第33話 愛せば、殺してしまう
真紀は最後まで抵抗した。 「私たちは、ただの会長と副会長よ」 そう言って聡を遠ざけ、冷たい言葉を投げかけた。彼を愛してはいけない。愛せば、彼を殺すことになる。その恐怖が、真紀を支配していた。
「聡君、あなた優しすぎるのよ。私みたいな人間に関わらない方がいい」
「どうしてそんなことを言うんだ?君は、僕が知っている誰よりも優しい人間だよ」
聡は、真紀の突き放すような言葉の裏にある恐怖を、正確に感じ取っていた。
しかし、運命は、彼女の微かな希望を打ち砕いた。 大学への推薦を祖母に申し出た夜。和子は真紀の合格通知を燃やし、冷たく言い放った。
「あなたの道は、最初から決まっている。無駄な夢など見ないことだ」
その言葉と共に、真紀の心の中にあった、都会への憧れという小さな光が、音を立てて消えた。絶望が彼女の心を支配した。
そして、誕生日の日、体は勝手に動いた。 朝、目覚めると、体の中から水が呼ぶ声が聞こえた。『捧げよ』と。抗いがたい衝動が、彼女の理性を麻痺させていく。
「聡君、少し、話があるの」
放課後、真紀は聡を呼び止めた。その声は自分のものではないように、平坦で冷たく響いた。 聡は何も聞かず、ただ黙って頷いた。彼の瞳には、悲しいほどの優しさと、すべてを受け入れる覚悟が宿っていた。彼は、すべてを悟っていたのかもしれない。




