表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
水に取られた ー零れる刻限ー (改訂版)  作者: 大西さん
第八章 逃げ切れなかった母
PR
42/61

第42話 呪いは、逃がさない

七月に入って、美代子は決意を固めた。 逃げる。健一と一緒に、この町を出る。十八歳の誕生日の前に。


しかし、その頃から奇妙な現象が起き始めた。


美代子が外出しようとすると、必ず雨が降り始める。それも、彼女の周囲だけに集中的に。まるで、見えない檻に閉じ込められているかのように。


健一とのデート中、レストランのグラスの水が突然溢れ出す。噴水の水が、美代子だけに向かって吹きかかる。プールサイドを歩けば、足元から水が湧き出る。


「なんか、最近変だな」


健一も異変に気づき始めていた。


「水が...俺たちを見張ってるみたいだ」


美代子は恐怖を感じていた。これは偶然ではない。何かが、いや、誰かが介入している。


ある夜、美代子は奇妙な夢を見た。 深い水の底に沈んでいく夢。そこには、無数の男たちの顔が浮かんでいた。皆、若く、美しく、そして悲しそうだった。その中に、健一の顔を見つけて、美代子は悲鳴を上げて目覚めた。


枕元に、和子が立っていた。 月光に照らされた母の顔は、能面のように無表情だった。


「七月二十日ね」 和子が言った。 「何が?」 「あなたの誕生日」 「知ってるわよ」 「その日に、すべてが決まる」 和子の影が、月光で壁に大きく投影される。それは巨大な水の化身のようにも見えた。


「健一と一緒に、東京へ行く」


美代子は宣言した。 和子の表情が、初めて変わった。悲しみとも、諦めともつかない、複雑な表情。


「行けると思う?」


その言葉と共に、部屋の中の湿度が急激に上がった。壁に水滴が浮かび、天井から水が滴り始める。


「これが、田辺家の女の運命よ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ