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十四話 なんかめんどくさい

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 スヴェンさんとの騒動で手いっぱいだったので、周りのことを見る余裕がなかったから気づかなかったけど、ギルドにいる人たちは自分たちよりも少し年上ぐらいが多かった。

 僕はてっきり二十代後半から三十歳ぐらいで柄が悪い人ばかりなのかなと想像していたから因縁をつけられるとかあるのかなと思っていたけど、周りにいる人たちの服装とか雰囲気とかが自分たちと何ら変わらなそうだな。

 むしろ、僕に羨みや妬みといった視線が集まるようなこのパーティーのほうが異質なのかもしれない。

 というか、僕が望んでこの二人と組んだわけじゃないんだから、こっちに殺意がこもった視線を送るのはやめてほしい。


 僕がそんな思いをしている中、露骨並んでいる人が少ない受付を選んだ僕たちは他の人たちよりも早々に受付の人のところまでたどり着いた。

 なぜ、僕たちが選んだ受付が空いているのかというと、他の受付は見た目がいい受付嬢なのだがこっちは大体三十歳ぐらいのおっさんだからだろう。

 しかも、受付嬢のほうは並んでいる人が出来るだけ長く対応して欲しいからか全然空かないし。


「あのー、すみません」


「おう、なんだ?」


「この依頼を受けたいんですけど」


 エルディーさんは僕たち――主にエルディーさんが吟味して決めた依頼を受付の人に見せた。


「この依頼は最低ランクだから確認する必要もあまりないが、一応冒険者カードを見せてくれ」


 え、なにそれ……。僕、そんなの持ってないけど……。

 僕がそんな風に困惑しているときに、エルディーさんがごそごそと肩から下げているバックを漁りだし、運転免許証ぐらいの大きさのプレート出した。

 多分それが冒険者カードなんだろうけど、事前に用意しているなんてエルディーさんはやっぱり結構しっかりしているな。


「そっちの二人も見せてくれ」


 えっ、僕持ってないよと固まっていると、横にいるルヴィエさんも冒険者カードを出した。

 もしかしてこれ、エルディーさんとルヴィエさんがしっかりしているとかじゃなくて、僕がダメな感じ?


「……あのー、すみません。持ってないです」


「そうか。……まあ別にこの依頼を受けるだけならそっちの二人がいるからいいけど、依頼によっては必要になるから作っておいたほうがいいぞ」


「……すみません」


 なんか、二人から白い目で見られている気がする。

 もしかして、用意しておけとか言われてたかな?全然記憶にないけど。

 ……はあ、やっちゃった。

 

「俺に謝られてもな……。とりあえず今ここで作れるけど、どうする?」


「……えっと、いいですか?」


 僕はなるべく申し訳なさそうに感じてくれるような言い方で、二人に聞く。


「福崎君、依頼を受けるためには冒険者カードが必要だから、学園で発行しておいてとエルディーさんが一週間前に言っていたわよね」


「……すみません」


 ルヴィエさんは僕を咎めるような口調と視線でこっちを見る。

 普通に怖い。本当にすみません。許してください。


「まあまあまあ。今それを問い詰めてもしょうがないし、福崎くんの冒険者カードを今ここで作っちゃいましょ」


「……はあ。それもそうね」


「すみません」


 ルヴィエさんの圧は収まったが、今の僕には縮こまって謝ることしかできない。

 これからはもう少し、真剣に話を聞いておこう。


「じゃあ、名前は?」


「えっと、福崎です」


 この後は冒険者カードの手続きをすることになった。

 手続するうえで、名前を聞かれて、指にチクリと針を刺されて血で指紋を取った。

 採血みたいに血を抜かれるのとかは痛い痛くない関係なく嫌なんだけど、血の指紋を取るというのは冒険者っぽいなと思って、ちょっとだけ、うおーって感じの気持ちになった。

 僕は冒険者っぽいとかで興奮するような人間ではないと思っていたから、自分は意外と冷めてないんだなと思った。





 ギルドでコボルト討伐依頼を受けた後、僕はいろいろと気軽なので各々で食事をとる形がよかったのだが、流れ的にそういう感じではなかったので三人で昼食をとることになった。

 

「明日コボルトの討伐に行くことになるんだけど、何か準備は必要だと思う?」


 僕はエルディーさんの質問に、いや、とくにないでしょと思った。

 だって、コボルトはゴブリンより少し厄介程度なのに対して、クラス内で頭一つか二つ飛びぬけているルヴィエさんがいるし、エルディーさんもかなりの実力者だからだ。

 それに、いつもはエルディーさんと組んできてこういうことを聞かれることがなかったので、僕は違和感というか変だと感じた。


「特にないのではないかしら。今回の討伐目標であるコボルトは、今まで相手してきたモンスターと比べて特段気を付けるべきところはないし」


「そうだけど……。何か予想ができないことが起きるかもしれないじゃない。そういう対策とかも考えたほうがいいでしょ」


 ……なるほど、そういうことか。エルディーさんは前に盗賊に襲われたときのことが頭から離れないのか。

 僕もあのゴブリンの軍勢と戦った後に依頼を受けた時に、もしかしたら何かしらのイレギュラーが起こるかもしれないと考えたし。

 でも、そういうことは対策することは――。


「不可能よ。予想外のことに備えて準備をすることなんて、自分の実力を上げる以外の方法はないわ。だって、予想できないことなのだから」


「そうだけど……。何か考えられることはあるかもしれないでしょ?」


「ないわ。少なくとも、私は思いつかない」


 あー、なんかギスギスしそうな雰囲気を醸し出してるな。普通にやめてほしいな……。


 ちなみに僕はルヴィエさんの不可能っていうのは正しくないけど、正しいと思っている。

 準備としては何か危なそうな生物がいるかを聞きまわったり、モンスターの生息範囲を割り出して、どういうルートで行くか、近くにいる目的以外のモンスターとかち合う可能性を導き出すといったようなことは可能だろう。

 実際そういうのは大事だろうし。面倒くさいけど。


 でもエルディーさんが懸念していることって、もし途中で嵐が来たらどうしようとか、いるかどうかは知らないけどいきなりドラゴンが現れて襲ってきたらどうしようとか、そういう感じのことだと思う。

 まあそんなことを対策するのはほぼ無理だし、できるとしても金をかけてどんなことにも対処できるものを準備するとか、ルヴィエさんも言っていた実力をあげることしかないのだと思う。 

 だから、そんなありえない事態が起きるのがいやだったら、依頼を受けること自体をやめるしか方法はないのだろう。


「えっと、コボルトの弱点とか知っておいたり、上級種のコボルトのことを知っておいたりとかはあるかもしれないですね」


「……確かにそういう対策をしておくことは大事ね。……ふと思ったのだけど福崎君。あなた、昼食本当にそれでいいの?」


 ルヴィエさんは僕の目の前に置いてある皿を見て質問してきた。

 少しフォローしてなんかいい感じにしようと思ったら飛び火してきたんだけど。

まあ、生野菜のサラダとパンしか注文していない僕の皿を見たら、確かにそう思われても仕方ないけど。


 この世界で食事をとったとき、ポテトフライっぽい見た目の食べ物を口に入れたら、僕のめちゃくちゃ大嫌いなシイタケぽい味がして吐きそうになり、トイレに駆け込んだことがある。

 好き嫌いが多い僕としては、それからよくわからないものを口にすることに抵抗感が出来てしまい、以降はほぼ同じものばかり食べている。

 そして今回は僕が食べたことがないものばかりがメニューに書いてあるので、おいしくはないけど絶対に食べれるものを注文したのだ。


「はい、こういうの好きなので」

 

 無駄に追及されるのも面倒くさいので、舌はおいしくはないと訴えているが好物だと答えた。





 昨日は昼食の時に僕が言ったコボルトの弱点を調べるなどの準備は大事ではないかという意見が採用され、ギルドで売っているモンスターの生態が書いている本を買った。

 そのあとは安宿で三人別々の部屋で取り、買った本はエルディーさんが預かることになった。

 そして、僕たちは依頼場所へと向かっているところだ。


「そろそろ目的地に着くから、改めてコボルトについて説明するわね。移動するときは四足歩行だけど、基本的に戦闘中は二足歩行で腰に括り付けている武器を片手で持って戦うらしいわ。火が弱点で足腰が強靭だから気を付けるのが大事っていうかんじね」


 エルディーさんが言っていることは、昨日買った本に載っていることらしい。

 説明を聞いている感じ、二足歩行ができる犬という印象だ。二足歩行ができて、武器を持って襲ってくる生物を犬といえるのかは微妙だけど。


「いた!」


 エルディーさんの言葉が僕の耳に入るのと同時に、背中側が青く、こちらから見える前面は白い毛並みをした生物が四匹ほど目に入った。


「じゃあ予定通り、エルディーさんお願い」


「わかったわ!」


 エルディーさんは魔術師が魔法を放つために触媒にする杖をコボルトへとむけ、火の魔法を放った。

 放たれた火はコボルトへと一直線に向かっていき、その火に反応できなかったコボルトは直撃し、横によけたコボルトにも火が横にホーミングして当たる。

 火に当たってもわずかに息をしていたコボルトにルヴィエさんは一瞬で近づき、右手で持っている剣で胴体を突き刺した。


「これで終わりね」


 ルヴィエさんはこちらに戻ってきながら、そう口にする。

 僕が思った通り、あっさりとコボルト討伐は終わったな。


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