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十三話 ギルド


 エルディーさんとは臨時のパーティーという感じだったけど、エルディーさんのパーティーメンバーが二人もいなくなったことと、僕たちのパーティーが二人と少ない部類だったのもあって、正式に同じパーティーメンバーになった。


 それによって僕はこのパーティーが自分にとって大きな問題点があることに、遠出する為に列車に乗る直前で気づいた。そう、男一人と女二人のパーティーであることを。

 男女比で男が少ないことで肩身が狭いというか窮屈という問題もあるし、ルヴィエさんとエルディーさんの容姿が良すぎて視線を集めて、その隣にいる僕を恨めしそうに見てくる。

 それって男女比の問題じゃないよね、今までもあったでしょと思うかも知れないが、今まで遠出することがなかったからあまり視線が集まることがなかったのだ。

 つまり視線を集めること自体は男女比関係ないけど、男女比が問題でなんとなく居心地が悪いというのは当てはまってるから僕の中では間違ってない。


「それで今回は学園側からの許可をもらって、エスクウェス学園から近くてギルドがある街に二週間泊まることは福崎君とルヴィエさんは分かってるわよね」


「ええ」


「はい」


「……福崎君、本当にわかっているの?」


 ルヴィエさんは空返事で返したのを分かったのか、僕に理解しているのか疑っている目線を送ってきた。

 というか、考え事をしていて話を聞いてなかったから空返事したのをなんで分かったの?

 もしかして、なんでかんだ一ヶ月ぐらい依頼一緒に受けていることによって、僕が結構適当なことばれてるのかな?

 だとしたらかなり厄介なんだけど……。


「はい。えっと……、ギルドがある街に行って、そこで依頼を受けるというのが今回の目的ですよね?毎日、自分たちで依頼を選んで受けられるから」


 エルディーさんの話は頭に入ってなかったので、事前に伝えられていたことを記憶の中からなんとか捻り出した。

 ちなみに、ギルドっていうのはファンタジーではありがちの冒険者ギルドと同じ奴だ。


「そう、福崎くんの言っている通りよ。で、そこまで決まってるけど、実際どういう依頼を受けるのかとかが決まってないのよね」


「えっ、どんな依頼があるか見てから決めればいいんじゃないですか?」


 普段あまり意見を言わないけど、当然のように思っていたことだったので反射的に言葉が出た。


「そうなんだけど、どういう依頼を狙っていくか決めておくとギルドで考える時間が減るでしょ。それに、目的地に着くまで暇なわけだし」


「なるほど」


 自分で言うのもなんだが、ずっと黙っているためか多分周りからよく考えているように見られることがあったりするんだけど、基本的に行き当たりばったりで行動しているのでエルディーさんの意見は思いついてなかった。

 まあ、興味がないというのもあるかも知れないが。


「討伐系の依頼優先でいいのではないかしら。あるのかは分からないけれど、護衛といったものを私たちは一回も経験していないわけだし、運送系の依頼は万が一の可能性があるのに対して、討伐系は目標を倒したら終わりなのだし」


「……確かにルヴィエさんの言う通りね。福崎君が特にないなら、ルヴィエさんの言った方針でいくという形でいいんじゃない」


「僕もそれでいいと思います」


 ルヴィエさんの言っていることは的を射ているから問題ないと思った。

 多分そうでなくとも、とげとげの肩パットを付けなきゃいけないみたいな突拍子がないことを言われない限りは、特にないと答えているとは思うけど……。





「見えてきたわね」


「見えてきましたね」


 今エルディーさんが言った、見えてきたというのは目的のギルドのことだ。

 僕とルヴィエさんだけだったら何も一言も発さずにここまで来ていただろうけど、エルディーさんが話題を振ってくれるのでずっとお通夜みたいな感じにはならなかった。

 僕としては、朝早かったので列車の中で寝たかったという気持ちはあるけど……。

 僕は若干眠いなーと思いつつエルディーさん達の後ろについて行き、ギルドの扉の目の前についた。


「じゃあ、開けるわよ!」


 エルディーさんは扉を開けるときに、わざわざ意気込んでこちらに開けることを伝えてくるあたり、何かあるのだろうか?

 よくあるギルドの設定として、粗野で粗暴な冒険者が新人をいびったり、難癖付けたりとかは鉄板なのだが、エルディーさんの反応からしてそういう感じなのだろうか?

 だとしたら、エルディーさんには目の前の扉を開くのをやめていただきたいのだが……。

 僕がそんなことを考えているうちに、エルディーさんは無駄に勢いよく扉を押した。


「いてぇー!?」


 扉を開けた先には主に鼻を覆うように顔を手で押さえている坊主な人が、尻餅をついていた。

 

「おい、そこの嬢ちゃん、何か言うことがあるだろ」


 坊主の人は人を殺しそうな目でドスの効いた声を出しながら立ち上がる。


 あれ、これ不味くね?

 チンピラ冒険者に難癖付けられるというのはよくある展開だけど、もし難癖付けるのが許される場合を考えると、冒険者がそういうもので誰も逆らえないとか、誰もその難癖に声を上げられないほどその冒険者の力があるとかになるだろう。

 まあでも、ギルドでそんなことが許されるとしたら、いろいろと問題あるけど。

 でも今回は百、エルディーさんが悪いから正直どうなるか分からない。

 エルディーさんとか汗をだらだら流しながら、地蔵みたいに固まってるし。


「すみませんでした」


 いきなり、ルヴィエさんが頭を下げた。

 

「ん、そういうことだ。ほら、張本人のそこの嬢ちゃんも言うことがあるだろう」


 坊主の人はエルディーさんの方をいかつい顔で見る。

 えっ!そういう感じなの!?……まあ、確かにそういうことが大事だとは思うんだけどね……。

 坊主でチンピラとかヤクザの類にしか見えないけど、もしかして良識を持ったいい人なのか?やばいやつにしか見えないけどな。


「……。すみませんでした!」


 硬直が解けたエルディーさんの頭を下げる速度は、僕には速すぎて見えなかった。

 ただ、勢いよく頭を下げたとき、髪の毛がぼわっとなった瞬間がクラゲっぽく見えたてちょっと面白い。

 僕もこの状況だったら全く同じ反応するだろうから、今のエルディーさんの気持ちは凄く分かるけど。


「お前らのことを見たことないからここは初めてなんだろう?だったら仕方ない部分もあるから謝罪だけで許すけど、次から気を付けるんだぞ」


 やっぱ、いい人な感じか。

 なんか厄介な感じにならなそうでよかった。


「ぷぷ、どう考えてもスヴェンの方が間抜けだっただけだろ。ダッセー」


「な……!あんな速度でいきなり扉が開いたら普通こうなるだろ!」


「いやいやお前、ここのギルドの中でもかなり腕が立つ方なのに、冒険者になっているかもわからない女の子が勢いよく開けた扉に当たるとかどうなの?」


 スヴェンさん?が顔を真っ赤にさせながら怒ると、ギルド内にいる冒険者の煽りによって、周りの人もゲラゲラと笑い出す。

 なるほど、いい人キャラでありながらいじられキャラみたいな感じの人か。


「クソ。お前ら、覚えてろよー!」


 スヴェンさんは上ずった声で叫びながら、猛ダッシュでギルドを出た。

 僕はギルド内の様子と彼が涙目で去る姿を見て、どう考えても悪いのはこっちだし少し申し訳ないなと思った。


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