結構楽そうですね」
「倒すだけなら楽そうなんだけど……、今回は目的地までに一時間ぐらいにかかりそうだからいつもより大変かもしれないわね」
「あー、なるほど」
僕はすごく乗り気でない声を出してしまった。
だってしょうがないだろう、今まではかかっても二十分ぐらいだったわけだし。
しかも、二十分だけだったときもしんどかったし。
それに散歩気分で行けるならいいけど、足場が悪かったり、いろいろなモンスターと遭遇したりするから、むしろたいして強くない討伐対象を相手するよりも目的地まで行くほうが大変な可能性が高い。
「あの、ビッグボアを討伐するなら、前の所でもいいんじゃないですか?」
「前の所は本来のビッグボアの生息地ではないらしくて、確実に生息しているところはその場所らしいのよ」
「あー、なるほど……」
「……ごめんね、勝手に選んで。別の依頼にする?」
僕があからさまに嫌な感じを出したから、エルディーさんは気をつかったのだろう。
僕の本心としてはそんな面倒くさそうな依頼は受けたくないけど、下調べとか依頼の受注などといったことは全部エルディーさんにやってもらっているので、わがまま言うのはなぁ。
「えーっと、まあなんかエルディーさんが選んでくれた依頼なわけですし、それにしましょう」
「……なんか悪いわね。福崎君がそう言ってくれるなら早速行きましょうか」
「はい」
内心嫌だなーと思いながらも、エルディーさんは気をつかってくれたわけだし、しょうがないと割り切るか。
「そういえば、どうしてこの依頼を選んだんですか?」
「……そうね、ギルドのランク上げのためよ」
エルディーさんが苦々しそうに話し始めて気づいたけど、今の質問って皮肉と捉えられる可能性ないか?
だって、最初にいやいやな感じを出しちゃったし、ここまでかなりの時間歩いてきたわだし。
僕としてはそういうつもりは一切なかったけど。
「なるほど。……僕、いまいちギルドのランク上げとか昇格のこととかわからないので、そこら辺のこと教えてくれませんか?」
「分かったわ。ギルドのランクについてのシステムはそんなに難しいものじゃなくて、ある一定ラインまでランクポイントを貯めたら昇格するというものね。それで、ランクポイントは基本的に依頼を達成するともらえて、難易度が高かったり特殊性の高い依頼だともらえるポイントが多いという感じね」
「今回の依頼はそのランクポイントが多めにもらえる依頼だったんですかね?」
「まあ、今まで受けてきた中では多めのほうではあるわね。ただ、正直にいうと割に合わない依頼なことは間違いないとは思うわ」
「なるほど」
本来だったら、昇格するにおいてアドバンテージを稼げる依頼なんですねといった形に持っていこうとしたが、なんかこれ以上深堀するとエルディーさんに批判をする感じになりそうなので納得した雰囲気を出す。
「今回の依頼は、ランクポイントがほかの依頼よりも多めで討伐対象もたいしたことないなと思って受けちゃったけど、受注された後に場所が遠いということに気づいたのよね」
「あー、なるほど。受けちゃったので今回は仕方なくという感じなんですね」
「そう。それに、受けた依頼をやむを得ない事情がなく三回キャンセルすると降格処分が下されるし、ギルド側からの心証が悪くなったりするらしいわね。だから、なるべくならキャンセルしたくなかったのよ」
「確かにそれなら、依頼を変えない方がいいですね」
僕的には降格処分とかはどうでもいいけど、いたずらにギルド側からの心証を下げるようなことをしたくないし、今回はランクとかそういうのは関係なくしょうがないか。
エルディーさんがしっかりしてくれていればとか思わなくもないけど、全部任せているわけだし、ミスはだれでもあるわけだし。
それに、僕自身がそういう面倒な手続きを全部エルディーさんに放り投げてるから文句言うのはさすがにね。
「グルルル!」
二匹のビッグボアがうなり声をあげてこちらを見ている。
運よくそろそろ話が終わってほしいなと思っていたところで、目的地に着いたようだ。
ていうか、二体並ぶと迫力がすごいな。
「じゃあ僕が足止めするので、エルディーさんお願いします」
僕が攻撃手段として唯一使える、持っている武器を複製して自在に操る魔法では大型車ぐらいの大きさのビッグボアに致命傷を与えづらい。
「グモー!?」
だから、複製した剣を機動力となる足に射出して足止めをする。
「サンダーボルト」
「グモォーーー!?」
そして、足が鈍くなって狙いやすくなっている二匹のビッグボアたちにエルディーさんの雷の魔法があたり、ビッグボアたちは悲鳴を上げて倒れこんだ。
ここまであっさりと終わってしまうと、ここまで歩いてきた苦労は何だったのかと思ってしまう。
「今回も楽勝でしたね」
「そうね。これが初心者にとって難関の一つとされてるって考えると、魔法さまさまよね」
「そうですね」
実際、目の前に倒れているモンスターがこの世界に来た瞬間に現れていたとしたら、絶望していただろうし、今でも魔法なしで相手するとかは考えたくない。
「……ねえ、あっちのほうから変な音聞こえない?」
「えっ」
僕はエルディーさんが指をさしている方に耳を澄ませると、確かに変なうめき声が聞こえる。
「……どうする?」
「えっと、どうするとは?」
「行ってみるかということよ」
「いやー、いいんじゃないですかねー」
僕はやんわりとした断り方ををしながらも即答した。
だって、絶対に行きたくないもん。
「……まあそうね。じゃあ、帰りましょうか」
僕たちは来た時よりも速足で帰路に就くことにした。




